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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第89回

独首相など政治家も愛用 根強い人気のBlackBerryの運命は……

2013年10月30日 15時00分更新

文● 末岡洋子

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そもそもBlackBerryの再生は可能なのか?

 業界の視点からみた最大の課題は、これまで落ち目の携帯電話メーカーの買収がことごとくうまくいっていないという先例だ。たとえばPalmを買収したHP。2010年の買収から2年もしないうちにHPはwebOS事業から撤退した。

 さらにHPは現在、Palm/webOSの特許売却に向けて動いているようだ。また、GoogleによるMotorola Mobility買収もそうだろう。Motorola事業が好調になるとSamsungなど他のAndroidベンダーとの関係にキズが入ると見る向きもあるが、その心配は無さそうだ――第3四半期のMotorola事業の赤字は拡大し、売上は33%も減少している。

 モバイルを超えた大きなトレンドでみると、PC市場は縮小が続いている。PCベンダーのLenovoは、タブレット、スマートフォン、TV、さらにはクラウドなどのオンラインサービスに拡大する戦略を2012年11月末の自社イベントで明かしている。モバイルでの解がBlackBerryなのかはわからないが、今後さまざまな手を打ってくるだろう。

 さて、起業のほかにもBlackBerryに関心を示している人がいる。共同創業者のMike Lazaridis氏とDony Fregin氏だ。現在でもそれぞれ8%のBlackBerry株式を保有しているという。買収関連で一番新しい報道では、元AppleのCEO、John Sculley氏だ。

 かの有名な「このまま一生、砂糖水を売り続けるのか、それとも世界を変えたいか?」というSteve Jobsの口説き文句でAppleに招き入れられ、そして逆に追い出した人物だ。Globe & Mailというカナダの全国紙が近い筋からの情報として報じている。取材に応じたSculley氏は憶測の正否は認めなかったが、BlackBerryのファンだと述べ、BlackBerryには多くの価値があるが、誰が買収することになっても再び軌道に乗せることは難しいだろうという見解を示している。

BlackBerryの地元であるカナダの新聞ではあのスカリー氏の名前が

 なお、BlackBerryが他社からの買収提案を検討できる資産査定期限は11月4日となっている。

iOSとAndroid向けのBBMアプリがやっと登場
24時間で1000万以上が登録

 最後に久しぶりの好ニュース。BlackBerryが10月21日、iOSとAndroid向けに公開したメッセージングアプリ「BlackBerry Messenger(BBM)」が好調だ。最初の24時間で1000万人以上が登録したとのこと。このアプリはダウンロード後にメールアドレスなどを登録し、BlackBerryから利用開始できることを連絡されるのを待つ必要がある。BlackBerryは1時間に50万ユーザーのペースで処理を進めているということだが、うれしい悲鳴となったようだ。

 BBMは元祖メッセージングアプリで、BlackBerryのみの機能として提供されてきた。若者に人気で安価なBlackBerryを持つ若者はこの機能が目当てと言ってもいい。他のプラットフォームでの展開は早期からアイデアがあったが、経営陣がなかなかゴーサインを出さなかったようだ。その間にも専業のメッセージングアプリ企業が乱立しているが、世界的に見ると最大手はWhatsAppである。BBMは、LINEや中国のWeChatなどとその後を追うことになった。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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