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オンラインの個人情報はもう「パーソナル」ではない?

2014年05月15日 16時48分更新

文● Matt Asay via ReadWrite

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Security

あなたのデータは一旦オンラインに送られた瞬間に、もはやあなたのものではなくなる。だが、有料のサービスでは自分のデータは自分のものであるはずではないのだろうか。

自分の個人情報は自分のものだ、と信じたい気持ちはよく分かる。だが実際には、電子メール、Fitbit、GPS端末、耕運機に至るまで、とにかくデータに執着する今の世界では、あなたのデータがクラウドにアップロードされた瞬間から、それらはもはやあなたの所有物ではなくなる。完全に他人の物になるのだ。

サービスを無料で利用している場合は、ユーザーの情報は他人の「商品(所有物)」であるというのは、考え方として納得できる。だが最近では、有料サービスでさえ「ユーザーの情報は他人の所有物」という傾向が見られる。サービスに対価を支払っている場合、ユーザーにはプライバシーが与えられるべきではないのだろうか?


自転車に乗ったデータまでもがマイニングの対象に

この事実を痛感させられたのは、自分がよく使うフィットネス・トラッキングアプリ「Strava」が、政府の都市計画を支援するためにユーザのデータを売却している、という記事を先週読んだときだ。「Strava Metro」と呼ばれるこのサービスは、サイクリスト達の道路の利用状況を把握するためにユーザーのデータを利用するようだ。最初の顧客となったのはオレゴン州で、ユーザー・データを利用するためStravaに年間2万ドルを支払っている。続いて現在ロンドン、グラスゴー、オーランド(フロリダ)、アルパイン・シャイア(ヴィクトリア州)、オーストラリアなどがこのサービスの利用を申し込んでいるという。

私は自分のStravaデータを秘密にしようと思ったことはないし、興味があれば誰でもその履歴を見ることが可能だ。ただ、自分の記録は自分のものだと思っていた。

どうやら考えが甘かったようだ。

Stravaが私のデータを利用するだけなら問題ない。というのも、私は無料サービスの会員だからだ。プレミアム会員ではなく、Stravaに一銭も払っていないのだから、私のデータが「商品」として扱われても仕方がないのだろう。

しかしStravaは、プレミアム・メンバーのデータもStrava Metroで利用しているのだ。同社によれば、「提供されるデータからはユーザに紐づく個人情報が取り除かれている」らしく、「Metroから提供されるデータは匿名化され直線的な地図としてまとめられているため、サイクリング活動はコミュニティー内の特定ユーザを特定することはできない」と強調している。ただ、問題はそのデータはそもそも誰に所有権があるのか、ということなのだ。

現状では、答えは明らかにStravaだ。ユーザーがペダルを漕ぎ、Stravaがその情報を売りさばく。


あなたの農場に関するデータも、あなたのものではない

この問題は、単に消費者向けのサービスだけに関係するものだと思うだろうか。もしそうなら、考えを改める必要がある。

米国の農家はこれまで10年以上にわたり、自身の農場に関するあらゆるデータを採取してきた。最近の農業機材は取得したデータをサーバーにアップロードし、農家の人々や機材メーカーはそのデータを利用することが可能だ。このシナリオでは、データの所有者は農家自身であり、彼らには機材メーカーの提供するクラウドを利用しないというオプションが用意されている。

しかし最近では状況が異なるようだ。化学・農業バイオテクノロジーの巨大多国籍企業モンサントは、ほぼ10億ドルでデータ分析会社を買収し、農業データ分析サービスを開始した。これを受けて農場経営者は、自分たちのデータの所有権に対する心配をますます強めている。モンサントが個々の農場で採取するデータを増やしているために、それが競合する農場に売られ、商品市場での価格差別化に悪用されるのではとの懸念が広がっているのだ。

理論上、農家は自分のデータを自身で保護できるはずである。だが実際にはそれは不可能だ。なぜなら彼らのデータは作物の売買情報と同様に公開されており、これに参加しなければ、モンサントのデータサービスを利用している他の競合農家に遅れを取ってしまうからだ。


プライバシーを買うことはできるのか

それでも農家には、自身のデータの使い道について多少の柔軟性が残されている。しかし子供の場合はどうだろう?最近では学校内の子供達からもデータが集められており、それが彼らの学歴に影響を与えるという可能性も考えられる。この点に関してグーグルは、広告目的による学生の電子メールのスキャンを廃止すると発表したが、これも訴訟に応じる形でようやく実現したことである。

政府、学校、ソフトウェア企業の幹部は、このような学校内におけるデータの安全性を安易に主張するが、データのプライバシーと同様にセキュリティも決して保証できたものではない。ハッカー達は再三に渡ってクレジットカードその他の情報を盗み取っている。学校に関するデータが特別安全というわけではないのだ。

とにかく、試練だと思って乗り越えるしかない。すくなくとも、アメリカ合衆国教育省初のプライバシー責任者カトリーヌ・スタイルズのメッセージはそう伝えている。「データを完全に安全にする唯一の方法は、それを使用せず、保存しないことです。それ以外にありません」

しかし、年齢が低い子供に限っては、成人になるまでデータが商品化されないという選択肢があるべきだろう。またお金を支払ってサービスに参加する場合には、自分の個人情報を自分のものにしておきたいというのが当然のリクエストだと思う。もし私がサービスの対価を支払っていれば、私のデータが「商品」として扱われる必要はないはずだ。

きちんと対価を支払ってさえいれば、自分のデータは自分のものであるべきなのだ。


画像提供: Intel Free Press(Flickrより), CC 2.0


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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