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92%の確率で復旧させる秘密の部屋は社長も入室厳禁!

故障HDDから救出!データ復旧サービスセンターに潜入

2013年09月24日 11時00分更新

文● 二瓶 朗 撮影●篠原孝志(パシャ)

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見積もり無料はユーザー満足度最優先の結果

 次に、データ復旧サービスの流れを順を追って解説していこう。

(1)問い合わせと申し込み
 データ復旧したいストレージを宅配便で送付する。送付の際は専用のケースで引き取りすることも可能だ(送料は有料)。また、市ヶ谷のロジテックINAソリューションズの営業所もしくはデータ復旧技術センターに直接持ち込むことも可能なのだとか。

(2)調査結果と見積りの提示
 データ復旧技術センターの技術スタッフが当該ストレージを調査し、可否の判定を行なう。復旧可能なデータがあればそれをリスト化して、依頼者に提示し、このとき同時にデータ復旧時の見積価格が提示される。
 データの破損度合いによって価格は4段階に変化する。例としては、論理的障害によって発生したデータならおよそ4.6~9.5万円、物理的障害によって発生したデータなら9.5~14万円となる。なお、提示された復旧可能リスト、見積り価格を見て、データ復旧をキャンセルすることも可能だ。この時点でキャンセルしても料金は発生しない

(3)復旧作業
 正式発注を受け、データ復旧技術センターの技術スタッフたちがデータの復旧を実行する。ちなみに、調査段階でリスト化できたデータは、その時点でほぼ復旧成功と同義なのだという。ただ、復旧する必要のないデータに依頼者が料金を支払うのでは割に合わないだろうと、ユーザーの満足度を優先的に考えた結果、このような作業の流れになっている。

(4)データ復旧と納品
 データ復旧が完了したら、そのデータはロジテックのUSB外付けHDDに移行して納品される。そのため、納品後はすぐにそのデータを利用できるという利点もある。なお、納品する外付けHDDの料金は発生しない。なんと太っ腹!

(5)データの一時保管
 復旧されたデータは、データ復旧技術センターで一時的に保管される。納品直後にさらなる問題が発生した場合にもそこからデータを再度受け取れる仕組みになっているのだ。

データ復旧サービスの流れ

作業期間について
 (1)→(2)の作業に1~5営業日、(3)→(5)の作業に1~2営業日が必要とのこと。トータルすると、1週間ほどで一連のデータ復旧作業が完了することとなる。

長期休暇明け、オフィスフロアのNASに要注意!?

 今度は、依頼の概要について伺った。データ復旧技術センター長の仁田氏によれば、「依頼のない日はない」という。そして「依頼は休暇明けに多いです」という話も聞けた。その理由は、休み中のオフィスフロアの“高温化”にあるという。

 いつもは空調の効いているオフィスだが、休み中に空調が止まることによって、フロアに置いてあるNASのような部署内サーバーの冷却が不十分になってしまうのだ。

オフィスフロアの某編集部で絶賛稼働中のNAS(写真中央)。温度以前に色々と問題があるような……

 空調完備のサーバールームならいざしらず、普通のオフィスフロアに置かれているストレージは温度上昇でダメージを受けやすい。ちなみに、室温が10度上がるとHDDの寿命はおよそ半分にまで落ち込むと言われる。結果、休暇明けに出社してみれば、HDDがお亡くなりに……ということが多くなるそうだ。

技術スタッフの今井隆氏

 また、数週間~数ヵ月間稼動させていたパソコンやサーバーを休暇に合わせてシャットダウンしたところ、システムが起動しなくなることもままあるという。これは、HDDに不具合があるにもかかわらず“メモリー上で動いている”などの理由で一見すると順調に動いているように見えてしまうことが原因だ。

 一般ユーザーの場合、故障したHDDから家族の写真を取り戻したいという依頼も少なくないが、ケアレスミスによって消去してしまったデータの復旧依頼が多いという。たとえば個人向けビデオカメラ。メモリーカードのデータを消去するつもりで、内蔵HDDのデータを“うっかり”消してしまうというケースが跡を絶たないという。

