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WWDCで見えたアップルの野望:iPhoneを越えてユーザーの生活全般まで広がる未来

2014年06月19日 16時00分更新

文● Adriana Lee via ReadWrite

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アップルの未来がどこへ向かっていくのか、同社はWWDC で重要なヒントを示した。それはどうやらポケットの中ではない。

applelogoregentstreetlondonFlickrJonRawlinson

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6月初めに開催されたアップルのワールドワイド・デベロッパーズ・カンファレンス(WWDC)で発表された内容は、新しい開発者向けのツールに関するものばかりであった。あとはMac OS X と iOSの新機能、パソコン、そして携帯用オペレーティングシステムだ。しかし一歩下がって眺めてみると、何かもっと大きな形が見えてくる。スマートフォンとタブレットの先に、アップルが思い描いている未来のヒントだ。

極めて重大なことなので、覚悟を決めたほうがいいかもしれない。それでは、アップルの新しい iライフスタイル計画について考えてみよう。

WWDC で集めた手がかり

すでにアップルのエコシステムにどっぷり浸かっている人もいることだろう。しかし iPhone、iPad、Mac は手始めに過ぎなかった。アップルはより大きく、より浸透するプラットフォームの礎を築くことを目指しているようだ。それは iOS とMac OS X の橋渡しをし、そこから実質的にユーザーの生活のあらゆる側面を包含するものへと広がっていくだろう。

すべての変化は開発者と共に始まる。長年にわたる制限を一掃し、アップルはおびただしい数のソフトウェア変更を提示した。まだ制限は残っているものの、厳格にコントロールされてきたオペレーティングソフトウェアはかなり開放されることになるだろう。iOS の開発者には、4000もの新しい API と、長い間待ち望まれてきたアクセス権が雨あられと降り注いだ。例えば、アプリケーションがお互いに通信できるようになり、限定され孤立した「サンドボックス」から外に飛び出せるようになった。昨年 iPhone 5S で導入された、TouchID 指紋スキャナーによる本人確認機能も利用することが可能となる。

こうした変化によってアプリケーションはより便利なものになり、アプリケーションベースの新たなイノベーションへの可能性も広がるだろう。アップルの新しいプログラミング言語、Swift の登場はこの傾向にさらに拍車をかけると思われる。この言語は、iOS アプリケーションの構築が速く簡単なものになるように設計されているのだ。

関連記事:アップルは新しいプログラミング言語「Swift」が開発者に気に入られることを望んでいるが、そう上手くいくだろうか?

Apple-home
一方、アップルはまったく新しいフィールドにも足を踏みいれている。同社はこの動向に余り注目を集めないようにしているので、見落としてしまった人も多いかもしれない。

「瞬きしたら見逃す」くらいの短いプレゼンテーションで、アップルは HomeKit を(ほんの一瞬)ちらりと紹介した。iPhone を使ったスマートホームへの進出である。その場ではあまり詳細を教えてくれず、その HomeKit フレームワークに関する開発ドキュメントもどうやら未完成のようだ。しかしアイデアとしては、自動化された照明、空調、セキュリティシステムに共通のプロトコルを提供し、「サードパーティアプリ(例えばiPhoneのアプリ)」から直接コントロールできるようにすることで、現在のスマートホームにまつわる混乱状態を打開しようというものだ。

同様に HealthKit の目的は、ヘルストラッカーとフィットネスアプリが収集した山のようなデータのセントラル・リポジトリを整備することだ。これは患者と医者の両方にとって必要なことだろう。

両者の導入における大きなポイントは「一体化」だ。これがアップルの計画のキーワードとなる。

アップルの取り組み

スマートホーム分野には大きなチャンスがある。一番の理由はまだ誰も、一般の人々がちゃんと使えるようなものを作り上げたことがないからだ。この点において、スマートホーム産業は破たんしていると言える。

今のところ、家をネットワークに接続するプロセスには複雑な決断がたくさんありすぎて、一筋縄ではいかない。自分でやるべきか、それともComcast にやってもらったほうが良いのか?まずは規格を調べなければならず(Zigbeeとは? Z-waveは? Insteonはどうか?)、他にも検討しなければならない事がある(ハブを使うか使わないか、Wi-Fi か Ethernet か、一つのメーカーに丸投げするか、それとも製品を組み合わせるか)。さらにやっかいなのは、これらのアプローチの大半は互換性がないということだ。つまり、一度進むべき道を決めたとしても、途中で気が変わったらすべて最初からやり直さなければならないのである。

