
今回のことば
「今後3年は電機メーカーが生き残りを賭けて、デジカメ領域に力を入れてくるだろう。我々はそこで負けるわけにはいかない」
(キヤノンマーケティングジャパン・川崎正己社長)
写真愛好家の増加と対照的に売上が落ちるコンパクトデジカメ
デジタルカメラ市場が転機を迎えている。
レンズ交換式デジタルカメラ市場は、2012年の年間183万台の市場規模が、2013年には年間200万台へと成長が見込まれるものの、その中身が大きく変化している。
一眼レフカメラよりも、ミラーレスカメラが急成長を遂げており、市場全体の5割を占める状況になってきたからだ。
ミラーレスカメラでは、カメラメーカーに加えて、ソニー、パナソニックといった電機メーカーの躍進が目立っている。
一方で、コンパクトデジカメ市場は、年々縮小の方向へとシフトしている。この領域はスマートフォンで写真を撮影するユーザー層の台頭が大きく影響。カメラ人口全体の増加とは裏腹に、コンパクトデジカメの利用者数は減っているのだ。
キヤノンマーケティングジャパンでは、2012年におけるコンパクトデジカメの市場規模を730万台強としているが、「2013年度には600万台規模に縮小する」と予測する。
写ルンです=スマートフォンという図式
さらに、その後の見通しも厳しく見ている。「将来的には、年間450万台規模になることを覚悟している」と語るのは、キヤノンマーケティングジャパンのイメージングシステムカンパニープレジデントである佐々木統取締役専務執行役員だ。
実は、450万台という数字は過去の経験値から導き出したものだ。
かつてのフィルム時代に、コンパクトカメラは年間450万台規模に留まっていた。その背景には、富士フイルムの「写ルンです」に代表される「レンズ付きフィルム」がピーク時には約1億本を出荷。コンパクトカメラの市場を浸食していたからだ。いまでも「写ルンです」は、3000万本以上の年間出荷実績があるという。
それと同様に、2013年3月末に4335万件(MM総研調べ)の普及台数に達するスマートフォンは、2016年3月末には7447万件に拡大すると予測されており、これがコンパクトデジカメの市場を浸食。結果として、同等の市場規模にまで縮小するという読みなのだ。
2007年には、990万台という出荷実績を誇ったコンパクトデジカメ市場だが、それに比べると半分以下に市場が縮小するということになる。
さらに価格下落が進展しているという状況があり、2009年には2万5000円弱だった平均単価は、いまでは1万5000円にまで落ちている。これの流れが継続すれば、デジカメメーカー各社はビジネスモデルの転換を余儀なくされるばかりか、場合によってはメーカーの淘汰もはじまりかねない。
つまり、これから市場縮小、価格下落のなかで、生き残りを賭けた戦いが始まることになるのだ。

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