マネタイズよりもサービスの充実
現在、Gunosy内に広告やアフィリエイトのリンクはない。つまり情報配信の収入はゼロ。今のところユーザー数を増やすことに主眼を置いているという。またユーザー数8万人の現時点でもある程度のビジネスは成功するだろうが、方向性をシフトするとユーザーが離れていってしまうとGunosyは考えている。
「今はビジネスよりも目の前の事業に集中することが優先です。それと最新技術の情報を入手したり論文に目を通したり、技術力の底上げを目指しています。アルゴリズムをちょっとずつ変えたり戻したりしながら精度を高めているところです。我々のサービスは『飽き』との戦いなので」
Gunosyのウリは、ユーザーの好みを分析するキュレーションの精度の高さだ。メンバーは大学で「ウェブマイニング」と呼ばれる、ウェブのデータを活用して分析する研究を重ねてきた。しかし、そんな彼らをもってしても、キュレーションの精度がどうしたら高くなるのかはわからないと笑う。それよりも、徹底的にユーザーの利便性にこだわりを持っている。
「インターネットで情報を得るのは面倒なので、それをある程度緩和してあげたい。それがGunosyの設計思想です。かっこいいことを言うと、インターネットをもっと身近にしたいということでしょうか。知りたいことや探したいことを考えずに済むサービスを提供したいんです。『情報を見る、クリックする』──この繰り返しだけでいいと思います。インターネットは情報がたくさん存在するけど、それを見つけるのが大変。面白い記事を書くブロガーはたくさんいるので、そういった情報をたくさんのユーザーに届けられたらうれしいです」
インターネットが面倒だと聞くと、検索することが面倒だと解釈したくなる。しかしGunosy開発のきっかけは、検索エンジンの使いこなしとは無関係だ。
「きっかけは、RSSリーダーです。楽しくいろいろ登録するけど、数日放っておくと未読が100件になってもう見ない……みたいな。一方でGoogle検索は強い目的があると強力なツールですが、なんとなく興味がある程度だとあまり有用ではありません。自分の興味があることを毎日ググると思いますか? もっと賢くてユーザーに便利なサービスを作れるのではないかってスタートしました。Gunosyは僕たちが欲しいツールだったわけですが、こんなに支持されるということは、やっぱりインターネットはまだまだ面倒なのかなって思います」
今後は「Gunosy Career」という転職サービスを準備中という彼ら。具体的なプランには答えてもらえなかったが、Gunosyが目指す方向性を語ってくれた。
「抽象的な話をするならGoogleやマイクロソフトみたいにちゃんとした技術を持って、それをサービスに生かす会社になりたいなというのはあります。理念や考え方でちゃんと勝負していきたいんです」
一方で、彼らが大学で取り組んでいるウェブマイニングの研究で成功することも将来の夢だという。
「日本のIT企業ってあまり論文を発表しないんですけど、米国のGoogleやIBMなんかは、積極的に論文を発表してユーザーに還元し、しかもビジネスで成功しているじゃないですか。ほかにも大手のウェブ系企業がスポンサーについて、ベンチャー企業が論文発表しています。できるなら自分たちの研究成果を論文として発表してみたいです」
開発者3人にとって、キューレーションサービスとしての「Gunosy」はブランド名を広げるための第一歩にすぎない。研究と実績を重ねたとき、彼らがITビジネス界に新たな動きを見せてくれるかもしれない。