7月上旬、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、ITインフラエンジニアやITアーキテクトを対象とした「HP Tech Power Club」イベントを都内で開催した。“テクノロジーカンパニー”への回帰を強める同社の最新R&D成果や、次世代サーバーテクノロジーの具体的な姿がセミナーや展示を通じて紹介された。
75周年、テクノロジーカンパニーへの原点回帰
米HPは1939年、計測器メーカーとして創業された。今年はそれから75年の節目に当たる。
米HP CEOのメグ・ホイットマン氏は、2011年のCEO就任以降「テクノロジーカンパニーへの原点回帰」をテーマに掲げ、技術R&Dへの投資を強化している。その一環として現在進められているのが“サーバープラットフォームを再定義する”3つのプロジェクト、Project Moonshot/Odyssey/Voyagerだ。
基調講演で登壇した日本HPの手島主税氏は、「R&Dへの積極投資」に加え、「独自テクノロジーの開発」「技術コミュニティの拡大」という3つが、HPの重点施策だと説明する。今回のイベントも、日本における技術者コミュニティの立ち上げを目的としたものだ(詳しくは後述)。
手島氏は、これまでのサーバー市場では1種類のサーバーで幅広いワークロードに対応することが求められてきたが、さらなる最適化に向けて、個々のワークロードが持つ性格の違いを意識したサーバー設計が必要になると説明する。そこで、HPでは主要なワークロードを4種類に分類し、今夏から順次、それぞれに特化したサーバーラインアップを投入していていく。「HPには、『ワークロード特化型』へとサーバー市場を再定義していく責務がある」(手島氏)。
HPのサーバー最高技術責任者が語る“未来のサーバー技術”
では、さらにその先はどうなっていくのか。手島氏は、これから先のITに起きる「変化」は従来とまったく異なる性格のものになり、「間違いなくテクノロジー、特にサーバー領域でのイノベーションが必要になる」と、革新的テクノロジーのR&Dに取り組む意義を強調する。
手島氏に続いて登壇した米HPのキース・マコーリフ(Keith McAuliffe)氏は、現在HP研究所で進められているサーバー領域における革新的テクノロジーのR&D成果を披露した。マコーリフ氏は、米HPのサーバー最高技術責任者(CTO)であり、HP研究所(HP Labs)も率いる人物だ。
マコーリフ氏はまず、現在のサーバー/データセンター環境が抱える課題について総括した。よく知られるとおり、『ムーアの法則』に基づく進化スピードでは追随できないほどのデータ量爆発、それに伴うOLTPから分散/並列データ処理への処理方式の移行、消費電力の増大、そうした課題がある。
これらの課題を根本的に解消すべく、HP研究所では「ワークロードに最適化されたSoC」「ユニバーサルメモリ」「フォトニクスとファブリック」という3つの革新的テクノロジーの研究開発に取り組んでいるという。こうしたテクノロジーで、現在とはまったく新しい“次世代のサーバーアーキテクチャ”を実現する計画だ。
インテルの「Atom」やARMプロセッサといったSoCは、モバイルデバイスだけでなく、「HP Moonshot」などの高密度サーバーでも採用され始めている。プロセッサコアと各種コントローラが1つのチップに載っており、小さな消費電力でより多くの処理を実行できるためだ。
HPではさらに、インテルと協働して、特定ワークロード向けプロセッサを統合したSoCを搭載するMoonshotカートリッジを開発している。マコーリフ氏は、たとえばVDI用途向けにグラフィックスアクセラレータを強化したもの、動画変換や音声処理を強化したもの、暗号化/復号処理をより高速化したもの、学術計算性能を強化したものなどの例を挙げた。
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