Tesla K20Xを使ったシステムは
オークリッジ国立研究所で現役稼働中
このTesla K20/K20Xも当然すぐさまHPCに採用されることになった。連載302回で紹介したCRAYのXE6であるが、このCRAY XE6にTesla K20Xを組み合わせたCRAY XK7はオークリッジ国立研究所にTitanというシステム名で納入され、2012年11月のTOP500で見事に1位を獲得する。
このシステムはいまだに現役であり、現時点での最新リストである2014年11月の順位でも2位を確保している代物である。
Titanの構造はCieroに非常に近いが、ノード数は1万8688個で、各々のノードには16コアのOpteron 6274とTesla K20xで構成される。ノード間はCRAYのGemini Interconnectで接続されている。
理論性能が27.1125PFLOPSに対して実効性能は17.59PFLOPSで効率は64.9%とそこそこ。性能/消費電力比はシステム全体で8209KWということで、2.14GFLOPS/Wまで改善している。
まだBlue Gene/Qの3.72GFLOPS/Wにはおよばないが、前回紹介した中国の星雲システムに比べると大幅な改善ができている。
NVIDIAはこれに続き、GK110コアのままメモリー搭載量を増やすとともに動作周波数を引き上げ、さらにTesla K20/K20Xでは13/14 SMXに制限していたものをフルスペックの15 SMXにしたTesla K40を2013年11月に発表。
翌2014年11月には、GK210という若干の改良版のコアを2つ搭載したTesla K80をリリースするに至る。
GK210はGK110と比較するとややシェーダー数が少ない(Tesla K20と同じ13 SMXに制限されている)ほか、動作周波数は定格で562MHz(Boost時に最大875MHz)と下げられているが、内部のレジスター数や共有メモリーの量がGK110に比べると倍になっており、同時に多くのスレッドを実行させられるという特徴がある。
またTesla K40はベースクロック745MHzとやや高めで、それもあってコア1つで235Wなのに対し、Tesla K80は動作周波数を下げた関係で2コアでも300Wに収まっており、性能/消費電力比ではTesla K40をわずかながら上回る結果になっている。
ちなみにNVIDIAの公式資料をベースに計算すると以下のようになる。
| GPU | 単精度 | 倍精度 |
|---|---|---|
| Tesla K40 | 18.26GFLOPS/W | 6.09GFLOPS/W |
| Tesla K80 | 18.67GFLOPS/W | 6.23GFLOPS/W |
すでにカード単体レベルではBlueGene/Qの倍近い効率を実現しているわけだが、システムを構築しようとすると他にさまざまな要素が必要になるわけで、普通に作ると中国の星雲システム程度の効率になってしまうのは避けられない。オークリッジ国立研究所のTitanが2GFLOPS/Wを超える効率を誇っているのは、CRAYの高い技術力の成せる技としても良いだろう。
さて、このあたりがNVIDIAの現行製品であり、ここから先は将来製品になるわけだが、そちらに踏み込む前に、次回は少し他社製品を見てみよう。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ











