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出会い系サイト「OkCupid」にモルモット扱いされるユーザーたち

2014年08月06日 07時00分更新

文● Selena Larson via ReadWrite

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どんなデートをしているのかをただ知りたいだけの企業と、それに利用される人たち

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「OkCupid」のデートトレンドリサーチのブログが帰ってきた。我々は人がいかに浅はかであるか、そして人々のネットでの過ごし方が企業の気まぐれで変えられてしまうかを思い知らされる。

デートに関しての最新のソーシャルデータを公表しているこの出会い系サイトは、フェイスブックが議論を巻き起こした一件などのオンラインでの実験を批判する人々に対して挑戦的な存在であり、「ネットを使う限り、あなたはいつ何時でも実験の対象だ」と言って憚らない。

関連記事:フェイスブックによる心理操作実験から脱出する方法

先日寄せられた「人を使った実験」と題されたブログの投稿では、用いられる写真によって人が相手をどの様に受け止めるかという事をみるため、OkCupidはわざと相性が悪い二人をペアにし、お互いが勧められた人と上手く行くかという実験を行った。結果はお互い良いマッチングとなった。

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実際の相性と表示される相性、その会話に至る比率

OkCupidは実験対象となったメンバーに対し、その結果を明らかにするのをなんとも思っていない。2010年8月から2011年4月までの間、OkCupidのOkTrendsは、メンバーから寄せられたデータを元に「マスターベーションについての統計」とか「女性の写真を見て男性はどんな反応をするのか」といった様なテーマについて分析を行い、非常な人気を博した。

あるOkCupidのリサーチでは、

私達は幾つかの相性が悪いペア(良いペアである確率が30%)に対し、お互いの相性は最高だと伝えた(いいペアである確率が90%だというデータをみせた)ところ、予想通り、多くのユーザーが相手に対してメッセージを送った。結果として、サイトでアドバイスしている通りの結果となった。

OkCupidはこの実験を、フェイスブックの研究者が公表しネットで大騒ぎになった件に例えて語っている。フェイスブックが意図的にユーザーのニュースフィードを操作して、投稿がポジティブなものかネガティブなものかで人の気分は変わるのかという実験を行ったのは記憶に新しい。

OkCupidのブログの投稿には、この手のテストが問題を起こしかねないという件については否定しており、むしろ大したことではないと言わんばかりに「これは実験でした」と言い切っている。

「データサイエンティストは自分たちがソーシャルサイエンスについて行っていることに関して、よく理解していない。OkCupidとフェイスブックのやっていることには大きな違いがある」と、ハーバード大学 バークマンセンターでソーシャルメディアの研究を行っているレイ・ジュンコはReadWriteに語った。

ジュンコによれば、OkCupidの「実験」とは、A/Bテスト以上のものではないが、その表現方法は第三者的なものではないという。彼らは自分たちの実験はフェイスブックが行ったものと比較されることがあるが、OkCupidの実験はフェイスブックの場合と違い、潜在的な害はないという。

「フェイスブックが行った情報操作は潜在的に有害でありえる。OkCupidのテストの場合、最悪のケースとして考えられるのは、幾らかの人たちは更にメッセージのやり取りを続け、好きでもない人とデートしたかも知れないというくらいのことだ」

それは問題なのか?

フェイスブックがそうであるように、OkCupidでもプライバシーポリシーに「集められた情報はサービス、製品、コンテントの利用情報など、研究分析目的に利用されることがあります」とある。

つまりフェイスブックと同じく、実験の対象になりたくないのであればこのサイトを一切使わないことしかない。

しかしながらこの出会い系サイトについては押さえておくべき点がある。

インターネットを利用する際、この手のテストにさらされることになる。グーグルやアマゾンの端に表示されている広告はデータサイエンティストによって購入のためにクリックしたくなるようデザインされている。どのように、そしてなぜ特定のサイトにアクセスしたのかを明らかにするため、そして私達の個人情報で儲けを得るためにWeb上の活動は追跡されている。

企業は自分たちの製品のA/Bテストを常に行っている。ということは人によってはバージョンが異なるWebサイトを見ている可能性があることを意味する。
サービス利用規約に合意すると言うことは、サービス向上のための実験に協力する事にも合意しているということになる。

しかし、もしそういった企業がデータをただの分析のためではなく、情報操作のために利用するとしたら?

ジュンコは「ソーシャルサイエンティストが実験を行う際、自分たちの介入により起こりえる最悪の事を考えなければなりません。介入するに足るほどの結果がその研究から生まれるのか? もしそうである場合、悪影響をどの様に最小化するのに何が出来るのかについて考える必要があります」と語っている。

フェイスブックのケースでは、トップクラスの大学の研究者と協力しその成果を論文として提出した。何の断りもなく人の雰囲気を操作する実験対象にされたユーザーのフラストレーションもさることながら、大学の審査委員会のやり方や、教育研究目的のリサーチの倫理についても議論が巻き起こった。

OkCupidは自分たちの実験結果を論文の形で提出しておらず、自分たちのマッチングアルゴリズムの是非を証明するためにどこかの科学的組織と協力したということもない。彼らが検証したことは、まずマッチングアルゴリズムが正しいかどうかということであり、データから導き出された相性の善し悪しを示す数値を与えられた被験者が、それを信じるかどうかということだ。

「彼ら技術企業は”A/Bテストが出来ないじゃないか”と憤然としているようだが、こんな事を言っている例は他に聞いたことがない。しかしこれをあまり大げさに取り扱うと、本当に何が起こっているのか、そして他の実験を行うにあたってユーザーを最大限守るにはどうすればいいのかということに関して話し合うことも出来なくなる」とジュンコはいう。

企業が行ったユーザーの気分に影響を与えようと秘密裏にデータを操作する事と、出会い系サイトを使ったマッチングアルゴリズムが正しいかどうかの検証とでは、異なる点はある。しかしながら彼らが言う「実験」は、我々がデジタルの世界に生き、時として企業のサービス向上のためのテストの被験者となる事があるという事に対し、注意を喚起させるものだ。

私達には選択の余地がある。サイトポリシーを読み込み、自分たちが置かれた立場を理解する。もしくは一切ネットを断つ、あるいは分かっていながら何でもないように振る舞うかだ。OkCupidの場合、害があるとすれば基本的に相性が悪い人との間でやりとりされるメッセージがそれにあたるが、時としてフェイスブックのテストなど、更に悪いケースもある。

画像提供
トップ画像:Pablo(Flickrより)
マッチングデータ画像:OkCupid

Selena Larson
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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