いつの頃からか、海外出張や海外旅行に行くと、その記念に旬のスウォッチ腕時計を現地のスウォッチショップで買うのが、半ば行事のようになっていた。
日本の生んだ画期的な時計の基礎技術であり、極めて精度の高い“クォーツテクノロジー”は、米国ブローバの音叉時計技術を一瞬で蹴散らし、同時に、それまで“腕時計といえばスイス”と言われてきた常識を覆し、瞬く間に腕時計世界を席巻、スイス腕時計業界にも大きな打撃を与えた。
しかしその後、スイス腕時計業界は一致団結して、安く正確になったクォーツテクノロジーを採用した、正確で安価なスウォッチ腕時計で日本の腕時計業界に反撃を開始した。
スウォッチ(Swatch=Swiss+Watchの腕時計ブランド)は極めてデザイン・コンシャスで、バリエーションが豊富、季節ごとに登場する新製品が、従来のお堅い腕時計というイメージを払拭した。
そして、テクノロジーで市場を塗り替えたクォーツとは少し違ったブランドマーケティングという戦略で腕時計の世界観を再定義した。
スウォッチはスウォッチ腕時計で再出発した腕時計会社だったが、今では、スウォッチ腕時計をはじめブレゲ、オメガ、ロンジン、ハミルトン、ラドー、ティソット、カルバン・クラインなど、伝統的な高級腕時計から比較的若年層に向けたファッショナブルな腕時計まで、12の腕時計ブランドを傘下におく巨大企業に成長した。
今回ご紹介するスウォッチ腕時計は、筆者が路面の実店舗で購入しなかった初めてのスウォッチとなった。
時代が変化したからというのもあるかもしれないし、たまたま今回は海外に行っていなかったというのもあるだろうが、とにかくネットで見た瞬間にポチってしまうほど筆者にとってはインパクトのあるスウォッチ腕時計だった。
筆者のように、年にいくつかスウォッチ腕時計を衝動的に買ってるチョットおかしな人間が感じるインパクトは、尋常な人とは多少異なっている可能性がある。このため、今回のスウォッチ腕時計を誰にでもおすすめしていいのか多少心配だ。
文字盤に裏面のデザインを採用する「イレッタブ」
今回ネットで衝動ポチリをしたスウォッチ腕時計は「イレッタブ」(YRETTAB)と名付けられた、ほかのスウォッチ腕時計同様に極めてシンプルで分かりやすい製品だ。ボディカラーはスウォッチでは比較的採用実績の多いホワイトを採用する。
なんといってもイレッタブのデザイン的な特徴は、文字盤サイドにごく普通のボタン電池で動作する安価なクォーツ腕時計の“裏側イメージ”を採用していることだ。
それほど高密度の綺麗なグラフィックでもないのだが、ラフな分、腕時計の裏側という感じではかえってよさを感じてしまう。スウォッチはシンプルでパッと惹きつけられるデザイン、安価、毎年新製品の発売、などが特徴だ。
そこのところが高級腕時計を一生使い続けるのとは対局にあるマーケティングを展開する商品戦略だ。それゆえ、見た時は惹かれて衝動的に買っても、長く手元において愛用し続けるという印象は従来コンセプトの腕時計より薄いように感じてしまう。
実際に筆者も、現在手元に残って愛用しているスウォッチ腕時計はほんの数種類しかない。イレッタブは間違いなくその数種類に仲間入りしそうな雰囲気だ。
次ページへ続く、「最新のスマホ連携腕時計の6分の1以下という軽さ」

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