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手堅い日本メーカーからアグレッシブな市場開拓者への道を追う

ネットワーク雑誌の編集の頃、ヤマハルーターは教材だった

2015年05月25日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ヤマハネットワーク機器20周年ということで、ASCII.jpオオタニがネットワーク雑誌の編集時代から印象的だった製品をピックアップしてみた。1990年代から今までを振り返ると、つねに驚きを与えてくれたヤマハネットワーク機器のすごさがわかる。

「ヤマハルーター=見た目のいいルーター」だった1990年代

 ヤマハルーターに出会ったのは、オオタニが「インターネットアスキー」という雑誌の編集だった15年前にさかのぼる。当時はISDNが全盛期で、1996年開始のOCNエコノミーで夢の低価格常時接続が手に届くようになったという時代。複数のLANポートとNATの機能を搭載したSOHOルーターと呼ばれる安価なルーターが次々登場し、個人でも複数のPCでインターネットを楽しめるようになっていた。

 こうした中、出会ったのが「ISDN環境でインターネットにかんたんにつながるオールインワン・ルーター」を謳うRTA50iだ。TA、DSU、10BASE-T×4のほか、アナログポート×3、S/T点端子×2など多彩なポートを搭載し、PHSによるリモートアクセスが可能なPIAFSにも対応。Webブラウザを使ったGUIページもわかりやすく、「ルーターは難しいもの」というイメージを一気に払拭してくれるものだった。

スタイリッシュなキュービックスタイル「RTA50i」

 なにより印象的だったのが、「キュービックスタイル」と呼ばれる黒い立方体のデザイン。高級感のあるピアノのような表面仕上げが、ややチープな感じの他社製品と圧倒的に違っていた。その後に引き続く、液晶搭載のRTA52iやワイヤレスのRT60wなども家庭内に置くのに違和感のないデザインとなっており、とにかく「ヤマハルーター=見た目がカッコイイルーター」という印象を持っていた。

 とはいえ、当時はTCP/IPやLANに関する知識も希薄で、先輩から何度も朱字を入れられた覚えがある。告白すれば、シンプルなTAやモデムのレビューは書けたが、高度なルーターの技術や機能をきちんと書けていたとは言いがたい。本格的にヤマハルーターのすごさを知るのは、オオタニがネットワーク雑誌に移ってからになる。

ISDNバックアップとADSL+VPNの威力

 企業向けルーターとしては、2002年10月に出た「RTX1000」が一番印象深い。白と黒をメインとした筐体を青ベースに変更し、シリーズ名でもリニューアル感を見せたRTX1000は、ご存じヤマハルーターのベストセラー製品。スモールビジネス向けルーターのスタンダードとして君臨した製品だ。

スモールビジネス向けのVPNルーターとして定番のRTX1000

 当時、オオタニはネットワーク雑誌の編集担当で、ブロードバンドの黎明期をまさに現場で見てきた。NTTのフレッツ・ADSLに引き続き、2001年にはYahoo! BBがスタートし、ADSLの加入者はうなぎのぼりで増加。2003年には1000万回線を突破することになる。こうした中、ADSLでの利用を前提とした高速なブロードバンドルーターが市場を席巻し、コンシューマ系ルーターは激しいスループット競争に明け暮れることになる。

 一方で、企業でのADSL利用は決して順調に進んだわけではない。そもそも、既設の電話線の伝送能力を可能な限り使おうというコンセプトで生まれたADSLは、電話線自体の品質劣化やISDNとの干渉などで信号が減衰するという宿命を持っており、長距離の伝送も難しかった。そのため、ベストエフォートのお題目の元、通信品質が犠牲にされる傾向があり、通信が切れる、遅くなるということがよくあった。

 こうした中、安定しないADSLをISDNのバックアップ回線で補ったのがRTX1000である。正直、当時はメガビットクラスのADSLを64/128kbpsのISDNでバックアップするというソリューションにあまりピンと来ていなかった。しかし、信頼性・可用性を重んじる企業のネットワークにおいては、とにかく通信を継続できるISDNバックアップは十分に機能するものだった。こういうところがヤマハルーターの信頼性につながっているのだろう。

 こうした手堅さを持つ反面、RTX1000はさまざまなチャレンジに溢れていた。ブロードバンドやVPNのセキュリティ負荷に対応すべく、いち早くネットワークプロセッサーを導入。IPv6を標準搭載するほか、QoSや不正アクセス検知など企業での通信に必要な機能を確実にカバーしていた。さらに、パケットを種類別に分類しフローとして扱うことで、高速なパケット転送を可能にする「ファストパス」をファームウェアのアップデートのみで実現。出荷開始時から大幅にパフォーマンスを上げるという離れ業が印象深かった。

 個人的にはRTX1000は、VPNを学ぶための教材として利用させてもらったという印象が強い。異なるネットワークをセキュアな通信路でつなぐインターネットVPNは、高価な専用線を置き換える選択肢として、スモールビジネスで非常に利用価値の高いものだった。これを再現すべく、編集部に2本のADSL回線を引き、借りてきたRTX1000をつなぎ、GUIの画面で拠点間VPNを設定。実際にルーターで設定してみると、暗号化、トンネリング、認証など高度なセキュリティ技術の集大成であるIPsecも意外と容易に思えてくるのが不思議だ。

 その他、ルーティングプロトコルやNAT、パケットフィルタリングなどさまざまなネットワーク技術も、RTX1000を使いながら学んだ。GUIでも設定できるようになったRTX1000はエンジニアではない自分にとっても、想定読者である非専任の管理者にとってありがたい存在だったのだ。

最近のヤマハネットワークのキーワードは「チャレンジ」

 最近、印象に残った製品と言えば、なんといってもヤマハ初のスイッチ「SWX2200」であろう。ブロードバンドやネットワーク機器がコモディティ化しつくした2010年代に、長らくルーターを専業でやってきたヤマハがスイッチ市場に参入したのは本当に驚いた。実際、リリースの記事でも「ヤマハ、驚きのスイッチ市場参入!その役割とメリットは?」と書いている。

ルーターから設定できるSWX2200はスモールビジネスの現場で役に立つ

 しかし、ルーターから設定ができるスイッチという製品コンセプトは、聞けば聞くほど納得するものだった。ヤマハルーターを愛用しているスモールビジネスの現場では、決して多ポートスイッチは必要ない。とはいえ、ルーターに搭載できるLANポート数は限られているし、ルーターとスイッチの設置場所も異なる。その点、ヤマハルーターの拡張ポートとして機能するSWX2200は、運用管理の点でも合理的。実際にヤマハルーターと組み合わせて使うと、接続されている端末の見える化も可能で、オールヤマハならではのメリットを体感できる。

 2012年以降、なにかが吹っ切れたように、ヤマハは新ジャンルを開拓している。赤い筐体のファイアウォール「FWX120」、見える化機能を盛り込んだ無線LAN AP「WLX302」など尖った製品を次々と投入。VPNルーターも2Gbpsという圧倒的なスループットを持つ「RTX1210」が登場し、ヤマハはスモールビジネスで必要なネットワーク機器をまとめて提供できるベンダーに成長した。

 こうした最近のヤマハのネットワーク機器ビジネスを見ると、コツコツとものづくりする日本企業というイメージは、ヤマハの一面を捉えているにすぎないことがわかる。もはやヤマハからNASや、ロードバランサーが出ても個人的には驚かない。それくらい最近のヤマハはアグレッシブで、新市場を開拓するチャレンジ精神が溢れているように見える。日本が誇る高品質なヤマハのネットワーク機器が、もっとグローバルで高く評価されることを願いたい。

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