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出版業界の事情に合わせ、少量多品目の出版物をスピーディーに印刷

講談社が導入した国内初のデジタル輪転機を見てきた

2013年01月30日 09時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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少量多品目に柔軟に対応できる印刷設備が必要

 出版業界のトレンドとしては、書籍の発行点数が右肩上がりで増加する一方で、書籍の発行金額は右肩下がりで減少する傾向が続いている。刊行された書籍のうち、初版の売れ行きが好調で、重版がかかる割合は20~30%程度と低く、初版で終わる場合では実売率が50%程度に留まるのが現状だ。

刊行点数が増える一方で、売上(部数)は下がる傾向にある

 出版物は、出版社から取次を経て書店に卸すが、売れ残った場合、取り次ぎを経て出版社に返品され、決まった金額で買い取るのが通常だ。作りすぎればその分だけ出版社の負担が増すことになる。さらに市場では、一度購入した出版物を古書店に売り、それが別の読者の手に移るという中古販売の比重も増えている。

 このため大きな部数を刷って広く流通させるという従来の方法は取りづらい。講談社業務局局長の梅崎健次郎氏も、出版物の多様性を保ちつつ「2000~3000部単位での(効率的な)生産が求められる」と話す。

 しかし小部数の生産にはいくつかの課題もある。一例として、出版物に使用する用紙が多様である点が挙げられる。一口に文庫といっても、出版社ごとに使用する用紙は異なるため、印刷会社がさまざまな出版社から印刷を受注した場合、印刷のたびにロール紙を入れ替え、設定を変更する作業が発生することになる。

 つまり、印刷会社にとって小ロット生産は効率が悪く、躊躇する面がある。ロール紙は1本あたり1万メートル程度の長さがあるそうだが、仮に320ページの文庫を1000部印刷する場合、使うのは6000メートル程度で消費しきれないという。

 インクジェット印刷機の品質はオフセット印刷に比べて劣る面もあり、品質を重視する印刷所と出版社の間で基準に関する考え方が違うという側面もあった。

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