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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第269回

20nmが白紙になり28nmで再構築するNVIDIAのGPUロードマップ

2014年09月08日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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2013~2015年のNVIDIAロードマップ

得意の28nmを再設計し改良

 20nmが白紙に戻ったことで、今後どうするかであるが、16nm FinFETまで新製品の投入を遅らせるのはあまりに遅すぎる。それもあって、急遽28nmにプロセスを戻した上で、改めてGM204の再設計が始まった。要するにGM107の規模拡大版である。

 さすがにこの新しいGM204の設計と製造にはほとんど問題がなかった。もうすでにNVIDIAはTSMCの28nmに十分習熟しているし、28nmプロセスそのものの歩留まりも十分高い。さすがにシェーダーの規模は、オリジナルのGM204が20 SMMだったものを、14 SMMまで減らすことになっている。

 さもないとGK110と変わらない規模になってしまい、価格的につらいためである。とはいえ、ダイサイズそのものはGK104-A2より確実に大きくなってしまったようだ。ただ幸いなことに、昨今は28nmプロセスの製造コストが以前に比べると下がっている。これに関しては連載261回で説明したが、この結果としてGM204のダイの原価は、GK104の当初の原価と同程度かやや低い程度に抑えられると見られる。

 さて、そのGM204は6月前には最初のエンジニアリングサンプルが出てきており、評価ではおおむね想定通りの性能が出ているらしいのだが、想定外だったのは高負荷時のMaxwellの性能がKeplerに及ばないということだった。

 もともとKeplerはCUDAコア数と命令発行ユニット、それとメモリーアクセス性能が大体1:1:1くらいのバランスを狙ったもので、Maxwellではこれを4:4:3位の比率にしている。つまりCUDAコアがやや過剰に処理する仕組みだが、Keplerはバランスこそ取れているものの、ボトルネックになるのは最終的にメモリー帯域であり、これをフルに使うにはやや冗長度が高かった。

 そこでMaxwellでは命令発行と処理の比率を引き上げて、メモリー帯域をフルに使おうという発想である。ところがGM107くらいの規模だとこれがうまくいったのだが、新設計のGM204で同じことをやると、逆にメモリー帯域、正確にはメモリーアクセスのための内部のインターコネクトがボトルネックになりやすいらしく、ピーク性能ではKeplerに及ばないというシーンもいくつかあるらしい。

 こうしたことを勘案し、GM204世代では「GeForce GTX 780」と「GeForce GTX 770」を、GM204コアの「GeForce GTX 980」および「GeForce GTX 970」で置き換えるものの、「GeForce GTX 780 Ti」以上のグレードに関しては引き続きGK110コアベースのまま継続販売という判断が下された模様だ。当初はGM204ベースの「GeForce GTX 980 Ti」も噂されていたものの、これはどうもなくなってしまったようだ。

 そんなわけでロードマップに戻ると今月中にこの「GeForce GTX 980」と「GeForce GTX 970」がリリースされる予定だ。800番台がスキップされてしまったのは、すでにモバイル向けにはGeForce 820M~GeForce GTX 880Mという800番台の製品がGF117/GK104/GM107/GM108と幅広いアーキテクチャーのまま出荷されており、これとGM200世代が混じるとわかりづらいからということで、改めてGM200世代のコアはデスクトップ/モバイルとも900番台にそろえるという判断があったそうである。

 このGM204に続き、第4四半期(11月と聞いているが、若干早まるかもしれない)には「GeForce GTX 960」も投入される。今ハッキリしないのがこのGeForce GTX 960の素性で、GM204コアをそのまま使うという話と、新たにGM206コアが投入されるという話の両方がある。

 ひょっとするとGeForce GTX 960はGM206コアで、後追いで「GeForce GTX 960 Ti」がGM204コアで投入される可能性もあるだろうが、現状そこまでははっきりしない。

→次のページヘ続く (20nmを飛ばして次は16nmに

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