少部数でも同じ売価、同じ用紙を維持する
講談社が自社で印刷設備を導入した背景としては、こうした印刷所との間の関係に加えて、グループ内に豊国印刷といった印刷会社を持つ点、倉庫に設置することで総在庫数を減らした効率的な運用ができる点、オペレーションは3名で完結し、付帯設備が必要ないなど受け入れ体制を作りやすかった点もあるという。
小ロット生産設備を、出版社として構築する際に求められる条件には信頼性(導入実績)以外に、以下のようなポイントがあった。
ひとつは、割高になる小ロット生産でも定価を上げずに販売し、なおかつ利益も確保できること。次に取次に対する製品登録の関係で、オフセット印刷と同じ色味、厚さ、重さの用紙を利用できること(取次が搬送に利用するトラック手配などに影響が出ないこと)。
またカット紙を重ね合わせる一般的なオンデマンド印刷ではなく、折りで帳合して製本ができることが挙げられる。用紙をページ単位で印刷して、製本すると静電気などでページが抜け落ちることがあり、品質管理に自信が持てないという。
全世界で90台以上が稼働
今回導入されたHP T300は、幅30インチ(約765mm)のロール紙に対応。全長は約20メートルだ。Inkjet Web Pressシリーズでは20インチ幅のT200、42インチ幅のT400の中間となる製品となる。印刷速度は毎分122メートルで、A4サイズ4色カラー印刷で毎月7000万枚の印刷ができる性能を持つ。
米HPで高速インクジェットウェブソリューション事業部のゼネラルマネジャを務める、アウレリオ・マルジ氏によると「3年で7台を導入したONEILや、2年で6台を導入したCPIなど、増設が多い点も特徴だ」という。同シリーズは2008年から、市場投入されており、全世界で90台以上が稼働。すでに250億ページの印刷がなされているそうだ。
日本HP執行役員の石川則夫氏によると、ベルギーのColuyt社のパーソナライズクーポンブックのように、ビッグデータ解析やクラウドといった各種技術と連携したデジタル印刷の進化が世界で進行中だという。
Coluytはユーザーの購買傾向でカスタマイズされた4ページのクーポンブックを隔週で160万部発行しているが、3年前の2010年2月には発行数は5万部程度。ページ数も現在より多い32ページだった。当初6億ページ使用していた紙の使用量を大幅に削減するとともに、大幅な会員数の増加が得られたという。