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HP クライアント・バーチャリゼーション・アクセス・ソリューション提供へ

組織をまたいでも快適に!HPがクライアント仮想化を強化

2012年02月15日 10時00分更新

文● 渡邊利和

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2月14日、日本ヒューレット・パッカード(HP)は、ユーザーがクライアント仮想化だけでは解決できない部分を埋めるソリューションとして「HP クライアント・バーチャリゼーション・アクセス・ソリューション(CVAS:シーバス)」を発表、提供を開始した。

クライアント仮想化の課題に独自のアクセス層

 HPクライアント・バーチャリゼーション・アクセス・ソリューション(CVAS)は、「柔軟にかつセキュアに、複数組織間でのデータアクセスを実現するソリューション」だと説明される。具体的には、既存のさまざまなクライアント仮想化製品の最上位にアクセス層としてドメインコントローラ(ActiveDirectory)と連携する「ロールベースリソースアサイン機能(HP Secure Solutions Authorization)」を被せることで、既存の仮想化製品単独ではカバーしきれない課題に対応することを狙ったものだ。

HP テクノロジーコンサルティング統括本部 クライアントソリューション部 部長の田中 哲二氏

 同社のテクノロジーコンサルティング統括本部 クライアントソリューション部 部長の田中 哲二氏は、「従来のクライアントに関する問題の大半はクライアント仮想化で解決するが万能ではなく、一部解決できない課題も残る」という。個別にハードウェア/リソースを割り当てることに起因する無駄や、ハードウェア/ソフトウェアのアップデートに伴う運用管理負担の増大などは仮想化を導入することで一気に解決することが可能だ。一方、仕事の進め方が変わってきている面もあり、かつてのように単一の組織体の内部で業務が完結するとは限らず、取引先や関連組織といった異なる組織に属するユーザーがそれぞれの組織間をまたがって業務を遂行するような場合も考えられる。

CVASが対応する、クライアント仮想化だけでは解決しない課題

 こうした状況に対応できるよう、「企業体もしくは組織体をまたいだアクセス環境でも、セキュアなクライアント環境を実現する」ことが求められている。たとえば、別会社として運営されている生産拠点に本社の設計部門の人間が出向く、といった場合、この人が本社から持ち出したクライアントPCを生産拠点のLANに接続した場合、このPCから本社の設計データにアクセスできて良いのかどうか、といった制御を柔軟に行なえる環境が必要だ、という話だと理解できる。

 CVASでは、リソース層として位置づけられる部分では既存の他社製仮想化製品であるCitrix XenDesktop/XenAppやVMware View、Microsoft App-Vなど、同社のパートナーである企業の製品をサポートする。さらにこうした製品間を接続するゲートウェイ層でも、プロキシサーバーとしてCitrix Access GatewayもしくはMicrosoft Remote Desktop Gateway、ロードバランサとしてCitirx Netscalerを使うなど、基本的にはすでにユーザーも活用しているであろう主要な既存製品をそのまま使えるようになっている。

CVASのおもな特徴

CVASのコンポーネント構成

 その一方、これらの製品だけではカバーできない上記のような問題に対処するためのアクセス層として独自ソフトウェアであるHP Secure Solutions Authorizationをロールベースリソースアサイン機能として据えることで、組織ごとにそれぞれ行なわれているユーザー管理機能を連携させ、「仮想デスクトップ基盤や認証基盤を統合するのではなく、アクセス手段を改善する」ことを実現している。なお、HP Secure Solutions Authorizationは単独のソフトウェアとして提供されるものではなく、あくまでもソリューションとしてのCVASのためのコンポーネントとして位置づけられている。

仮想化と密接な関係を持つモビリティ

 CVASは、現在のクライアント仮想化製品がまだカバーしていない領域の課題を解決することを狙ったものだが、仮想化のみではなく、企業コンピューティングにおけるモビリティの発展とも密接な関連を持っている。同社のモビリティへの取り組みについて、ヒューレット・パッカード カンパニー アジアパシフィック&ジャパン HP Technology Consulting クライアント&マイクロソフト インフラストラクチャ ソリューションズ ストラテジストのエイドリアン・クラウザー氏が説明を行なった。

ヒューレット・パッカード カンパニー アジアパシフィック&ジャパン HP Technology Consulting クライアント&マイクロソフト インフラストラクチャ ソリューションズ ストラテジスト エイドリアン・クラウザー氏

 同氏はまず“プロシューマー”の増加について指摘し、従来のような“プロフェッショナル”と“コンシューマ”にきれいに二分することができない、「コンシューマーデバイスを活用してビジネスアプリケーション/データにアクセスし、プロフェッショナルとしてもコンシューマーとしても同一なIT体験が可能であることを望む」エンドユーザーを企業のIT部門がサポートしていく必要が生じているという。IT部門の役割は「エンドユーザーに対するITサービスの提供」であり、従来はこれを「IT部門が所有/管理するデバイス」を通じて行なっていたが、今後は「ユーザー所有の各種のデバイスを通じてサービスを利用できるように」していく必要があるわけだ。

 HPは以前からITを活用した企業の変革“トランスフォーメーション”を推進してきたが、HPコンサルティングではモビリティの分野でも「プロシューマーの生産性向上」「どこでも、どんなデバイスでも」「信頼できる環境で」という要件を中核に据え、どのような課題を解決する必要があるのかを整理している。ここでのおもな取り組みは、3つのサービスと具体的な解決手段となる1つのソリューションで、前述のCVASがこのソリューションに相当する。

 一方、サービスは1つのワークショプと2つのアセスメント・サービスにさらに細分できる。まず「トランスフォーメーショナルエクスペリエンスワークショップ」はユーザー企業のモビリティへの取り組みの基本方針を策定する1日間のプログラムとなる。ここでは、個別の技術詳細に踏み込むのではなく、むしろ経営視点から当該企業においてどのような形でモビリティを業務に活用していくかの大方針を明確化する。言い換えれば、企業自身がどのようなモバイルワークスタイルを望ましいものと考えているかを再確認する作業だといえる。そもそも企業ネットワークへのモバイルアクセスを許すかどうか、というレベルから再検討することで、その後の実装段階においてどのような技術をどのような形で導入すべきかの判断基準を確立できる作業であり、企業側の経営層に現時点でのモビリティのあり方について理解する場を提供するという役割も担うものだ。そして、実装段階までをカバーしていくのが「ビジネスベネフィットのロードマップ」「戦略的なアーキテクチャとロードマップ」を作っていく2つのアセスメントサービスとなる。

 現時点ではまだ、PCが業務のための中核的なデバイスであることに変わりはないが、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスの比重が徐々に高まっているのは国際的なトレンドでもある。ともすればこうしたデバイスにどう対応するか、という個別的ななシステム実装論に即踏み込んでしまいがちではあるが、やはり企業としての大きな方針を策定し、それに沿って対応を進めるべきだろう。その意味で、具体的なソリューションを用意すると同時に、そのソリューションを活かすためのコンサルティングサービスもきちんと揃えるHPの取り組みは、やはり目先の個別対応に追われるのではなく、企業全体のあるべき姿に向かって自己変革を進めていくべきだ、という主張が強く感じられるものになっているといえるだろう。

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