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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第310回

スーパーコンピューターの系譜 アクセラレーターとしてのNVIDIA GPU

2015年06月29日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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CG業界の市場占有を狙うも
DirectXにお株を奪われる

 そもそもCineFXはなんのために導入されたのか? というと、公式の理由は描画品質を高めるとともに描画用のプログラミングの自由度を増やすことだが、要するにゲームだけではなくCGの市場にもっとGPUを売りたい、という意向が強く働いていた。

 この頃のGPU業界(といっても事実上ATIとNVIDIAの2社で、これに辛うじてS3やインテルがしがみ付いていた程度だが)は、より高性能・高機能化が進んでいくGPUをPCのグラフィック向けだけでは開発費が回収できない、あるいは特にPC向けのハイエンド向けグラフィック市場が段々規模が縮小していく可能性があることを危惧していた。

 PCのグラフィック以外の用途を真剣に模索している最中であり、CineFXはこうした「PC以外の用途」に向けた布石と考えればいい。

 ところが幸か不幸か、DirectX自身も急速に描画クオリティーを上げてしまったことで、CineFXのメリットはどんどん薄れる方向に行った。

 有名なところでは、例えば2002年に発売されたAnimusicという作品がある。これを製作したのはAnimusicという会社(元はVisual Musicという会社で、1995年に改称された)で、SIGGRAPHにもしばしばショートフィルムを提供している。

 このAnimusicに含まれているPipe Dream(下の動画)は比較的有名なのでご存知の方も居られよう。

 このPipe Dreamを含むAnimusicの作品は同社の専用ソフトウェアで開発されたものだが、それから2年後の2004年には、ATIがRadeon 9700 Pro上でAnimusicをリアルタイムレンダリングできるデモプログラムを配布するに至っている。それが下の動画だ。

 見比べてみると、微妙に表現が及んでいないところも目に付くのだが、DirectXベースでもCG作品クオリティーのものがリアルタイムレンダリングできる、ということが露骨に示された例である。

 結果的に、DirectXベースのレンダリングがゲーム以外でも使われ始めるようにもなったが、CineFXに関してのみ言えば空振りに終わったというべきか。ただCineFXとCgの実装は、この後のCUDAの実装に役に立つことになる。

→次のページヘ続く (CUDAの誕生

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