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明日の成長と発展のヒントをつかめ

2014年01月28日 07時00分更新

伊藤達哉(Tatsuya Ito)/アスキークラウド編集部

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 1月23日、アスキークラウドイノベーションコンファレンス『成長、発展、再生――事業革新の戦略と視点、そしてクラウド』~Do Change the game with Cloud~が青山TEPIAホールで開催された。4人の登壇者はクラウドとともに企業が成長するために必要な考え方やノウハウを提示した。


オープニングセッション「クラウドで変革・成長する企業は何が違うか」

 最初の登壇者はアスキークラウド編集長を務める中野克平。TEDの動画「社会運動はどうやって起こすか」とともにリーダーになることよりも運動に参加して盛り上げる2人目の重要さを解説した。ヒューレッド・パッカードやマイクロソフト、アップル、グーグル、ウィキペディアといった企業も二人組で事業を始めている。加えてクラウド企業のトップは計算機科学を学んでおり、成功の法則を知っていたという。

 成功の法則とは、アスキークラウド2014年3月号(1月24日発売)で紹介している「ムーアの法則」「ギルダーの法則」「アムダールの法則」「グスタフソンの法則」だ。

KADOKAWA アスキークラウド編集長 中野克平。

 日本企業は、社会運動の起こし方やムーアの法則などをほとんど知らない。しかし、日本企業の中にも実は成功の法則を理解している企業がある。タイムズ、ラクスル、ごちクルといった事例をアスキークラウド3月号の特集取材メモを基に紹介した。最後は「成功の法則を理解して、仲間を作り会社や組織を変えて欲しい」と述べた。


クラウドとデバイスで革新!
新たな発想と技術でビジネスを成長させた戦略と戦術!

 日本交通からは総務財務部担当執行役員 野口勝己氏が、配車アプリ「日本交通タクシー配車」と「全国タクシー配車」の立案から開発、サービス開始までの道筋を語った。

日本交通 総務財務部担当執行役員 野口勝己氏。

 配車アプリの開発は、スマホが右肩上がりで普及していた2010年6月から始まったという。開発要員はたった1人でiOSアプリの開発経験もなかった。マニュアル購入からスタートしたアプリ開発は、4カ月でリリース。日本初のタクシー配車アプリは現在、全配車数の20%を占めるようになった。野口氏は右肩上がりの成果は「アプリだけが要因ではない」と言う。日本交通は、リピーター客を増やす策として乗務員の接客をマニュアル化し、覆面チェックのもと強化している。アプリの便利さと乗務員の接客向上が現在の成果をもたらしていると分析する。

 配車アプリは数々の賞を受賞し、メディアにも取り上げられ、そのたびにダウンロード数を増やした。当初、利用者の声は「便利」や「使える」といったものが多かったが、次第に「全国で使いたい」という要望が増えてきた。利用者の期待に応えて全国でも使えるアプリの開発に着手。全国のタクシー会社が参加するために、各タクシー会社が負担する費用は安く抑え配車数を増やすことで利用者の利便性を高めた。
 開発のポイントはマイクロソフトのクラウド「Windows Azure」を導入したこと。開発時点で利用者数とどれくらいのタクシー会社が参加するのか分からず、サービスの規模感がつかめなかったからだ。クラウドであれば初期投資を抑えて、成長に合わせてスケールアップできる。
 2013年11月には、47都道府県全てに対応。ダウンロード数も旧アプリと合わせて100万件を突破した。今後は、オリンピックに向けての多言語化や利用者別にパーソナライズしてサービスの充実を図る。


「競争激化!生き残りをかけ、コスト削減と差別化サービスをIBMクラウドで実現!」あなたの会社の“明日は、どっちだ!”

