利用される範囲が広がりつつあるUE4
UE4の日本での広がりを示したのが、開発会社ヒストリアの佐々木 瞬氏の講演だ。ヒストリアは2013年に、当時は日本でも珍しいUnreal Engineのみを使った開発専門会社として創業。当初は2人で始めた体制も、現在は14人までになっている。これまでに携わった案件の数は20~30に及ぶというが、短期間に、この件数をこなしてきた開発会社は世界的に見ても珍しいと思われる。
今、同社への依頼でUE4を使った仕事は家庭用ゲームやアーケードゲームが中心だが、モバイルゲームやCG映像、建築、教育などほかの分野にも広がりつつある状態だという。
特に「VRも対応したい」というものが増えているのだそうだ。UE4が手軽にハイクオリティーの映像を出せることを期待して、ということのようだ。
また、UE4があまり得意ではなかったモバイルゲームも、スマートフォンの基本性能が上昇したことによって、UE4で求められるマシンスペックが実現できる段階に入りつつあり、採用例が出始めているようだ。
2015年3月には、スマホ向けにUE4で開発した「ダンジョン&バーグラー」をリリースした。このゲームは、ヒストリアの「少人数かつ短期間の低コストでUE4のモバイルゲームを開発する」という方針の元、グラフィックデザイナーがUE4のプログラム環境であるBlueprintを使って1人で開発したものだ。
UE4の強みは、このBlueprintと呼ばれる独自のノードベースのプログラミング環境を持っていることにある。C++などのプログラム言語を使わなくとも、概念を理解していれば、ゲームを作れることができる。
UE4になって、Blueprintの環境が非常に作りやすい環境になり、企画担当者でもプログラマーを介さずにゲームを作り込めたり、プログラムを作ったりする場合にもBlueprintの環境だけで完結できたといった事例を、今回のカンファレンスで複数の開発者が挙げていた。
今月にはSR factoryが「スカーレット☆ファイターズ」という、美少女が登場する戦闘機を操ってドッグファイトをする、UE4を使ったアクションゲームをリリースしている。iPhone 5s以降の性能のハードがターゲットだ。
UE4でも、作り込まれた映像のスマホゲームが作れることを証明している。これもBlueprintだけで開発したという。「まだまだ、UE4は、ほかのゲームエンジンに比べると広告などのマネタイズの機能が少ない」(佐々木氏)と現状の弱点を述べながらも、今後予定されているバージョンアップでの対応が期待できるため、使用事例は増えるだろうと見ていた。
また、UE4のCGアニメーション業界への影響を直接予感させる講演もあった。
(次ページでは、「CG映像に取り入れることでメリットが生まれる」)
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