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内定企業の不祥事が発覚!そのまま就職すべき?

2014年11月07日 16時00分更新

文● アスキークラウド書籍編集部

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 リクルートキャリアの発表によれば、2015年3月卒業予定の大学生の就職内定率が、10月1日時点で86%となり、前年より4.3ポイント改善した。採用活動は現在も続いており、3月の卒業時点での内定率は9割を超えそうだという。

 しかし、内定しても気は抜けない。秋に粉飾決算が発覚し、存亡の危機を迎える会社があるからだ。たとえば、オリンパスが損失計上の先送りを認め、元社長の菊川剛取締役(当時)が辞任したのは2011年11月。旧カネボウは花王との共同出資会社設立による化粧品事業の統合を2003年10月に発表し、12月に撤回した。ウォールストリート・ジャーナルは2001年10月にエンロンの不正会計疑惑を報じ、同社は12月に連邦倒産法第11章の適用を申請、事実上倒産した。20世紀に遡っても、山一証券の自主廃業発表は1997年11月、日本テレビの粉飾決算発覚は1969年10月。上期の決算が確定し「もうどうにもならない」と経営陣が覚悟を決めるのが10~12月なのかもしれない。

 オリンパスの内定者には会社の将来を悲観し、入社を辞退した人がいたかもしれない。確かに、オリンパスには上場廃止の可能性もあったが、他の粉飾決算が発覚した企業のように上場廃止や解体に追い込まれなかった。それどころか、東京証券取引所から受けていた特設注意市場銘柄の指定が2012年6月には解除され、ソニーから500億円の出資を受け、現在でも平均年収約826万円の企業として上場を続けている。

 粉飾決算が発覚したとき、内定者には恐らく人生最初の決断が迫られる。粉飾を許す企業文化に染まりたくないと考えるのも、憧れのブランドだから入社の意思を変えないのも自由だ。しかし、結果論としてはオリンパスの内定者が会社の将来を悲観する必要はなかった。

 では、どうすれば正しく未来を予見できるのか。ひとつのヒントは「セグメント情報」だ。メディアで紹介される売上高や利益額は、ほとんどの場合、企業グループ全体の連結業績だ。全体としていい悪いをニュースとして報道するのがメディアの役割だとしても、就職が決まった企業のことをそれだけで判断するのは大ざっぱすぎる。セグメント(断片)情報とは、企業の経営指標を事業や所在地などの部分ごとに集計した損益や資産のこと。オリンパスの場合、不祥事のあった前年の2011年3月期決算を見ると、内視鏡などの医療事業で、連結営業利益約384億円を上回る約717億円を稼いでおり、少なくとも内視鏡部門志望の学生は「まず安泰」だったことが分かる。

 11月7日発売の『「強い会社」はセグメント情報で見抜きなさい 「ソニーは金融業」「TBSは不動産業」――財務諸表で読み解く各社のプラチナ事業』では、事業別&所在地別セグメント情報に注目したプロの方法論を紹介。2011年3月期~2013年3月期の連結業績と事業別セグメントから、粉飾決算に揺れたオリンパスの実態を丸裸にしている。


「強い会社」はセグメント情報で見抜きなさい
「ソニーは金融業」「TBSは不動産業」
――財務諸表で読み解く各社のプラチナ事業

長谷川正人 著

  • 定価:1,728円 (本体1,600円+税)
  • 発売日:2014年11月7日(電子版同時発売)
  • 形態:B6変型 (258ページ)
  • ISBN:978-4-04-866371-7
  • 発行:アスキー・メディアワークス
  • 発売:角川グループパブリッシング

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