このページの本文へ

NOREN流「CMSの選び方」4つのポイント

2015年08月10日 11時00分更新

文●八木康介/のれん

  • この記事をはてなブックマークに追加
本文印刷

いまどきのCMS(Content Management System)はどうやって選ぶべき? ロフトワークが開催したイベント「Webmaster Camp」で、企業向けCMS「NOREN」を販売しているのれんの八木康介さんが紹介した「CMSの哲学」をダイジェストでお届けします。

CMSを導入または導入検討している企業は全体の87%にも達しますが、そのうち65%が入れ替えを検討しています(NORENパートナー企業調べ)。現在使っているCMSが自社の運用に合わなかったり、バージョンアップやテンプレート改修にお金がかかったり、サポートに不満があったりするのが入れ替え検討の理由です。実際、NORENの新規のお客様も、60%は他のCMSからの移行です。つまり、初めにCMSを導入するとき、自社の運営スタイル、ニーズ、スタッフのスキルにあっていないCMSを選んでいる企業が多いのです。

CMS導入企業は87%と語る八木氏

企業が導入候補に挙げるCMSには、根強い人気のWordPressからSitecore、Movable Type、そしてNORENまで、Googleで検索するとそれこそ大量の製品が存在します。製品にはそれぞれ設計思想があり、どのような業種の顧客と接してきたかで進化の方向に個性が出てきます。しかし、選定する側はそんなことまで調べられないのが普通ですから、結局のところユーザー部門の要求仕様を情シス部門がExcelシートにまとめて、CMSベンダーに回答させ、必須項目をどれだけ満たしているか、初期コスト、運用コストが低くて済むのはどこか?といった観点で選ぶことになります

たくさんのCMS

しかし、こうして選ばれたCMSを導入すると、ユーザー部門からクレームの嵐になることがあります。使い勝手が悪い、運用に合わない、フローを回せない、多機能過ぎて使いこなせない、コンテンツの登録が面倒、テンプレートのわずかな改修に高額な見積もりが出てきた、サポートが悪い、Webサイトの表示が遅いなど。情シス部門からすると、ヒアリング時には出てこなかった項目もあり、ベンダーとの板挟みになるケースもあるでしょう。

問題の原因は、要求仕様を得点化し、機能が多いほど有利になるような価値観でCMSを選んでしまうことです。ユーザー部門はCMSの専門家ではありません。本来は、自社の運用体制に合っているかどうかを情シスなど、システムをシステムとして評価できる部門なり担当者が精査すべきなのです。

ここで「CMSの哲学」という概念を使います。「哲学」というと大げさですが、製品の設計思想や進化の過程から生じる「想定している使い方」を哲学と呼ぶことにしましょう。各CMSにはそれぞれの哲学があり、自社の運用とずれてしまえばいくら機能が豊富でも、役には立ちません。哲学と実運用がずれていない製品を選び、ずれてきたら大胆にCMSを置き換えるくらいの覚悟が必要なのです。

CMSを選ぶ4つのポイント

CMSの哲学は、4つのポイントに分解できます。CMSを選ぶとき、この4点に注目すると、自社の運用とずれていないか、比較的簡単に判断できるでしょう。

静的か動的か

1つめのポイントは、静的CMSか動的CMSか?です。

静的CMSでは、ユーザーが見るWebページは、HTMLも画像もCMSによってあらかじめ生成されています。Webサーバーは存在するHTMLや画像などをただ返すだけなので、「静的」と呼ばれます。

動的CMSでは、ユーザーが見るWebページは、データベースに格納されているテキストなどから、見るたびに生成されます。Webサーバーがその都度HTMLを生成して返すので、「動的」と呼ばれます。

