9月に買収計画を発表したNokiaとMicrosoftが、着実に合体に向けて歩みを進めている。11月半ばにNokiaが開催した臨時の株主総会で株主による承認を得た後、12月に入り、米国と欧州の両当局からゴーサインが降りた。
取引が完了するのは2014年第1四半期と見込まれており、Microsoftがスマートフォンメーカーとなる日はもうすぐだ。時を同じくしてNokiaの本拠地フィンランドでは、元Nokiaチームが立ち上げたベンチャーであるJollaが、初代スマートフォンのローンチを行なった。
来年早々には
スマートフォンメーカーになるMicrosoft
9月に発表されたMicrosoftによるNokiaのデバイス部門買収は、スマートフォンとフィーチャーフォンを含むNokiaのデバイス事業を37億9000万ユーロで取得するもの。Microsoftはこれに合わせて、Nokiaの特許と地図サービスを10年間ライセンスするのに16億5000万ユーロを費やすため、金額は合計54億4000万ユーロとなる。
デバイス事業に従事していたNokiaの社員約3万2000人もMicrosoftに移る。これには、Nokiaの元CEO、Stephen Elop氏も含まれる。Microsoftから2010年9月にCEOとしてNokiaにやってきたElop氏は、デバイスとサービス部門のバイスプレジデントとしてMicrosoftに戻り、CEOに直接報告する。さらには、そのMicrosoft CEOのSteve Ballmer氏が2014年引退を明らかにしており、Elop氏はCEOの有力候補の1人と目されている(この流れをみると、Elop氏は最初からMicrosoftに買収されるというシナリオを持ってNokiaに赴いたかのようにみえてしまう)。
12月4日に買収を承認した欧州委員会(EC)は、両社の事業にオーバーラップする部分がほとんどないことを判断の根拠としている。そのほか、OS、アプリケーションなどの面で考えられる懸念について以下のように判断している。
・Microsoftが他のメーカーにOSライセンスを制限することは考えにくい。同社のモバイルOSのシェアは限定的であり、今後もサードパーティーのデバイスメーカーにOSをライセンスしてコンシューマーの受け入れを広めて、アプリを増やす必要がある。
・OfficeやSkypeなどのMicrosoftのモバイルアプリの供給を制限することも考えにくい。OfficeはサードパーティのタブレットOS(iOSを指している)向けに提供しておらず、他のタブレットメーカーに制限が加わる可能性は考えにくい(だが、ECはこの戦略にていて「アプリ開発者とユーザーの面ではマイナスでは」とも分析している。なおMicrosoftはiPad向けのOfficeを2014年にリリースすると述べている)。スマートフォンではOfficeアプリのシェアは限定的で他にも競合するアプリがある。モバイルにおけるWindowsの低いシェアを考慮すると、サードパーティのモバイルOSとの相互運用性を制限することは、最終的にSkypeの競合優位性を損なうことになるだろう。
買収によりMicrosoftは端末メーカーに頼らずともWindows Phoneスマートフォンを作成できるようになり、Windows Phoneの市場投入が容易になることは確実だろう。日本市場でも変化が起こるかもしれない。
この連載の記事
-
第342回
スマホ
AR/VRの長すぎる黎明期 「Apple Vision Pro」登場から6ヵ月、2024年Q1は市場はマイナス成長 -
第341回
スマホ
世界で広がる学校でスマホを禁止する動き スマホを使わない時間を子供が持つことに意味がある? -
第340回
スマホ
対米関係悪化後も米国のトップ大学や研究機関に支援を続けるファーウェイの巧みな戦略 -
第339回
スマホ
ビールのハイネケンが“退屈”な折りたたみケータイを提供 Z世代のレトロブームでケータイが人気になる!? -
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? - この連載の一覧へ