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抗菌ガラスや、「巻き取れる」ガラスも紹介された

「ゴリラガラス」はなぜ傷に強い? コーニングに話を聞いた

2014年05月19日 20時28分更新

文● コジマ/ASCII.jp編集部

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ガラスの弱点を克服する
ゴリラガラスのメカニズムにせまる

こちらはサンプルの、曲がったゴリラガラス。LGの「G Flex」のように画面が曲面のスマホも出ているが、今後ますます増えていくかもしれない

 さて、ガラスというと、「割れやすい」というイメージを持つ人が多いだろう。しかし、コーニングジャパンの説明によれば、ガラス自体は傷がついてなければ、非常に強い素材なのだという。

 しかし、この「傷がつかなければ」というところが肝心だ。ガラスは曲がりにくく、引っ張られる力に弱い。そのため、一度表面に傷がつき、そこに力が加わると、傷付いたところに力が集中して、すぐに割れてしまうのだそうだ。

 たとえば、板ガムと板チョコを想像してほしい。ガムの表面にナイフで傷を付けて、左右の端を持って力を加えると、ガム自体がぐにょっと曲がり、すぐには折れないはずだ(もちろん、強く引っ張れば傷から裂けていくだろうが)。

 しかしガムよりも硬いはずのチョコは、その曲がりにくい硬さゆえに、同じことをすると、傷付けた部分からパキッと割れてしまう。あれと同じようなもの、と考えればわかりやすいだろうか。

ガラスの弱点を紹介するスライド。「傷がついて」、「引っ張られると」、ガラスは弱いという

 そこでコーニングは、ガラス最表面のナトリウムイオンやリチウムイオンを、よりイオン半径の大きいカリウムイオンに一部置き換えるということを考えた(関連記事)。カリウムイオンはより大きな体積を占有するので、表面はギュッと詰まったようになり、圧縮する力が生じる。これによって、引っ張られる力に強くなり、割れにくくなる……というわけだ。初代のゴリラガラスは、このアイデアでガラスの割れやすさを克服した。

「イオン交換」によって、傷が付いても割れにくくなる

 また、溶かしたガラスを雨どいのような装置に注ぎ、左右から溢れさせて、そのまま1枚のガラスに成形するという方法も確立した。これによって過度に研磨などをしなくても表面が平滑になるので、製造工程での傷が付きにくくなる。その結果、割れの原因になる傷が生じる可能性を減らせる。

溶けたガラスを垂らして、そのまま1枚にする。もちろん、ガラスの組成自体にも試行錯誤があったとのこと

 とはいえ、文字と写真だけではなかなかイメージが掴みにくいかもしれない。コーニング公式の動画では、映像でこのメカニズムが紹介されているので、わかりやすいだろう。

 現在では、初代ゴリラガラスやその後継である「ゴリラガラス 2」よりもさらに強度を高めた、「ゴリラガラス 3」が商品化されている。同社によれば、ゴリラガラス 3は、2よりも傷の付きにくさが3倍になり、傷が付きにくいことによって、ガラス自体の強度も40%ほど強くなっている。

 将来的にはゴリラガラスで100インチ程度の大きなパネルを制作することも検討しているという。さらに、現在も「より傷が付きにくく、より引っ張る力に強い」ガラスの研究は続けていく、とのことだ。

左上から順に、標準のガラス、強化ガラス、ゴリラガラス。どれも同じように傷つけてあり、傷の部分に圧力を加えると、標準のガラスはすぐに割れ、強化ガラスも力を入れると割れてしまう。しかしゴリラガラスは思いっきり押しても割れない(筆者の指が白くなっている)。叩いてもいいというので叩いたが、手が痛かった……

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