静的CMSと動的CMSの違い

一般的に、静的CMSは動作が速い一方、ユーザーごとにコンテンツを切り替えるなどの処理は動的CMSの方が得意、といった違いがあります。自社ニーズが静的CMSでも十分ではないか、本当に動的CMSが必要なのかをしっかり検討するとよいでしょう。サイト規模が小さければ、静的CMSのほうがシステム構成はシンプルですし、Webアプリケーションとして動作する動的CMSには脆弱性がつきものですから、自社でOSやアプリケーションの更新ができるか、も重要な論点です。また、最近は表示速度も検索順位に影響することが知られており、大規模サイトでパフォーマンスを保つには、システム構成からCSSの書き方まで、運用には多くのノウハウが不可欠です。

管理対象は何か

CMSの管理対象にはコンテンツとファイルがあります。

コンテンツを管理対象にしているCMSでは、コンテンツの構成要素をそれぞれCMSに登録することが多いです。記事のタイトルや本文をCMSに登録するのはもちろん、ヘッダーやフッターは部品として、ロゴ画像やテンプレートなどもCMSに登録しておき、CMSがWebページとして合体させ、生成するのがコンテンツを管理対象にしているCMSです。

ファイルを管理対象にしている(にできる)CMSは、HTMLや画像などのファイルを管理します。Web制作会社から納品されたHTML、CSS、画像などの構成ファイルをアップロードする運用では、この方法で十分です。

管理対象はコンテンツかファイルか?

コンテンツもファイルも管理できるタイプのCMSもあります。CMS移行前のコンテンツはファイル単位で管理し、まずはシステムで管理できる状態にします。キャンペーンサイトなど、Web制作会社から納品されるファイルを置くだけの運用と、CMSにタイトルや本文を入力して新たにコンテンツを作る運用が並列する場合に特にメリットがあります。

異なる管理対象を併用できるCMSもある

運用体制はどうか

Webサイトの運用体制には、中央集約型、分散型、半自動化型、パートナー協力型の4類型があります。

中央集約型とは、社内でWebサイトを運用する責任部署があり、サイトの更新やデザインを管理している場合です。各部門がコンテンツを登録するのではなく、担当部署が運用を担うことで、強力なガバナンスの下でサイトを運用できるメリットがあります。

中央集約型の運用体制

分散型とは、Webサイトを全体的に管理する部署はあるけれど、コンテンツの登録などの運用は各部門に任されている場合です。部門ごとにWeb担当者を置く必要がありますが、コンテンツを部門のニーズに応じて更新、拡充できるメリットがあります。

分散型の運用体制

半自動型とは、商品データベースやカタログサイトなど、コンテンツの元が別にあり、Webサイトの更新を自動化する場合です。Webサイトの担当部署は、サイトの立ち上げやリニューアルには積極的にかかわりますが、日常的にはメンテナンスはしません。すでに大量のデータソースがあり、人手をかけずにサイトを作ったり増やしたりするときの運用体制です。

半自動化型の運用体制

パートナー協力型とは、発注部門としてのWeb担当部署はあるけれど、Web制作会社や広告代理店など、外部の会社が実作業を担当する場合です。Web担当部署は納品されたファイルをCMSに登録する(登録まで外部で行い承認のみの場合もある)だけなので、高機能なCMSは必要ありません。コンテンツに即したデザインを採用できるなどのメリットがあります。

パートナー協力型の運用体制

上記は類型ですので、4つを混合させる場合もあります。たとえば、広報部が各部門の依頼に基づいてコンテンツを追加する一方で、営業部門の商品データベースから商品名や画像などを自動的に取得し、カタログサイトを更新する場合です。運用体制は会社の規模や部門間に連携する文化があるかなど、各社各様で当然です。CMSに合わせて運用するのではなく、運用に合わせたCMSを選ぶことが、製品選定の最重要ポイントです。

混合型の運用体制

どの運用体制でも、CMSにあらゆる機能が求められるわけではありません。「コンテンツを登録する機能」はCMSに欠かせないように思えますが、パートナー協力型の運用体制ではファイルとして登録できれば十分なのです。要求仕様をまとめる際は、運用に合わせて必要な機能への配点を重くするとよいでしょう。製品によっては、特定のパターンでしか運用できない場合もあります。機能表だけで評価せず、自社の運用を想定しないと失敗します。

