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「妥協無きシンプルさ」を実現するNutanixのデータセンター仮想化とは

2014年06月30日 05時23分更新

文● 松下 康之(Yasuyuki Matsusihta)/アスキークラウド

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 サンノゼの新興ベンチャー、Nutanixが2014年6月25日にタイ、プーケットで開催したアジアパシフィック地域におけるパートナーカンファレンスに参加した。

 Nutanixは、かつてオラクルでExadataを開発していたエンジニアが創業したベンチャーで、データセンターにおけるストレージの仮想化をベースに高価なSANなどを使わなくてもグーグル、アマゾンクラスのデータセンターを構築することを目標として作られたスタートアップ企業だ。

 既に過去4回の投資ラウンドで$172Mを調達しており、順調に成長していることがわかる。アジアにおいても重要視しており、日本法人が出来て2年未満で今回のパートナーサミットと称されるイベントを開催していることからも分かる。今回は東南アジア、中国、韓国、日本などから約100名のパートナーが参加し、Nutanixのソリューションと今後の方向性などについてレクチャーを受けた。

 「Nutanixは何を提供している会社ですか?」と日本法人の代表、岡田氏にシンプルな質問を向けてみると「Nutanixはいわゆるアマゾンやグーグル、フェイスブックなどのサービスを支えるデータセンター、それもとても巨大なデータを分散して運用出来るデータセンターを自社で運用出来るように安価なサーバーを活用して実現する製品を開発、販売しています」と答えが返ってきた。

Nutanix合同会社の代表、岡田氏
Nutanix合同会社の代表、岡田氏

 データセンターレベルのコンピュータシステムを構築しようとするとCPUとメモリの多重化、冗長化と巨大なデータを扱うストレージ、それに載るデータベースシステム、高速なネットワークシステムなどが必要だ。グーグルなどは過去には自社でサーバーを設計製造し、コスト削減と高性能のバランスを実現していたという。CPUの高速化、SSDによるストレージの高速化が相まって如何にデータと演算を高速化するのかというのが大きなチャレンジだ。そこに約15年ほど前に市場に登場したのがSAN(Storage Area Network)と呼ばれるソリューションだ。HDDを集積化して光ファイバーでCPUと接続し、より高速なアクセスを実現しようとする試みだ。ただし、アクセスが高速であったとしても高価な専用ハードウェアであり、導入には大掛かりな予算が必要となる。相変わらずCPU-ストレージ間通信のボトルネックは発生し、スケーラブルに構成を変更することは困難であり、システムの設計、管理が可能なシステム部門の人員が潤沢な大手企業以外の導入は難しかった。

 「そこにNutanixのソリューションが効果を発揮するのです。高価なSANを導入しなくても安価なx86ベースのサーバーにNutanixのソフトウェアを載せることで、分散ファイルシステム、CPU負荷の分散などをアプライアンスで実現出来るのです。これまでのSANのアーキテクチャーは仮想化したサーバーから多くのリクエストを処理出来るような構造になっていないので、必ずI/Oのボトルネックが発生します。そこが仮想化を前提にしたNutanixのソリューションと違うところです」と岡田氏は語る。

 今回のパートナーサミットの前日、6月24日にデルとのOEM契約の発表があった。
http://www.nutanix.com/2014/06/24/nutanix-announces-global-agreement-with-dell/
これはNutanix製のアプライアンスではなくデル製のPowerEdgeサーバー上でNutanixのソフトウェアだけを動かして、仮想化を実現するということを2社が合意したことを意味している。つまりハードウェアはDellに統一しているという場合などでは、ハードウェアを統一出来ること、これまでのDellのリセラーからも調達出来ることなど、米国内の企業にとっては大きな意味があるだろう。

 「Nutanixはソフトの会社なんですか?アプライアンスの会社なんですか?これからどっちを目指していくのでしょう?」とSenior PV of Marketing、Product ManagementのHoward Ting氏に質問を投げてみた。「Nutanixの競合力はソフトウェアにあります。大企業の顧客にはデルとのアライアンスのようにソフトウェアだけを使いたいということもあるでしょう。また導入と拡張の簡単さからアプライアンスを選択する企業も大変多いと思います。なので、どちらも進めるというのが回答です」と答え、大企業及び中小企業双方への導入が進んでいることを示唆した。

会場からの質問に答えるNutanixのVPたち。左端がHoward Ting氏。
会場からの質問に答えるNutanixのVPたち。左端がHoward Ting氏。

 Nutanixのコアな技術は、仮想化されたシステムにおいてストレージへのアクセスを最適化するソフトウェアコントローラ、分散ファイルシステムの技術を応用したスケーラブルなファイルシステムへの高速なアクセス、そしてそれらをシンプルな構造にまとめたところだろう。岡田氏によれば「UCB卒のクレイジーなエンジニアがパフォーマンスのカリカリにチューニングしている」そうで、ソフトウェアだけではなくハードウェアに最適化した高性能もNutanixの顧客が評価しているポイントだそうだ。

 今回はNutanixのリセラーパートナーに向けての決起大会という意味合いが強かったが、Nutanixの導入が進めばより技術的なレクチャーも増え、システムインテグレーションを行うパートナーにとっても手応えがあるイベントに成長していくと思われる。「どうしてそんなに性能が良いのか?どういう構造になっているのか?内部のことを知りたくなるのが日本のお客さん」と日本法人であるNutanix合同会社のシニアSEの金丸氏は語る。「なので、アプライアンスと言っても勉強しないといけないことが多いので大変です」と笑う。

 前回、記事にしたBitcasaによるクラウドストレージサービスの抽象化と同様に複雑なデータセンターの仮想化と抽象化、パブリッククラウドとプライベートクラウドのハイブリッド化など、複雑なシステムをシンプルに抽象化して素早くビジネスに役立てるのか、それがこれからのICTベンダーの目指すべきゴールであろう。単に高速なコンピュータシステムだけではビジネスの変化に対応出来ず、ビジネスチャンスを逃してしまう。

 なお「Nutanixの会社としてのマントラは何か?」という質問には「Uncompromisingly Simple」、つまり「妥協無きシンプルさ」と答えてくれたのは前述のHoward Ting氏だった。アプライアンスのシンプルさが日本の顧客の高い注文に応えられるか、注目したい。

参考サイト:http://nutanix.co.jp/

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