またもや新スマホベンダーが登場
元HTC幹部のKazam
このように混戦し、厳しい生存競争にあるAndroidスマホ市場だが、11月にイギリスのKazamという新規ベンダーの参入が小さいながら見出しを飾った。KazamはMichael Coombes氏とJames Atkins氏という元HTC英国の幹部2人が6月に立ち上げたベンチャーだ(一時期HTCから人材流出が止まらない時期があったが、このときに流出した幹部だ)。当初からリーズナブルな価格、さまざまな嗜好に合わせた製品群を約束しており、11月初めにお披露目となった7機種はそれを反映したものとなった。
Kazamが発表したのはハイエンドの「Thunder」2機種、エントリーからミッドレンジの「Trooper」5機種の計7機種だ。Thunderは1.3GHz動作のクアッドコアプロセッサーを、Trooperはデュアルコアプロセッサーを搭載し、それぞれ画面サイズは異なる。
たとえばハイエンドの「Thunder Q5」は5型画面を搭載、スペックはまだ公開されていない。その下位モデルとなる「Thunder Q4.5」は4.5型、解像度は480×854ドットとやや低めで、メモリーも1GB。このほかデュアルSIMカード、取り外し可能なバッテリー、SDカードスロットなどを特徴とする。そしてAndroidはデフォルトそのままだ(Android 4.2)。HTCといえば「HTC Sense」が有名だが、この部分の開発に投資する必要性を感じなかったというコメントが報じられている。
7機種とも年末商戦向けに登場するようだが、提供地域は当面欧州市場のみのようだ。
Kazamは、Nokia/Meegoから生まれたJollaと生い立ちが似ているといえるが(関連記事)、NokiaのMicrosoft買収により携帯電話産業が失われた欧州で新しい動きが生まれているのは興味深い。欧州ではKazam、Jollaのほか、Firefox OSベースのスマートフォンを製造するGeeksphoneもあり、OSでは「Ubuntu touch」のCanonicalもある。このような新規参入がスマートフォン市場を面白くしてくれると期待したいが、コモディティー化が進む中で、巨大な広告予算を持つSamsungとどうやって対抗するのかが気になるところだ。
スマホユーザーは違いが少なくなってきた
今のスマホ市場に飽きが出てきた!?
ハードウェア側では、"ハードウェア界のAndroidを"をうたうMotorolaの「Project Ara」も最近大きな話題だ(関連記事)。スケルトン(「endoskelton(endo)」)の上にレゴブロックのように標準化されたパーツを組み合わせて好みの一台を作れるというのがProject Araの構想だが、CPUと画面解像度の組み合わせが適切ではないと使いにくい端末が出来るし、パーツの配置だってレゴのように載せていってうまく動くのか? と単純に疑問も沸く。今後の発展に期待したい。
Project Ara、それにMotorolaがプロジェクトを進めるにあたって組んだPhonebloksの経緯を読みながら、ユーザーは必ずしもいまの既成スマートフォンに満足していない、という見方が業界の中にあると感じた。そういえば、調達目標があまりに野心的で目標に到達しなかったCanonicalの「Ubuntu Edge」(関連記事)も、ユーザーが欲しいと思うスペックを持つ端末に投資するという仕組みだった。
AppleとSamsungの2極体制にあって、このようなハードウェア側の試みが次々と生まれている。これは、スマートフォン市場はまだまだ大きく変わるということか、それともスマートフォンを作ることがさほど難しくなくなったということだろうか。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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