5月13日、日本IBMはオープンクラウドへの取り組みに関する説明会を開催した。標準化技術を積極的に推進することにより、ユーザーに選択肢を与えるオープンクラウドのメリットを日本IBM クラウドマイスターの紫関昭光氏が解説した。
オープンスタンダードを積極的に推進
オープンクラウドは米IBMが2013年3月に発表したもので、IBM SmarterCloudなどのクラウドサービスやソフトウェアを「オープンクラウドアーキテクチャ」をベースにするという内容となっている。オープンなクラウドの導入により、顧客に幅広い選択肢と規模の経済を提供するほか、1つのシステムを別のクラウドでも利用できるポータビリティやシステム間連携を実現するという。
こうした動きの背景には、IaaSやPaaSなどレイヤー間、クラウドサービス間での相互接続性やポータビリティが欠けているという現状がある。紫関氏によると、「ベンダーのミゾが深い。特にPaaSに関してはスイッチングコストがかかるため、やりたいけど導入を踏みとどまっているユーザーも多い」とのこと。こうした課題を解決すべく、IBM SmarterCloudでは自社のクラウドサービス間でのポータビリティを確保すると共に、異ベンダーでの相互接続性を確保すべく、オープンスタンダードな技術の導入を積極的に進めていくという。
具体的に同社が推進していくオープンスタンダードとして紫関氏が挙げたのが、2009年にIBM自体が出した「Open Cloud Manifesto」のほか、仮想マシンイメージの標準化を進めている「DMTF OVF」、クラウド基盤として幅広い支持を得る「OpenStack」、PaaSの標準化として登場したばかりの「OASIS TOSCA」、ツール間の連携を実現する「OSLC」、ユーザー事例などを交換する「OMG CSCC」など。こうした標準化技術の導入により、ユーザーはいったんサービステンプレートを作ってしまえば、さまざまなクラウドで動かせる。また、パートナーもベンダーロックインを避けた大きなエコシステムを構築できるというメリットがある。
3月の発表時にはOpenStackへの全面支持が大きな話題になったが、実際のキモとなるのは、OASIS TOSCA(Topology and Orchestration Specfication for Cloud Applications)だという。OASIS TOSCAではシステムを構成するノードのタイプやノード間のリレーション、全体のプランなどを仮想アプリケーションのサービステンプレートとして規定し、これを下位のインフラのプロビジョニングに用いることができる。さまざまな部品を組み合わせてシステムを作り上げる「コンポーザビリティ」のほか、「インターオペラビリティ(相互接続性)」や「ポータビリティ(可搬性)」を高めることができるという。
OASIS TOSCAのテクニカルコミッティにはIBMやCA technologiesをチェアに、シスコやシトリックス、HP、EMC、レッドハット、SAPなどのベンダーが参加している。また、OASIS自体のスポンサーはより幅広いベンダーが名前を連ねており、マルチベンダーでのクラウド運用に期待できる。
IBMでは5月以降順次、IBM SmarterCloudの拡張を続け、異なるクラウドでのサービステンプレートのやりとりや、パブリッククラウド・プライベートクラウドでの可搬性などを実現。「ベンダーロックインのない世界を目指す」(紫関氏)。