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スタートアップを生み出す側に聞いた

10年間で2000億円の産業を創出する Supernovaの起業家育成とは?

2015年10月15日 07時00分更新

文● 加藤肇 編集●北島幹雄/大江戸スタートアップ 撮影●曽根田元

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10年をかけた定点観測と、アクセラレータープログラムのメリット

――Supernovaに応募するのはどういう人たちだと想定していますか?

Slogan伊藤:おもに2種類の人たちがいると考えています。ひとつは、すでに大企業だったりコンサルティング企業で働いていて、「既存の産業構造を変えてみたい」とか「ウェブサービスの立ち上げよりは骨太なことをしてみたい」という思いを持っているような人ですね。彼らには社会人としての経験はありますが、やはり裸一貫で独力でのチャレンジというのはハードルが高いですよね。そこを適切にサポートできればと考えています。もうひとつは、学生や第2新卒といった若い層です。「経験はないけれど産業構造の変革にチャレンジしてみたい」という思いのある人たちですが、未経験者だからこそ、適切なメンターとのマッチングなどを提供してあげれば急成長も可能だと思っています。

Viling栗島:事業の切り口を深めていく作業というのは、競争する仲間だったり適切なメンターをそろえてあげることで、Supernovaの運営側でも補えると思うんですね。ですので、まずは「産業構造を変えてみたい」という思いをしっかりと持っている人に集まっていただければと思っています。

――Supernovaに応募して参加することになった起業家には、どんな内容のサポートやカリキュラムが用意されているんでしょう?

Viling栗島:まずは我々のオフィスを開放して、いろいろな人たちと交流してもらうことは考えています。加えて、自分の状況を発表したりほかの起業家と議論するような場を月に1回くらいの頻度で設けます。さらに、2カ月に1回くらいで成果発表の場も用意することになると思います。以上が基本的なことです。これに加えて、特定のジャンルの話を勉強したい人がいれば、専門家を紹介したり分科会の開催も考えています。

Slogan伊藤:最初に面談の機会を設けて、起業についてのプランだったり問題意識を聞かせてもらうんですね。そのうえで、その場で答えられることであれば答えますし、専門家が必要であれば紹介もできます。漠然としたアイデアを抱えているだけの人でも、気軽にSupernovaの門を叩いてもらえれば、それに形を与えるお手伝いはできると思います。

Viling栗島:これまでの経験から、アクセラレーターで重要なことはいくつかあると思っていて、そのひとつが定期的にアウトプットの場を作ることなんです。それから、適切なタイミングで適切な人との出会いを提供することも重要。そのうえで、仲間との交流を促進して健全な競争が生まれる環境を整えることも必要になってきます。逆に、講義や授業といったものはタイミングが合わなかったら無駄になるんですね。スタートアップは限られたリソースの中でやりくりしているわけで、貴重な時間を必要のないものにとられたくないはずです。

Slogan伊藤:私もかつて自分自身が起業準備をしていたときに、いまで言うアクセラレータープログラムに参加したんですが、参加するだけでペースメイクできるのが大きなメリットだったと思います。働きながら起業を考えている人だと、アイデアは固まってきているんだけどなかなか起業にまで至らないというケースは多いんですね。そんな状況で外部のペースメーカー的な存在がいてくれると、「次のプレゼンまでに事業計画書を書かなくちゃ」といった具合に物事が「加速」、つまり文字通り「アクセラレーション」していくわけです。アウトプットの場を作ることは非常に重要なことだと思います。

スローガンの伊藤豊代表取締役社長(写真上)、前川英麿氏(写真下)。新興成長企業(スタートアップ・ベンチャー企業)などグロース領域に対して、すぐれた人的資本(ヒューマンキャピタル)を供給する社会的機能をあらわすコンセプトを持ったグロースヒューマンキャピタル。

――アクセラレータープログラムでは、人と付き合うこと、人を見ることが非常に重要ですね。

Slogan前川:まさにその通りです。特にシードアクセラレータの場合はまだ資産が何もない状態なので、人材に投資するだけなんです。正確には「個人」というよりは「チーム」を見るわけですが、それこそがVCなどのおもな仕事になっていると思います。

Viling栗島:Villingで人材を見る基準としてはいくつか仮説があるのですが、そのなかで「没頭型」というタイプに分類される人に注目しています。没頭型にはいくつかの性質があり、そのひとつに「複雑性を排除しない」というものがあります。

 たとえば「教育」を例に見ると、この領域は非常に複雑な要素から成り立っていますよね。これを理解しないまま自分の思い込みだけで挑んでいくと、当然すぐに既存の仕組みなどにはね返されて悪循環に陥り、最終的にはNPOなどに流れてしまうケースにつながってしまいます。特定領域にある複雑性を排除せずに、全体を見れるというのは非常に大切です。

――そのような部分が審査基準となるわけですね。

Viling栗島:「思考と行動の両輪が回っている」ことも必要です。というのも、思考(理論)の部分は誰でもある程度はできると思うのですが、それを実際の行動に移して理論との差分を明らかにできないと意味がないんですね。

 それで、このふたつの性質を備えたうえで「商売っ気」もプラスされているとなお良いです。日々の生計も立てていけないと、スタートアップはそこで終わってしまいますから、短期的なマネタイズも考慮に入れないといけません。これらすべてがそろっている人がいたら、「すぐに投資します」となりますね。

