コンバージドシステムはSIerのビジネスを奪うのか?
ハードウェアが構成済みで、設定や管理ツールまで統合したハイパーコンバージドインフラのような製品は、クラウドと同じく、SIerのビジネスを奪う存在と捉えられることも多い。しかし、HPの橘氏はこの捉え方に異を唱える。「HPとしては基本的なハードウェアやソフトウェア、OS、ハイパーバイザーのレベルまではもはやパートナー様が付加価値が付ける領域ではないと訴えてきた。むしろ、この部分はパートナー様のコストや工数を削減し、エンドツーエンドを包含するサービスやソリューションに専念していただいたほうがシステム構築のバリューを発揮していただける。その意味で、今回の横河レンタ・リース様のようにパートナーシップはまさに理想的」(橘氏)というわけだ。
日本ヒューレット・パッカード エンタープライズグループ事業統括 プリセールス統括本部 サーバー技術本部 小川大地氏も、「出来合いのものであろうが、SIerが作ったものだろうが、顧客から得られる対価は同じ。であれば、SIerからすれば少ないコストで、自動化の図られているものの方がよい。若手に任せたいという場合でもハイパーコンバージドインフラであれば、安心して導入していただける」と語る。
横河レンタ・リースからしても、ハイパーコンバージドシステムは次のSIを見据えた商材だと前向きに捉える。「従来の労働集約型のビジネスから、ソフトウェア中心の価値のあるソリューション、導入した後の運用サービスなど価値を提供できる領域に移行するのに、ハイパーコンバージドシステムは重要だと考えている」と本間氏は語る。また、ユーザーという観点でも、中小企業の方が導入が進むのではないかと考えている。「大手のお客様はやはり構築後は塩漬けという場合も多い。その点、運用管理に時間をかけたくないという中小企業のお客様の方が、FlexOperationsやハイパーコンバージドシステムを受け入れる土壌は整っているのではないか」(松尾氏)と考えている。
ハイパーコンバージドシステムは日本の中小企業にぴったり
また、事業部ごとにクラウドを契約し始めて、ガバナンスが効かなくなっているという企業においては「クラウドをやめたい」というニーズもある。事業部からのニーズに迅速に対応し、収益を最大化するためのクラウド作りに、こうしたハイパーコンバージドシステムは最適化だという。小川氏は、「自前でクラウドを始めたいが、今までのコンバージドインフラのようにラック1本欲しいわけではないという声も多い。その点、省スペースで電力消費も小さいハイパーコンバージドインフラは日本市場にぴったりです。今までの垂直統合型システムはベンダーの押し売り的なところもあったが、ハイパーコンバージドシステムについては、むしろお客様から欲しいという声をいただきます」と語る。価格面でも、ハイパーコンバージドシステムの方が既存のシステムより高価になってしまう矛盾が他社ではあるが、ハードウェアベンダーのHPの場合、アグレッシブな価格設定がされているため、導入の敷居も低いという。
橘氏は、既存のハードウェアの集合体だったコンバージドシステムから、当初から集約前提で開発されたハイパーコンバージドシステムに移行することで、システム設計やビジネスが大きく変わってきていると指摘する。「ITのインフラがコンバージェンスの流れになっているので、今までのスペック重視から、導入スピード、増設計画、運用のコストへと、お客様との話すポイントも変わってくる」と橘氏は語る。迅速性や運用効率を兼ね備えたハイパーコンバージドシステムが、日本のITやSIerのビジネスをどのように変えていくのか、今後も注視していきたい。