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出版業界の事情に合わせ、少量多品目の出版物をスピーディーに印刷

講談社が導入した国内初のデジタル輪転機を見てきた

2013年01月30日 09時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 講談社は、少部数・多品目の出版物の制作に柔軟に対応するため、“講談社ふじみ野デジタル印刷製本工場”を開設。本格稼動に先立つ28日、報道関係者に対して内部を公開した。

倉庫に隣接して開設された講談社ふじみ野デジタル印刷製本工場

 昨年9月に導入した、日本ヒューレット・パッカードの輪転機能を備えた大型インクジェット印刷機「HP T300 Color Inkjet Web Press」に、スイス ミューラー・マルティニ社製の製本機と組み合わせ、PDFで入稿したデータを、版を作らずに印刷・製本できるフルデジタルの書籍生産システムを構築した。

HP T300。輪転機能を持つ大型インクジェットプリンターだ。両面印刷に対応するため、写真の機械が2台連続して設置されている

輪転機の搬送速度は毎分122メートル。ヘッドはCMYK4色で、1万560ノズル×140個あり、全部で150万個というから驚く

大型の容器は容積200リットル。途中での交換も可能だ

これを調合して、天井を通したパイプを通じて印刷機に送り込まれる

PDFのファイルを持ち込めば、そのまま印刷工程に進める

まずは文庫本の増刷りに採用、学術書やハードカバーも

 講談社はこれまで、文庫本を最低部数で重版した後、2年間在庫し、売れ残った分に関しては廃棄する方法を取っていた。しかし、これには倉庫や廃棄のためのコストがかさむという問題がある。小部数でも重版ができる体制を作り、総在庫数を減らし、逆に在庫が不足した際には数百部単位ですぐ生産できるようにした。

 モノクロの印刷物の場合、300~400程度の部数でも、オフセット印刷で1600部程度刷った場合と同等にできるよう投資金額を決めた。従来1部あたり800~1000円程度で作っていた書評用の事前配布本(プルーフ本)のコストも、1/5~1/10程度に抑えられるという。

 最大で日産8000部のペースで文庫本を作れる。将来的には、学術書やハードカバー書籍などに領域を広げ、当初の月産5~6万から、年内には15~16万部程度作れる体制を目指す。このほかにも一般書籍で、初版は2000~3000部程度の小部数で発行し、売れ行きに応じてオフセット印刷に移行するといった展開もあり得るという。

訂正とお詫び:生産数に関する数字に不正確な記述があったため修正しました(2013年1月30日)

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