 災害によるストレージ故障の被害も少なくない。たとえば火災。PCやサーバーが燃えても、HDDの内部データは意外にも無事、ということも少なくないのだそう。2011年の東日本大震災後は、水没したり汚損したりしたHDDの復旧依頼が増えたという。

 ただ、「最近の製品ならば、交換する電子部品・パーツはセンターに豊富にある」のだが、あまりに古い製品の場合、交換パーツが入手できなかったり、完全にHDDが内部で固着して対応できないことがあるそうだ。

 それでも日頃から多様なルートで旧製品を入手し、他メーカー含めてパーツは豊富に揃えているとのことなので、「10年選手のHDDが……」という際もまずは依頼してみることをオススメする。

HDDを開けるのは最終手段!?
「プラッタが数ミクロンでもズレたら一巻の終わり」

技術スタッフの唐澤一樹氏。HDDの分解実演をしていただいた

 続いて復旧作業について、実際の作業を再現しつつ解説してもらった。なお前述の通り、作業ルームそのものについては、取材班の入室は丁重に断られたことをお伝えしておこう。

 「軽度の論理的な障害の場合、市販されている復旧ソフトでデータを救出できることもあります」という。その一方で物理的障害の場合は、復旧ソフトを動かすことで逆に被害が悪化することも少なくないので、素人判断は危険だとも仰っていた。

 重要なデータをサルベージしたいなら、なるべく早くデータ復旧技術センターに相談することをオススメしたい。

 HDDなどが壊れた原因を特定するのはなかなか難しいものの、「どこが壊れているか、それによって何が起きているかはわかる」という。

 故障の予知も同様で、HDDの「S.M.A.R.T.」情報を計測して状態を判断するようなメンテナンスツールを有効に使えば、壊れそう……壊れるかも……? という予想はある程度まで可能だそうだ。

 また、外的な現象からも故障は予知できるという。

 HDDの場合、内部から「コツンコツン」という音が聞こえてくることがある。これは、「読み取りエラーが発生していることによってHDDがリトライを繰り返しているために発する音」である場合が多いのだそう。これが聞こえてきたら、データのバックアップとHDDの交換を速やかに実行すべきだ。間違っても衝撃を与えたりしないこと!

物理的な破損の場合は、クリーンルームでHDDを開封するが、非常に高精度かつデリケートな構造のため、高度な技術と経験が求められる

 光学メディアの場合、多少のキズならばデータの復旧は可能だという。ただし、データ記録層まで至っているキズの場合は復旧は不可能。「誤解している人も多いですが、CDやDVDなどの光学メディアの場合はキラキラした面よりも、ラベル側の面に与えられたダメージのほうが致命的」(今井氏)ということで、光学メディアのラベルにボールペンで強く文字を書いてしまったり、テープを剥がしたらラベル面まで一緒に剥がれちゃった、という破損のケースは多く、また復旧は厳しいのだとか。

HDD内部のキラキラした「プラッタ」はアンタッチャブル中のアンタッチャブル。触れただけで救えるデータも救えなくなる

 意外にも、HDDのデータ復旧を行なう場合、HDDのフタを開けて物理的にアクセスするのは最後の手段なのだそう。「内部のプラッタにキズを付ければそれでもうおしまい」(唐澤氏)なのはもちろん、プラッターやヘッドの位置をズラしてしまっても、データの救出は不可能になる。フタを開ける場合、内部パーツを正常な同一仕様のパーツと入れ換えて、そっとフタを閉じてデータを復旧させる、という作業が行なわれる。

HDDのヘッドは、触れるか触れないほどの距離でプラッタ上を動く。そのためセッティングを容易に変えることはできない。こちらも基本的にアンタッチャブル

HDD内部の換装可能なパーツのみ外して交換する。なおデータ復旧技術センターには新旧取り混ぜてありとあらゆるHDDのドライブ、パーツが保管されているらしい

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