Microsoftが7月17日、大規模なリストラ計画を発表した。1万8000人という解雇人数は同社の14%に相当する数で、Microsoftにとって過去最大であるのはもちろん、ハイテク業界全体でもめったにない規模だ。しかし、この多くは今年4月に買収完了したNokiaのデバイス事業であり、これにともない「Nokia X」の終了など、Microsoft傘下でのNokiaの方向性を打ち出したと見られる。
4ヵ月の短命で終わった
Androidベースの「Nokia X」が想起させるもの
Nokia Xは2月末の「Mobile World Congress」で発表したNokiaのAndroidベースの端末だ。発表からわずか4ヵ月余だが、NokiaによるAndroidスマートフォンとあって、注目度は高かった。2月末にNokia X/X+/XLの3機種を発表、6月には「Nokia X2」も加わり、4ヵ月の間に4機種がリリースされた。
だが、Nokia Xは一般に想像されるAndroidスマートフォンとは似ても似つかぬスマートフォンだ。角張ったカラフルなフォームファクタは「Lumia」を思わせ、Androidからフォークされた「Nokia X software platform」をベースに、タイルを採用したインターフェースもLumiaのようだ。アプリを縦断的に表示する「Fastlane」などNokia独自の機能も多い。
それもそのはず、Nokia Xは“橋わたし”という重要な役割を担っているのだ。詳しくは(Microsoft買収完了前の)MWCでのインタビューを参照いただきたいが、SkypeやOneDriveなどのMicrosoftのクラウドサービスへの入口であり、Nokia Xに慣れたユーザーが次にアップグレードする際にLumiaを選んでもらうという架け橋の役割もある。
NokiaがNokia Xで狙うのは、スマートフォンが初めてという新興国ユーザーだった。Nokiaは昔から新興国で地位を築いてきたベンダーだ。SymbianからMeeGo、そしてWindows Phoneとハイエンドプラットフォーム戦略が変化する一方で、ローエンドではSeries 40ベースの「Asha」を立ち上げた。Ashaは当初こそNokiaを救ったが、すぐに中国やインドなどで地元メーカーが提供するローエンドAndroid端末による浸食を受けた。Nokia XはAshaとLumiaの中間という位置づけでポートフォリオに組み込まれた。
Nokia X打ち切りのニュースを聞きながら、Nokiaが1年でMeeGoからWindows Phoneに切り替えた時を思い出してしまった。Nokiaはその後、最初で最後のNokia製MeeGoスマホ「Nokia N9」を世に出したものの、Windows Phoneに移行するとわかっていた後だけに、マニアでなければ買う気になれない端末となった。Nokiaからみると、Nokia Xはまたもや時間とコストを無駄にした例と見えなくもない(Nokia X2を発表した時点で、すでにNokia Xの運命も決まっていたとしてもおかしくない)。
ローエンドも含めてLumiaに一本化するNokia
だが、当時のNokiaと現在とは大きな違いがある。Nokiaは(晴れて)Microsoft傘下となっており、Microsoftのデバイス戦略を実現する重要な部門となっているのだ。それが今回の発表だろう。解雇される1万8000人のうち、1万2000人以上がNokia出身者となると言われている。製造はフィンランドのサロとテンペレの2拠点が中心となり、Nokia Xの製造を担っていたハンガリーのコマーロムにある工場など、多くの製造拠点は段階的に閉鎖される。
Nokiaの元CEOで、Microsoftのデバイスとサービス事業部の執行バイスプレジデントを務めるStephen Elop氏は、「Microsoftの下での携帯電話の役割と、Nokiaでの携帯電話の役割は異なる」とし、Windows Phone一本にしぼる戦略を明確に示した。Nokia Xに加え、Ashaも打ち切りとなり、ローエンド分野もWindows Phone/Lumiaがカバーすることになる。Nokia XからローエンドのWindows Phoneへの移行は「速やかに進めていく」としていることから、早期に安価なLumiaが発表されると期待してよさそうだ。
これにともない、Nokia時代にローエンドを担っていたMobile Phone事業部とLumiaを担っていたSmart Device事業部は一本化される。
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