ウェブで完結せず、リアルを楽しくするデザイン
── APOLLOで一番大変だったのってどこでしょう?
AnitaSun 私自体が一番面倒くさかったんじゃないですかね。
司馬 いやいや……。ゼロからつくるのではなく、BOOTHの機能を踏襲しているので、その兼ね合いが難しかったですね。あとはダウンロード版/パッケージ版の買いわけとか、コメントはどういう風にさせたらみんな書いてくれるかとか。いっぱい並んでいるジャケットでは、別ページを開かずに詳細がアコーディオン表示されるので、流れている音楽やユーザーの回遊を止めずに済みます。あとは1200円の作品を、1500円とかであえて買える「BOOST↑」(ブーストアップ)という仕組みも入れてます。
── お布施的な意味で?
司馬 そうです。やっぱり即売会の熱量のようなものがウェブだと届かなかったりするので、その熱量をどうシンプルに見せたら伝わるかなってところに苦労しました。
── コンテンツが膨大に集まるネットの投稿サイトでは割とランキングで人気を見せますが、そういう風にはしなかった?
AnitaSun このサービスに関しては、ランキングはやめたほうがいいと思います。同人音楽超まとめもそうですけど、どっちかっていうとよくわからないものをたくさん聞いて欲しいんです。ランキングってそもそも聴いたことがない、知らないアーティストってクリックしてくれない。そしてあるサービスでトップの集団ができてしまうと、なかなか動かなくなって新陳代謝がなくなってしまう。
── 同人即売会でも、「壁サークル」的なところまでいくと、不動の地位になるとか?
AnitaSun コミケはその辺わりとシャッフルされてますけど、ネット上のランキング中心なサービスは、多くは動かないところまできてる。いろいろなシーンで同じことが起こったから、そこはランキングに頼らないようにしたかった。
清水 並び順もサークル登録順です。
── じゃあ、早く申し込んだほうが上の方に(笑)。
清水 APOLLOを公開して、で20〜30サークルの申し込みがありました。そして10月28日現在では、約300の登録数と、かなり歓迎してもらっている手応えがあります。
── どういう人が申し込めるんでしょうか?
AnitaSun CDを出しているサークルに限定してます。そうすると、ある程度手をかけた作品だけが集まります。
── オンラインなので、海外からの応募や発送は対応します?
司馬 その作品をCDで出していたり、今後出す予定があるなら、まず参加は可能です。ダウンロード販売であれば物理的な問題はないので、ぜひ参加してもらいたいですね。海外のユーザーもダウンロードものなら買えると思うので。
── しかし、このAPOLLOのインターフェイスって音楽だけじゃなくて、他のにも使えそうですよね。
司馬 今回は同人音楽の即売会を模してますが、夏フェスとかに取り入れても使えると思うんです。フェスの前後1週間だけ開設して、視聴できるみたいな。例えば、「くるり」を初めて聴く人は、どの曲をおさえておけばいいのかとか。アルバムは何枚もあるのに、時間の関係でフェスでは5曲とか、多くて10曲ぐらいしか演奏できないですよね。
AnitaSun この曲はみんなで合唱するなみたいなのを、セットリストに入れておくとかね。
片桐 事前に聴いていったほうが現場で絶対楽しめるよね。
司馬 AmazonやiTunesのようにウェブで完結するすごく便利なインターフェース……ではなく、リアルをさらに楽しくするものを目指しました。
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