『TalkSpace』は音声投稿アプリ。1000万件を超える音声が投稿されている。開発したのは鹿児島のスタートアップfreep。同社代表の鮫島悠CEOは学生時代に開発したサービスで大学に激怒された。現在は“音声版のニコニコ動画”をめざす。
写真:freep
「ダメなもの作ってたんですよ」
freepの鮫島悠(さめしま・ゆう)CEOは言う。鹿児島・枕崎に生まれ、本土最南端のスタートアップとしてスマホアプリ『TalkSpace』を開発中。
TalkSpaceは声優や歌い手のたまごが集まる“音声のソーシャルネットワーク”。投稿された声は1000万件を超えており、声好きのコアな人気を集めている。
鮫島CEOが初めてウェブサービスをつくったのは、鹿児島大学で学んでいたとき。何をつくっていたのかたずねると、苦笑しながらこう言った。
「授業の過去問をPDFで一括検索できるシステムでした」
大学が「このサイトに注意!」と警告
『過去問、1部100円で買い取ります。食堂にぬいぐるみを持った男性がいるので、彼に話しかけてください』
鮫島CEOは校内にこんなポスターを貼り、全学部の学生たちから徹底的に過去問を採集。手当たり次第にPDF化してサイトにアップしていた。
「過去問が見られるだけでなく、授業もサイト上で評価できるようにして。教科書の中古販売なんかもできるようにしていました」
どこかFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOがハーバード大学で作った、授業履修者検索サービス「Coursematch」をほうふつとさせるサービスだ。
サービスは学生たちに大好評。しかしお金はさっぱり儲からず、当然のように大学では問題になった。大学は校内の掲示板に「悪質なサイトに注意!」と怒りの警告をあげ、ついに本人のもとに呼び出しの連絡が来た。
「ある日大学からメールが来たんです、『明日にでも会いたい』って。『いよいよ除籍か……』と思い、やばいことしたなあ……と思って」
さすがに除籍はされなかったものの、大学から厳しく指導を受けた。
結局、過去問検索サービスは停止。しかし、鮫島青年はむしろやる気になった。内容に問題はあったが、サービスそのものは評価された。なら、ちがうサービスをやって成功させてやればいいじゃないか──。