2ちゃんねるブラウザー削除騒動の当事者が語る
「マイクロソフトは開発者の要望を聞くし、担当者の顔も見える」
―― 開発期間は?
福島 「これは2ヵ月でリリースできました」
―― 原稿は書き下ろしですか?
福島 「原稿やスクリーンショットも今回のアプリのために書いて、一番画面に合う画像サイズを検討した上で組版しました。ビューア自体は1ヵ月ほどで完成し、チューンナップなどにもう1ヵ月使いました。その間にコンテンツができたので、組み合わせてストアにアップしました。そんな流れです」
―― リジェクトもなく、スムーズにアップしたのでしょうか。
福島 「いったん蹴られました。理由はこちら側ではなく、ちょうどWindows 8のRTMがリリースされるタイミングと重なってしまいまして」
―― ああ、RC版で作ったアプリは受け付けませんという。
福島 「まさにそれです。もう少しでRTMが出るからそっちで出し直してね、という狭間でした。仕方がないのでRTMを待ち、新しく環境を作って、ビルドして送ったら一発で通りました」
―― リジェクトの理由がわからないといった不満はなかった?
福島 「私に関してはないですね。Windows Phoneでもリジェクトを経験しているのですが、こういうときはマイクロソフト側も手探りなんですよ。向こうも試行錯誤していて、極端な例ですと、1回蹴られたけれど面倒くさいからもう1回同じものを送ったら通っちゃった、なんてこともあるんです」
―― 一定のところまではツールにかけて、以降は人が検査しているはずなので、基本的な絶対に外せない部分はみなさん共通しているはずですよね。ただ、審判によってストライクゾーンが微妙に違うみたいな感じですか?
福島 「でもどんどん(判断は)良くなっていますよ。Windows Phoneでの2ちゃんねるブラウザーのときは悲惨でしたけどね」
―― 2ちゃんねるブラウザー自体が不許可説まで飛び出して、ちょっと騒がれましたよね。
福島 「そうです。あのときはまさに当事者で、結局3ヵ月ぐらいダメだったんですよ」
―― そんなに長く続いたのですか。
福島 「何が問題だったかというと、2ちゃんねるの話題は玉石混合ですよね。エロもあれば暴力もある。そこからリンクしているサイトもまた同様です。そこをマイクロソフト本社は重視したのですね。
アメリカと日本では温度差が全然違います。特に児童ポルノなどの範疇に関しては。向こうは厳しいですからね。そういった意味でいったん全部落としたと。僕の『Nel』だけでなく、すべての2ちゃんねるブラウザーが落とされた。まあ仕方ないですよね」
―― これも世界相手に販売する影響の1つですね。技術云々でどうにかなる話でもありませんし。
福島 「見ず知らずのところから、『お前が作ったアプリでうちの子供が影響を受けた』って訴訟起こされたら怖いですよね。あのときのリジェクト騒動で一定のルールをマイクロソフト内で作ったと思うんです。そこは逆にありがたいですね」
―― 今度はルールに従う限り、訴訟などの可能性が圧倒的に低くなりますからね。
福島 「リスクは避けられます。そうやって徐々に洗練されていくのでしょうね」
―― ではWindows ストアはこれから洗練されていくと。もしWindows 8用「Nel」が出たときに、またひと騒動起こる可能性も……。
福島 「あると思います。またイチから考えていくのか、Windows Phoneのノウハウが継承されるのかわかりませんが、似たようなことは起きるでしょう。ですからWindows ストアは、ZIPで固めた自作ソフトをホームページで公開するのとはまったく違います」
―― デバイス自体が子供も使えるようなタッチ操作になったということも関係しているのかもしれませんね。
福島 「あと、Windows Phoneのときに良かったのが、日本のマイクロソフトの担当者宛てで相談・要望を投げるページに、要望を投票できるシステムがあったことですね」
―― 投票ですか。
福島 「2ちゃんねるブラウザーの件も、審査がおかしいよね、どうにかしてくれと様々な方が投票して、一時、1位の話題になったんです。
それがきっかけで日本のマイクロソフトさんが本社と調整してくださったようで。要望が伝われば動いてくれるんですよね、マイクロソフトさんは。そのへんが他の大手と違うところです。担当者の顔が見えると言いますか。TwitterやFacebookでも直接話ができますし」