講談社は、少部数・多品目の出版物の制作に柔軟に対応するため、“講談社ふじみ野デジタル印刷製本工場”を開設。本格稼動に先立つ28日、報道関係者に対して内部を公開した。
昨年9月に導入した、日本ヒューレット・パッカードの輪転機能を備えた大型インクジェット印刷機「HP T300 Color Inkjet Web Press」に、スイス ミューラー・マルティニ社製の製本機と組み合わせ、PDFで入稿したデータを、版を作らずに印刷・製本できるフルデジタルの書籍生産システムを構築した。
まずは文庫本の増刷りに採用、学術書やハードカバーも
講談社はこれまで、文庫本を最低部数で重版した後、2年間在庫し、売れ残った分に関しては廃棄する方法を取っていた。しかし、これには倉庫や廃棄のためのコストがかさむという問題がある。小部数でも重版ができる体制を作り、総在庫数を減らし、逆に在庫が不足した際には数百部単位ですぐ生産できるようにした。
モノクロの印刷物の場合、300~400程度の部数でも、オフセット印刷で1600部程度刷った場合と同等にできるよう投資金額を決めた。従来1部あたり800~1000円程度で作っていた書評用の事前配布本(プルーフ本)のコストも、1/5~1/10程度に抑えられるという。
最大で日産8000部のペースで文庫本を作れる。将来的には、学術書やハードカバー書籍などに領域を広げ、当初の月産5~6万から、年内には15~16万部程度作れる体制を目指す。このほかにも一般書籍で、初版は2000~3000部程度の小部数で発行し、売れ行きに応じてオフセット印刷に移行するといった展開もあり得るという。
訂正とお詫び:生産数に関する数字に不正確な記述があったため修正しました(2013年1月30日)
