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なぜ働きアリの7割がサボるのか

2014年05月15日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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 せっかちな人のために答えを書くと、大雨のような自然災害で3割が死んでしまっても、残りの7割のうち3割が働きはじめることで、群れを維持できるからだ。アリさんのリスク管理術と言える。

 これは「栽培するアリ」で知られるハキリアリの話で、多摩動物公園の飼育員に教えてもらった。働きアリの寿命は2~3ヵ月なので、大半は出番を迎えずに死んでしまう。非合理的にも思えるが、自然が導いた最適解が「7:3」の法則なのだ。昆虫の理論的な行動はビジネスのヒントになることも多い。

 昆虫と違い、人間は感情のゆれで動く生き物だ。理論的に間違った判断をしてしまうことも多い。システム会社が提案する「経営の効率化」は典型的な例だろう。

 いわく、経費清算や人事管理などインターフェースを使いやすくしたり、自動化すれば、社員1人1人の労働生産性が上がる。1つ1つの向上が1%程度と小さなものでも、100~200人と大規模な企業になればチリツモ式に効果が拡大し、「企業の競争力」につながる。これがミニマルな「改善」だ、というのだ。

 感情的にはそういうものかと納得してしまうが、実際はそうではない。

 経営者にとって必要なのは、システムの変更によって事業プロセスを改良し、オペレーションを最適化して、不要なコストをおさえること。単純に言えば人を切っても平気な仕組みを作ることだ。たとえ業務の1%が効率化されたとしても、社員は削れない。せいぜい1%ずつサボる時間が増えるだけだ。

 たとえばメーカーの生産ラインがあったとする。プロセスの50%を自動化するシステムを導入し、従業員をカットし、コストをおさえ、価格を下げて市場競争力につなげるのが、本来の意味での「改善」だ。

 だが、競争力の意味を勘違いし、口車に乗せられてしまう経営者はいるものだ。「アスキークラウド2014年6月号」では、情報システム部門とクラウドを舞台に「本当に経営者が必要だったもの」を追求している。

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