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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第102回

端末8割減でも生き残りを図るBlackBerry、モノのインターネットに活路?

2014年05月28日 15時00分更新

文● 末岡洋子

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 日本ではすっかり存在感がなくなってしまったBlackBerryだが、2013年秋に迎え入れた会長のJohn Chen氏のもとで、継続して事業見直しが進んでいる。折しもスマートフォンの急速なコモディティー化の波にあって業界は大きく動いているところだ。エンタープライズとモノのインターネットに照準を合わせる同社に、奇跡のカムバックはあるのだろうか?

以前は非常にBlackBerryの人気が高かったインドネシア向けに”Jakarta Edition”というそのまんまの名称で登場した「BlackBerry Z3」。BlackBerry 10搭載のフルタッチ型エントリーモデル

以前は大きなシェアを持っていたインドネシア向け端末
「BlackBerry Z3」をリリース

 5月13日、BlackBerryはいくつかの発表を行なっている。まずは端末から。久しぶりの新端末として、インドネシアで「BlackBerry Z3」を発表した。”Jakarta Edition”と呼ばれる(同社の中では)エントリー向けの端末で、5型のタッチ画面(物理QWERTYキーボードはなし)と、1.2GHz動作のデュアルコアプロセッサーを搭載、メモリーは1.5GB。カメラは背面と全面にそれぞれ5メガピクセルと1.1メガピクセルのカメラを持つ。OSは「BlackBerry OS 10.2.1」。価格は190ドルである。

 Z3はスペックや市場以外に、BlackBerryにとってもう1つの重要な意味を持つ。この端末では、製造と流通はFoxconnが行なうのだ。Foxconnとの提携により、財務上の課題だった端末の在庫問題が大きく解消されるほか、開発工期の短縮化も図れる見通しだ。

 インドネシアでBlackBerryの人気は高く、同社にとっては重要な市場だ。満を持してといいたいところだろうが、インドネシアの消費者がZ3を求めて行列を作るということはなかった様子だ。インドネシアにも他国同様にAndroidブームは押し寄せており、BlackBerryを使う最大の理由だった「BlackBerry Messenger(BBM)」以外のメッセンジャーアプリの人気も広がっている。インドネシアにおけるBlackBerryのシェアは、2013年第1四半期には25%だったのが、2014年第1四半期には4%にまで落ち込んでいるという。

 なお、BlackBerryによると、Foxconnとの提携は現時点ではローエンドを対象としており、欧米など成長国向けの端末では継続して自社でハードウェアとソフトウェアの開発を行なっていくとのことだ。

スマホの出荷台数は1年でなんと8割の減少

 ここでBlackBerryの財務状況を見てみよう。3月初めに発表した最新の四半期(同社会計年度2014年第1四半期にあたる2013年12月ー2014年2月)の決算は不安が残る内容となっている。売上高は前年同期比64%減の9億7600万ドルで、4億2300万ドルもの損失を計上している。同期のスマートフォン出荷台数は130万台。これは前年同期の600万台と比べると8割近くも縮小したことになる。

 確かに一般コンシューマー市場だけをみると同社の存在感はなくなっている。だが法人市場では必ずしもそうではない。つい先日、NSA(米国家安全保障局)を引退した職員が、オバマ大統領向けにカスタマイズした特製BlackBerryの話題についてCNNに語っているが、オバマ大統領を筆頭に、セキュリティーや規則遵守を重視する政府機関や企業の中でBlackBerryを使っているところはまだまだ多い。法人向け市場だけに限定すると、BlackBerryのシェアは2割を超えるともいわれている。

 それでも、先にGoogleがBYOD技術のベンチャー企業であるDivideを買収したように、AndroidやiOSは企業向け機能を強化している。iPhoneに乗り換える米移民・関税執行局などの事例も出てきており、安泰とはいえない。オバマ大統領のホワイトハウスですら、Androidを試すべくSamsungやLG製の端末を検証していると報じられている。

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