ヒューレット・パッカード(HP)がワークロード特化型の超高密度サーバー「HP Moonshot System」を発表してからおよそ2年が経過した。米HPでMoonshotビジネス部門を率いるポール・サンテラー氏は、今年はいよいよMoonshotが大きく飛翔する年だと語る。Moonshotビジネスの現在、そして未来について聞いた。
市場投入から対象領域拡張、そして今年は「ビジネス拡大の年」
――Moonshot Systemが発表されてからおよそ2年が経ちましたが、あらためてこれまでの動きを教えてください。
Moonshotの最初の製品を発表したのが2013年の半ばだ。そして、2014年はサーバーカートリッジの種類を拡充するとともに、1Gbpsから10Gbpsへのアップリンクの拡張、さらに外部ストレージとの接続も可能になり、対応するワークロードが広がった。
つまりMoonshotにとって、2013年は「市場投入の年」、そして2014年は「拡張の年」だったと言えるだろう。そして今年、2015年は「ビジネス強化の年」になる。ビジネスを“ホッケースティックのように”(急角度で)伸ばしていくつもりだ。楽しい1年になるだろうね。
――2014年初めには、Moonshotビジネス部門がサーバーの事業部門から独立していますね。その狙いは何でしょうか。
これはHPにとっても大きな出来事だった。これまでHPでは、プロダクト個別のビジネス部門を持つことはなかった。しかし、Moonshotは非常に画期的な製品であり、これを成功させるためにはビジネスのインキュベーションが必要になると判断した。そこで、独立したビジネス部門を立ち上げることになった。
Moonshotビジネス部門では、ハードウェア開発からソフトウェア開発、プロダクト管理、オペレーション、マーケティング、セールスまで、すべてのステークホルダーが関与して、新たなビジネスをインキュベーションしている。たとえば通常の製品では、セールスは各リージョンのリーダーにレポートするが、Moonshotの場合はすべてわたしがレポートラインになっている。
――開発部門だけでなく、セールス部門まで“Moonshot専属”というのは興味深いですね。
仮に「どのHPサーバーでも売っていい」というセールスの体制ならば、セールス担当にとっては従来型のブレードサーバーを売るほうが簡単だし、そちらに流れてしまうだろう。セールス担当の利益も守り、かつ新しいMoonshotビジネスを成功させるためには、こうした体制が必要だと考えた。
また、汎用的なブレードサーバーとは異なり、Moonshotが適しているワークロードははっきりしている。だから「1日中、Moonshotのことだけを考えてくれる」チームが必要だったわけだ。
――HPとしても、Moonshotのビジネス部門を独立させることで、この新製品を何年かかけて育てていく姿勢を示したということですね。
そのとおりだ。さらにHPでは、今回のMoonshotの取り組みを、他のソリューションやビジネス部門における新ビジネスの“インキュベーションモデル”としても生かしたいと考えている。
3つの領域にフォーカスしてMoonshotビジネスを拡大
――では実際、Moonshotビジネスはどのくらい伸びているのでしょうか。何か公表している数字はありますか。
残念ながら、HPでは製品個別の数字(出荷台数など)は公表していない。しかし、導入事例の件数だけでも成長が実感してもらえるだろう。2014年初めの段階では、Moonshotの導入事例として公開できていたのは1社だけだったが、現在は40数社にまで増えている。公開を準備している事例もまだまだある。
Moonshotのビジネスが伸びているのは、「モバイルワークスペース」「メディアプロセッシング」「ビッグデータ/アナリティクス」という3つのソリューション領域にフォーカスしているからだ。
実は、2014年に機能強化するまでは、Moonshotではこれらの領域をカバーしていなかった。モバイルワークスペースが最も成熟している領域、メディアプロセッシングは爆発的なビジネスの成長を見込んでいる領域、そしてビッグデータ/アナリティクスは最新の領域だがこれも成長を期待している領域だ。
最初に投入した「ProLiant m700」カートリッジがモバイルワークスペース向けだったこともあり、これまで最も大きい市場がこの領域だ。その後に投入したXeon搭載の「ProLiant m710」も同領域をさらに拡張するが、同時にメディアプロセッシングやビッグデータの領域でも活用できる。
――Moonshotでは発表当初、ハイパースケールWebの領域も対象としていたはずですが、もうターゲットとしていないのでしょうか。
いい質問だね(笑)。答えは「YES」であり「NO」だ。
Webに関してもベストなソリューションだと自負しているし、実際に販売もしている。ただし、成長率という意味では、先ほど挙げた3つの領域よりも劣るのは事実だ。これから需要が大きく伸びるのは、やはり先ほどの3つの領域ということになる。
(→次ページ、日本市場はMoonshotのベストマーケットである)