新旧のビジネスITニーズを満たす、柔軟かつ単一のインフラをハードウェアベースで構成
HPの新ビジョン「Composable Infrastructure」はなぜ必要か
2015年08月19日 06時00分更新
米ヒューレット・パッカード(HP)は今年5月、ラスベガスで開催した年次イベント「HP Discover」において、ITインフラに関する新たなビジョン「Composable Infrastructure」を発表した。7月に来日した同社幹部のニール・マクドナルド氏に、どんなビジョンなのかを聞いた。
“New Style of Business”の登場により要請される新しいインフラ
――「Composable Infrastructure」とはどんなビジョンなのでしょうか。まずは概要を教えてください。
“Composable”、つまり構成する/組み立てることが容易なITインフラという名前だ。それが必要とされる背景には、ビジネスとITを取り巻く環境の変化がある。
従来の企業ITは、ビジネスプロセスとシステムを“支える”ために「信頼性」や「コンプライアンス」、「セキュリティ」を重要視してきた。そのため、インフラのデプロイや管理は、きちんと事前に計画され、各担当者の承認ベースで実行されるものだった。必然的に、インフラのライフサイクルは長期化し、動きの遅いものになってしまう。
一方で、われわれが「New Style of Business」と呼ぶ新しいビジネスにおいて、ITは製品やサービス、顧客体験の“差別化要因”となり、ビジネスの成功をドライブする。そのために、ITインフラには「俊敏性」や「柔軟性」、「継続的イノベーションの能力」といった要素が強く求められる。
――ビジネスとITの関係が変化して、これまでとは異なるタイプのインフラが求められるようになっているわけですね。
そうだ。従来型インフラの数年、数カ月というライフサイクルの遅さでは、New Style of Businessには対応できない。さらに問題なのは、顧客がこれら2種類のインフラを別々にサポートし続けるのは「不可能」だということだ。
こうした背景から、Composable Infrastructureのビジョンが生まれた。これは新しいクラスのインフラを目指すものであり、従来型の企業ITニーズも、New Style of BusinessにおけるITニーズも、両方を満たすものになる。どちらのニーズに対しても、単一の手法でインフラのデプロイや運用管理が可能になるわけだ。
これにより、複雑なインフラ管理の手間から解放され、企業はより収益向上やイノベーションのための活動に時間を費やせるようになる。Composable Infrastructureは、継続的なサービスデリバリの実現、効率性、コスト最適化を目的としてデザインされている。
流動的リソースプール+Software-Defined+統合API=
――もう少し具体的にお聞きしましょう。Composable Infrastructureは、どのような要素で構成されるのでしょうか。
HPではすでに、「HP BladeSystem」や「HP ConvergedSystem」といったコンバージドインフラ製品、「HP OneView」というコンバージドマネジメント製品を持っている。Composable Infrastructureは、これらの上に(延長線上に)に展開されていく。したがって、顧客の投資は保護される。
Composable Infrastructureは、非常に柔軟なサーバー/ストレージのリソースプールとネットワークファブリックを用意し、ワークロードの必要に応じてリソースを組み立て、分解し、また組み立て、再分解し……ということを迅速に可能にする。
この流動的な(fruid)リソースプールは、Software-Definedのインテリジェンスに支えられており、プログラマブルだ。統合API(Converged API)を通じて、HP OneViewや他のオーケストレーション/管理ツール群とも連携する。
このAPIからは、個々のサーバーやストレージという単位ではなく、もっと高い抽象レベルの“リソースプール自体”を制御できる。5月の発表時には「Composable Infrastructure API」としてAPIを公開しており、同時に、このAPIに対応した管理製品群のパートナープログラム「Composable Infrastructure Partner Program」もスタートしている。
このビジョンを現実化するために、HPでは「Project Synergy」という複数年にわたる取り組みをスタートしている。APIのオープン化やパートナープログラムも、その一部に当たる。