直角に曲げても性能が落ちず、100年品質を保持する
それではKordz製のHDMIケーブルにはどういった特徴があるのかについて紹介しよう。高品質ケーブルをうたう同社だが、THX認証を取得した「EVS-HD0120R」(民生向け:1万4200円/1.2m)、「R.3-HD0150」(業務用:7500円/1.5m)の見た目は非常にシンプルだ。コネクターも小さめで、ケーブルもやわらかく標準的な太さでとり回しがしやすい。
市場にはもっと仰々しい製品があり、いかにも高級品という雰囲気を演出しているがそういったケーブルと比べると簡素な印象がある。
しかしここにはKordzならではのこだわりがある。ひとつは取り回しのよさ。テレビなどの映像機器は壁際に設置することが多く、コネクターの周辺のスペースには制限があり、かつ端子とケーブルの接合部分も90度近くまで曲げて差されることが少なくない。ケーブルやコネクターには邪魔にならないほどスリムかつ柔軟で、コネクターには抜けにくくしっかりとしている点が求められる。簡素な形状はそのために重要だ。
信頼性に関しても細心の注意が配られている。市販のケーブルでは買った直後は高い性能が出るが、使用しているうちに急激にスペックが落ちてしまう製品も少なくないとKordzは話す。ライフタイム保証をうたい、Kordzは100年使えるを思想としているのだという。そのために線材に使う銅や被覆、そしてコネクターなどほとんどの部材を自社で生産・選定している。
他社のケーブルは買ったときの性能は高くてもすぐに落ちる
インストールの現場などで発生するトラブルのうち、もっとも多いのが端子のぐらつき、次に多いのがコネクターの破損だそうだ。
まずはコネクター。市販品と比べると差し心地が明らかに硬い。“SureFit Connector”をうたうこのコネクターは、20N(約2kg)の引き抜き強度を持たせ、1000回以上の引き抜き試験をクリアーしている。ダイキャスト製でドイツ製やスイス製の機械を使って製造されているという。特にピンの加工についてはローレックスの文字盤の加工に使うのと同じ、スイス製の工作機械を使用しているとのこと。ピンの製造時にタイミングがズレ均一性が損なわれると折れたり接触不良の原因となるため高い精度が求められるのだという。
一方市販のHDMIケーブルでは、上下を挟んでとめるタイプのコネクターが多く、かつ製造に使うスタンパーも公差ギリギリまで酷使されている。最初は性能が出ても、使っているうちに形に変化するなどして、確実に差せない場合も生じる。そのためロック機構を付けたりもしているが、きちんと作ればロック機構は不要だというのがKordzの考えだ。
導体は単線のOFC(無酸素銅)を使用している。コストバランスに優れ、やわらかく帯域も広く取れるためだ。民生向けのEVS-HD0120Rは導体に銀メッキ処理も施してあり、電気信号は抵抗の低い銀メッキ層を通過するため、より高速で広帯域な伝送が可能になるという。
ちなみに一般的なHDMIケーブルでは撚り線が用いられることが多いが、これは主にハンダ付けがしやすいため。しかし撚り線では、高周波の信号を伝送する際に表皮効果が複雑に出ることもあり、ソリッドコアの単線に比べてノイズのコントロールがしにくい面もあるとKordzは話す。またコンタクトピンとケーブルとの間は多くの場合、ラインに並んだ工員の手作業でハンダ付けがなされているが、Kordzでは超音波溶接をするための特別な機械を導入し、均質な品質と精度を保持している。
ちなみにハンダの融点は180℃程度だが、その外装に用いる樹脂の融点は300℃とより高いので、製造方法によってはハンダが浮き、導体とピンのランドがつながらなかったり、ハンダ同士がブリッジして断線する原因になるという。そのためKordzのケーブルではハンダを用いず、超音波溶接が用いられている。ハンダも利用しているが、これは酸化防止のためのメッキで、端子と導体をつなぐ役割とは異なる。Kordzはこれらを総称して“Bitrate Optimised Soldering System (B.O.S.S.) Technology”と呼んでおり、超音波溶接、酸化防止のはんだメッキに加え、精度の高い工作機械による自動化を導入。信頼性が高く、安定した接合を可能にするとうたっている。