アップル混とんとした新規市場に踏みこみ、合理化された商品を提供して秩序を生み出すことに長けている。そして多くの場合においてヒット製品を生み出しているのだ。アップルは、スマートホームでも必ずこれを成し遂げるだろう。開発者向け文書にもそれをほのめかす記載がある。

Home Kitは、スマートホームをコントロールするアプリの市場を作り出すだろう。ホームオートメーション用アクセサリのメーカー達に独自のアプリを提供してもらう必要はない。各メーカー同士が直接連携しなくても、複数のメーカーが製作したアクセサリをまとめて統合できるようになるのだ。

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同様に、アップルはヘルスアプリやフィットネスアプリが収集する断片的な情報も一つにまとめて有効活用したいと考えている。ステップトラッカー、心拍数モニター等から集まってくるデータは大量な上に、バラバラだからだ。

アップルのビジョンによると、iPhoneはこうした計測データをうまく調和させ、可能な限りギャップを埋められるという。だが実際に全データの中から医療従事者の役に立つ情報を引き出すというのは、非常にやっかいな課題だろう。そのためアップルは、専門技術を持ったメイヨー・クリニックや他の医療センターと提携を行ったのだ。

ヘルス関連とスマートホームの構想をアップルが一つにまとめるというのはそれほど無茶な話ではない。家にあるデジタル式の体重計や血圧計といった健康機器のデータを HealthKit が集めることは容易に想像がつくだろう。それをちょっと飛躍させれば、自動照明や健康管理にも手が届きそうだ。

もう少し先の話をすると、アップルのシステムは私たちの行動を学習し、私たちが自分で気づくよりも先に必要とするものを予測できるようになるだろう。例えば、住人が緊張しているとシステムが認識すれば、照明を落ち着いた色に変えてくれる。就寝時間が近づくとデバイスの電源が自動的に切られる。食事の時間でもないのに冷蔵庫を開けたりすれば、すぐに腕に付けているデバイスに、ダイエット中であることを思い出させる通知が届けられるのだ。

apple-carplay

さらに未来のことを想像してみよう。アップルもおそらくすでにその未来を見据えているだろうから。数か月前、CarPlay の発表によって iPhone はついに車内に入り込んだ。iOS を自動車のダッシュボードに組み込むための最初の試みである。そして数か月後には、CEO のティム・クックは新しいウェアラブルデバイスを導入するつもりでいる。いずれ、すべてがシームレスにつながったアップル製品が他の会社の電子機器を排除し、私たちの生活に浸透していくことになるだろう。

関連記事:アップルのiWatchが10月に発表されるという噂

iデバイスで統一されたライフスタイルで、アップルが得るものとは

車、手首、ポケット、そしてデスク周りをアップルが統合して家と健康を管理するためには、ユーザーに関する情報を集めることが不可欠だ。それも恐ろしい量が必要になるだろう。それがアップルの最終目的なのだとすると、プライバシー保護団体などがピリピリすることになるのは間違いなさそうだ。

ここでiPhoneの指紋スキャナであるTouchIDが、プライバシー侵害の脅威を和らげるのに役立つかもしれない。これまでのところ、この生体認証に関する話題はほぼ、モバイルセキュリティや支払いに使用できるかどうかという点に集中していた(報道によれば PayPal はかなり前向きにこれを検討しているらしい)。

しかしTouchIDは、健康に関するデータの閲覧やホームコントロール、車のロック解除などを行う前に生体認証を要求することで、デジタルライフスタイルを守る役割も果たすことができるだろう(これはアップルがiWatchにスキャナを取り付ける有力な理由となりそうだ)。「健康データや自宅は自分の指紋によって守られるのだから、システムを信用してほしい」という消費者に向けたメッセージである。

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もちろん、これは一夜で成し遂げられるようなものではない。しかしアップルは、iデバイスで統一されたライフスタイルに向けた土台を着々と築き上げてきた。あとはそれを人々の元へと届け、アップルブランドを冠した生活こそがこれまでずっと望んできたものであると、皆に納得させるだけである。

Carplayの画像提供:アップル
その他の画像提供(いずれもFlickrより)
アップルストアのロゴ: Jon Rawlinson、室内の写真:Mackenzie Kosut、アップルのガジェット:Fauzan Alfi、iWatch : Philipp Zumtobel、動いているTim Cook:Blake Patterson

Adriana Lee
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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