最近気になるセキュリティ事件のあらましをざっくり解説! 注目点とユーザーレベルでの対策をお伝えします。
経済を超えて、政治や軍事を動かすようになったSNS
海外で日本人男性が拘束され、その画像が拘束した集団のものとみられるアカウントによってSNSに投稿された。一昔前なら絶対につながることのなかった集団・人物と、画面上の操作のみで個人が接触できてしまうのが現在のネット環境だ。
ITジャーナリストの三上洋氏は、「一昔前なら、SNS上のことはSNS上で終始していました。今はSNS上での呼びかけが経済の領域を超えて、現実の政治、軍事を動かしてしまう。リアルにきわめて直接的に影響するものになっているんです」と見解を示す。
SNSが政治に大きな影響を与えた代表例の1つとしてまず挙げられるのが、記憶に新しい「アラブの春」。
2010年から2012年にかけ、アラブ諸国で起こった民主化要求デモを総称する言葉だ。デモの詳細な内容や結果についてはここでは割愛するが、あれだけ多くの人を巻き込んだ大きな運動に発展した一因は、SNSにあるとされている。
「『アラブの春』が与えた影響は非常に大きく、今ではSNSが、特定集団の思想や意見を広めるためのツールとして当たり前に使われています。単に、人と人とがネット上で交流するだけのツールではないのです」と三上氏は話す。
各ユーザーのITリテラシーが問われる部分だが、ちょっとした弾みで家族や友人、知人など、身近な人物が世間の槍玉にあげられないとも言い切れない。個人がこうした集団のアカウントとコミュニケーションをとることも容易であり、使い方を間違えると惨事を招く要因になりうる。
SNSを発端とした惨事が、決して人ごとではないのだ。
「気をつけましょう」よりも「SNSというものを再認識する」ことが重要
SNSと上手に付き合っていくための心構えについて三上氏は、「たとえば、ネットのことをよく分かっていない中学生の息子がいたとします。その息子にスマホを渡したとして、即、反社会的な集団のアカウントに何かを送って大惨事に……というケースはあまりないかもしれません。
ただ、今のSNSがどういうものになっているのか、どういう性質を持っているのかということを、改めて各機関が周知していく必要はありますよね」と話す。
一方で三上氏はこうも話す。「今回の事件は、SNS上には様々な集団が存在しているということを再認識させる事件ではあります。件のアカウントは削除されましたが、その後P2Pで発言でき、発言者以外は投稿を削除できないSNSに活動の場を移したようです。
この事実についての見方は色々あると思いますが、1つ言えるのは、SNSにはいろんな立場のいろんな人や集団がいて、日常生活では関わるはずのなかった人と、いとも簡単に接触できる。
そして接触の結果、リアルに影響を与えることもある。単純に『気をつけましょう』『注意しましょう』で終わらせるというよりは、『SNSがどういうものになっているかの認識を、各個人が改めないと』と考える方がいいのかもしれません」
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