1プラッタあたり1TBの容量を誇るHDDが2011年9月に、そして2011年12月には初の4TB HDDが秋葉原に登場した。ここ10年言われ続けている「年40%のHDD容量成長曲線に限界がやってくるのではないか?」という説は、今のところ現実になっていない。これは部材メーカーや基礎技術研究のたゆまぬ努力の結果だ。
たとえばHDDの再生ヘッドは、MR(Magneto Resistive)ヘッドよりも3倍以上感度の高いGMR(Giant Magneto Resistive)ヘッド、そして現在主流の量子学のトンネル効果を利用したTMR(Tunneling Magneto Resistive)ヘッドへと、記録面の細微化により微弱になった磁力の変化を感知できる感度の高いものに改良されてきた。
ディスク側も、内面記録方式(図1)からより高密度に記録が可能な垂直磁化膜方式(図2)へ転換されてきた歴史がある。これらの細かな改善努力により、HDDの容量増加は続いてきた。とは言え、物理的な問題で、それもそろそろ限界なのではないかと言われていたのだ。
だが、2011年に幕張メッセで開催されたCEATEC JAPAN会場で、大変興味深い技術が紹介されていた。場所はTDKの幅1mにも満たない小さなブースだったが、そこで語られている技術はHDDの容量増加曲線を再び成長方向へ戻すものだった(関連記事)。
それが「熱アシスト方式」、HDDのプラッタの一部を熱することで、記憶容量を増加させようといういうものだ。
技術のコンセプト自体はHDD関連メーカーが既に論文を発表していたものだが、ブースで実際に動作している様子を動画でアピールしているのは衝撃だった。TDKの独自技術は、HDDのヘッド部分にレーザーを発する装置を搭載し、書き込み部分を熱することで記録容量を増加させるもの。しかも、もしかしたらここ数年で登場するかもしれないという。
今回、この熱アシスト方式を紹介していたTDKの理学博士・島沢幸司氏にお話を伺う機会を得た。この技術によりHDDの容量はどこまで増加し、そしてそれが我々の生活にどのようなインパクトを与えるのか? その興味深いお話を聞いた。