運用体制と重視すべきCMSの機能

Webマスター支援はあるか

CMSを導入し、自社の「道具」として使いこなすには、サポートやコミュニティの存在が欠かせません。NORENのような企業製CMSであればサポートがつくのは当然です。しかし、問い合わせがメールだけだったり、販売だけに力を入れていて、電話担当者が要領を得ない回答しかできなかったりする場合もあるでしょう。サポートページにFAQが充実しているかも、CMSの機能と同等に確認するとよいでしょう。

コミュニティはWordPressなどのオープンソース製品に特有の要素と思われているかもしれません。しかし、企業製品でも「ユーザー会」などを組織し、利用企業同士の事例紹介や開発元との意見交換などが活発な場合もあります。分からないことがあっても、ユーザー同士で助け合えるのはサポートとは異なる魅力です。

NOREN採用企業の運用体制

NORENはたくさんの企業に採用されていますが、各社で運用体制は異なります。

NOREN採用企業の運用体制

日立製作所は、ブランド戦略室がWebサイト全体を運用する中央集約型です。製品情報や事例が中心ですので静的CMSに自社でコンテンツを登録する運用です。また、多くのグループ企業がありますから、すべてのテンプレートを備えるMAX仕様のひな形を持つ標準サイトを用意し、標準サイトを複製して各社のサイトを作り、不要なテンプレートを間引くことで、「日立グループ」としての一体性を維持できるようにしているのも特徴的です。

日立製作所のサイト展開

金のパスタなど、オーマイブランドで知られる日本製粉は、分散型の運用体制です。コンテンツを各部門が登録し、広報部が承認するような運用です。

日本製粉の運用体制

旅行代理店のエイチ・アイ・エスは、半自動型の運用体制です。旅行は商品点数が膨大でEコマースの運用にはデータベースが欠かせません。Webサイトのコンテンツを手動で更新するのでは人手がかかりすぎるし、満席時にコンテンツの公開を停止するような処理は不可能です。そこで、ツアー情報のデータベースからCMSにデータを取り込み、自動的にWebサイトが更新される運用にしました。人手を介する事を極力削減し、ケアレスミスをなくすことが出来ています。

エイチ・アイ・エスの運用体制

企業名は出せませんが某ヘルスケア企業はパートナー協力型の運用体制です。2社あるパートナー企業がコンテンツ(HTML)を制作し、CMSに登録することで納品します。ヘルスケア企業の担当部署は、承認依頼されたコンテンツを確認し、公開承認するだけの運用になっています。

某ヘルスケア企業の採用実績

NORENのサポート、コミュニティについて

最後にNORENそのものについて紹介させてください。NORENはすでに550社の導入実績があり、業種もさまざまです。

NORENの採用実績

本稿ではNORENそのものに言及せず、なるべく公平にCMSの選び方を述べましたが、最後にNORENの支援体制がいかに充実しているかについて言わせてください。

まず、NORENのサポートは、メール、電話だけではなく、WebやFAXでも可能です。サポート満足度98.2%はもっと高めないといけませんが、十分高いとも言えます。基本、構築、管理の教育コースがあり、製品を売っておしまい、ということはありません。保守費をいただいている期間であれば、バージョンアップは無償です。ユーザー会には外部からも講師を招き、最新のWeb動向とNORENでの実現方法を共有しています。

のれんのサポート体制

最後に自社の宣伝ですみません。皆さんのCMS選びが成功するよう願っています。

著者紹介:八木 康介(やぎ こうすけ)

NORENビジネスの立ち上げ当初からプリセールス活動に携わる、NORENビジネスの中心的な存在。10年以上に渡るCMSの経験に裏打ちされた提案やアドバイスへの信頼は絶大であり、幾多のプロジェクトを成功に導く。また、世の中の最新動向を常にキャッチアップする柔軟性が新たなヒントを生み出す側面もある。

Web Professionalトップへ

この記事の編集者は以下の記事をオススメしています