 エフ・アイ・ティー・パシフィック ICT企画室室長 安藤正信氏がナビゲーターを務め、C-UNIT SQUARE 代表取締役社長 上田健志氏がIBMのクラウドサービス「SoftLayer」を利用したマンション管理システム「SS Maintenance」を紹介。

エフ・アイ・ティー・パシフィック ICT企画室室長 安藤正信氏。
C-UNIT SQUARE 代表取締役社長 上田健志氏。

 マンションの管理業務は、管理会社が清掃業者に委託する仕組みになっている。しかし、管理会社のスタッフ数が少なかったり、清掃業者の管理が紙にチェックをするだけだったりと万全の管理体制とは言えない状況だった。
 マンションの管理状況を抜き打ち調査したところ、10棟のうち清掃基準を満たしていたマンションはたった2棟しかなかったという。残りの8棟は基準を満たしていないだけでなく、上階につれて作業は雑になり、全く清掃していない階もあった。
 こうした問題を解決するために「SS Maintenance」が開発された。SS Maintenanceはスマートデバイスを使った業務報告システムだ。デバイス内蔵のカメラとGPSを使いクラウド上に清掃報告をアップし、管理会社が確認して作業内容を指導できる。作業報告は一問一答形式を採用しており、報告内容が統一化した。

 SS Maintenanceの導入によって、清掃現場のクオリティーや効率が大幅に改善。管理業者と清掃業者間のコミュニケーションも強化され顧客サービスの向上につながっていると上田氏は効果を語った。今後は、SS Maintenanceを海外に進出させるだけでなく、建設や介護といった業界に応用させる考えもある。


オーディエンスから見たビジネスのヒント

 電通 電通総研 研究主席兼メディアイノベーション研究部長 奥律哉氏は、世代ごとのメディアリテラシーの変遷とともにユーザー動向の変化を解説した。

電通 電通総研 研究主席兼メディアイノベーション研究部長 奥律哉氏。

 総務省の2013年の調査によると、20代男性のスマホ普及率は80%、20代女性になると90%近くまで達している。一方で、携帯電話の普及率は20代男性で25%、20代女性は30%までと減少傾向が目立つ。スマホと携帯電話の普及率を足すと100%を越えるのはスマホと携帯電話の2台持ちを意味する。
 シニア層では、パソコンの所有率が上がっておりインターネットの人口も増えている。金銭的余裕と時間が多く使えるシニア層には、ビジネス面で大きなポテンシャルを秘めていると指摘。

 1976年生まれを「76世代」と名付け、10年ごとに区切って各世代が接したメディアやITについて、電通総研が分析した「メディア世代論」を紹介。
 66世代はテレビ好きな世代で時間があればテレビを見る。96世代は動画が好きで楽しい動画を友だちと一緒に見るのを好む。76世代は大学のレポートや卒論をパソコンで作っていたが、86世代は文字を打ち込むデバイスは携帯電話に取って代わったという。
「各世代が中学から高校といった感情豊かな時期に、どんなメディアで育ったかが世代のリテラシーを引っ張っています」(奥氏)。

 続けてF1層(20~34歳の女性)の1998年と2013年の勤務形態の変化を解説。1998年には35%だった有職者の比率が、2013年には53%に上昇。1998年に34%を占めていた専業主婦は、2013年には11%まで減っている。
「女性のテレビ視聴率が取れなくなったのは、コンテンツのせいでもインターネットのせいでもない。技術の進化もあるがオーディエンスの変化が大きい」(奥氏)。

 今後のオーディエンスは「二極化」が激しくなると奥氏は分析する。テレビは万人のメディアだが、インターネットはユーザーの好みや濃さが顕著になり「真ん中には人はいません。ピンポイントを狙うしかない。この現象は数年続くと思います」(奥氏)。


 アスキークラウド編集長はクラウド企業が知っている成長の法則を紹介し、日本交通やC-UNIT SQUARE、エフ・アイ・ティー・パシフィックがクラウドで構築したアプリやシステムの成功体験を語った。電通は、時代や社会環境によるオーディエンスの変化を認識する必要性を説いた。事業内容は各者、異なるものの聞き応えのある講演を披露した。


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