なぜデュアルスロット搭載機が注目を浴びるのか
中国の移動通信会社は、「中国移動」(China Mobile、3GはTD-SCDMAを採用)、「中国聯通」(China Unicom、同W-CDMA)、「中国電信」(China Telecom、同CDMA2000)の3社だが、日本のMNPのような制度がないため、別の会社に変更すると番号を変えざるをえない。
中国聯通の人気は高いのだが、2Gのときに中国移動が圧倒的なシェアを持っていたため、そのまま中国移動の3Gにアップグレードして新たな専用スマホ端末を用意し使い続けるという背景もある。
そのような事情があり、W-CDMAとTD-SCDMAのデュアルSIM利用可能というのは、中国人にとってなかなか魅力的だ。街中では電信会社の広告は見かけるが、さすがに「2つの会社で使えます。乗り換えできます」とは公言できず、あまり表だって知られていない。しかし、MT6589搭載機種は約100機種出ており、各種ニュースを読むに今後も順調に新機種がリリースされそうだ。
最近では中国市場ではPCだけでなく、スマートフォンやタブレットでも定評のあるレノボは、サムスン製、クアルコム製、Intel製、MediaTek製それぞれのSoCを搭載したスマートフォンをリリースしている。同社はPCにおいてもAMDとIntelのCPUを偏りなく採用してきたが、スマホにおいても幅広く採用してきた。
4Gでもデュアルスロット端末が登場!?
さて、4Gではどうか。上海で6月末に開催された「Mobile Asia Expo」では、中国移動、中国聯通、中国電信の3キャリアともに4Gは「FD-LTE」と中国が開発に深く関わったという「TD-LTE」の両方を採用すると発言している(ただしどちらに重きを置くかはキャリアによって異なる)。
3Gのときに中国独自のTD-SCDMA方式のライセンスを発行したのと同様、4Gのライセンス供与は年内の中国移動を皮切りに行なうと言われており、中国移動がTD-LTE用端末を9月に選定し、年内にTD-LTE用端末の提供を開始するという。
中国で3Gが登場したのは2008年の北京オリンピックのときで、そのときから5年経過し、先月ようやく3G契約数は3億を突破した。2Gも含めた全体の契約数は11億6523万なのでまだ4分の1強に過ぎない。
4Gに関しては、まずはテクノロジーに興味がある人が搭載チップを気にするだろうが、4G自体の普及にも相当の時間がかかることが予想される。インフラ面に関しては、いくつかの大都市で4Gの試験が行なわれている程度で、カバーエリアも当初は一部の都市限定となろう。
実績のあるMediaTekは、年内にTD-LTE用のチップを出すというコメントをしている。時期が来れば、FD-LTEとTD-LTE双方をサポートするSoCも出てくるのではないだろうか(あまり日本で出ることは期待できないが……)。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。
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