Slogan伊藤:栗島さんが言われたのは、いわゆるVCが最終的なジャッジをする際の基準ですので、これがないとSupernovaに参加できないというわけではありません。ちょっとハードルを上げ過ぎな気もしますので、別の面からの話もさせていただきます(笑)。

 Sloganは起業から約10年のあいだ会社を続けてきて、学生時代から知っている人材がその後、社会で活躍する姿も多く見てきました。そこでわかったことは「まじめにあきらめないで続けている人は、何かしらの存在にはなれる」ということなんです。かかるスピードは人によって違いますが、遅い人でもまじめに10年くらい継続することができれば、必ず何かしらの価値を生むことはできるんですね。これは、本当に驚くくらい確実な「事実」としてあるんです。

 それをベースに私たちが考えた人材を見る際の基準は、まず「誠実」であること。そのうえで、いろいろな事柄を学んでいける最低限の「知性」と事業を継続するための「情熱」を持っている人であれば、「この人を応援していこう」という気持ちになります。

Viling栗島:私がSloganさんをうらやましいなと思うのは、伊藤さんがこの10年くらいかけて、どういう人材がどんな成長をするのかということを「定点観測」していることなんですね。そのデータの蓄積は圧倒的に強いと感じます。継続することの重要性は私も認識していて、というのもSupernovaで挑む領域というのは、すぐには結果が出にくい領域なんです。

 そのため6カ月間いっしょにプログラムに参加する仲間の存在が、起業家が継続することを手助けするという機能を果たしてくれるのではないかと思っています。加えて、専属のメンターも付きますし、さまざまな専門家との出会いもあります。いろんな人たちを巻き込んでいくことが続けやすい環境づくりにつながるといいなと期待しています。

見えない起業家はまだまだいる

――Supernovaからはすこし離れた質問になりますが、このところスタートアップに対する投資が活発化して、各社が取り合うような状況が生まれているという話もあります。それについては、どうお考えでしょうか?

Viling栗島:たしかにそういう話は聞きます。特にSloganさんのように、長年にわたって起業家志望の若者との付き合いを続けてきている企業から見るとどうなのか興味があります。

Slogan伊藤:自分で動いて売り込みもできるアクティブな人については、VCの数も増え起業家にとって近い存在になったことで、すぐに見つけられている状況はあると思います。ただ、イベントに参加して売り込むような積極的な動きはせず、ひとりで黙々と企んでいるようなタイプの起業家というのは、まだ放置されているんじゃないかと感じますね。

Viling栗島:ものすごく有望なのに誰からも発掘されず、コツコツと地道に取り組んでいるタイプの起業家はまだまだいますね。

Slogan伊藤:私たちがSupernovaに取り組む際に問題意識のひとつとして持っていたのは、そうやって黙々とやっているタイプの人たちにも手を差し伸べられるんじゃないかということなんです。世の中には、ピッチコンテストとか目立つ場所に行ってうまく自分をプレゼンできる人もいれば、そうでない人もいると思うんですよね。

 渋谷とかで行なわれる華々しいスタートアップ向けイベントで輝けるのって、起業家の中の一部の層に過ぎないんじゃないかと。起業家の中には派手な場所には出たくないという層もいるので、私たちとしてはそういう人たちもターゲットにして骨太な方向性で何かをやりたいという思いもありました。

Viling栗島:渋谷というのはスタートアップにとって象徴的な場所ですが、都内でいえば文京区の東大周りのスタートアップや、品川周りの少し大人の起業家、あとは秋葉原とか大井町にもスタートアップは多くいますが、そのあたりはまだ見過ごされている印象です。

――最後に、起業家の方々へのアピールも含め、メッセージをお願いいたします。

Slogan伊藤:Supernovaのリリースを見て「ハードルが高そうだな」と感じる人もいるかもしれません。ですが、志の高い取り組みを目指していますがハードルは決して高くないと私たちは思っています。産業構造の革新という骨太なテーマで何かをしてみたい、こうすれば変わるんだというアイデアを持っている人は、ぜひ気軽に応募してほしいです。

DraperNexus中垣:日本では「スタートアップ=コンシューマー向けのウェブサービス」というのが主流で、米国の数年遅れで「後追い」的なサービスが立ち上がることも多いのが現状です。それ自体は決して悪いことではありませんが、私自身はそれだけだと寂しいなという思いもあり、Supernovaとそこに集まる起業家のみなさんには期待しています。

Viling栗島:Supernovaは世界的に見ても珍しい取り組みです。当然どうすれば成功するのかという道筋もまだないわけで、私たちにとってもチャレンジであると思っています。大きなチャレンジに取り組むための仕組みは用意したつもりですし、今後もメンバーの追加など、随時強化を図っていくつもりです。産業構造の革新という大きな絵を私たちといっしょに描ける起業家のみなさんの応募を楽しみにしています。

 Supernovaの1次応募締め切りは2015年10月30日23時59分まで。都内で事前説明会が開催されるが、すでに満席も多く出ている。なお、東京だけでなく、各地方からの参加についても応募を受け付けるとのことだ。

■関連サイト
Supernova

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