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2兆円の資産となる創業者を始め、IPO長者多数誕生

いよいよIPOのFacebook、Zuckerberg氏以外に笑うのは誰?

2012年02月06日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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創業者の年収は現在1億円そこそこだが
一気に2兆円(!)の資産家に

 さて、Facebookの株式の28.4%(約5億3380万株)を所有するのが、我らが(?)Mark Zuckerberg氏だ。映画「The Social Network」(邦題:ソーシャル・ネットワーク)を観た方はご存知のように、21歳のときに在学していたハーバード大学の寮で大学生向けのネットワークとしてスタートさせた張本人である。現在、弱冠28歳。映画内で仲間に声をかけて資金集めをしていたシーンが思い出されるが、2004年の立ち上げからわずか(すでに?)8年、Zuckerberg氏の資産はIPOでどのぐらい増えるのだろうか?

今年初頭の話題作「ソーシャル・ネットワーク」。BD/DVDもリリースされている

 Forbesが2011年秋に発表したアメリカ版長者番付で、Zuckerberg氏は14位にランクイン、175億ドルの資産を持つと推定されていた。今回の申請書類によると、Zuckerberg氏の2011年の年収は基本給だけで48万3333ドル、ボーナスを入れると合計で149万ドルという。なお、Appleの故Steve Jobs氏ではないが、Zuckerberg氏の年間給与は2013年1月より1ドルになるとのことだ。今回のIPOでFacebookの時価総額が1000億ドルとなる場合、Zuckerberg氏の持ち株の価値は約284億ドルということになる。

 FacebookのIPOで一儲けできそうな人はほかにもいる。たとえば凄腕のビジネスウーマンで現在同社のCOOを務めるSheryl Sandberg氏、0.1%の株式(190万株)を所有しており、昨年の株式による報酬を含む報酬総額は3087万ドルという。持ち株数は3810万株になるとも予想されている。このほかにも、外部投資家のPeter Thiel氏、ロシアのDST GlobalやAccel Partnersなどのベンチャーキャピタルも恩恵にあずかることができるだろう。

IPO長者がたくさん誕生
ボート部の双子も20億円以上の資産を手に

 New York TimesはこのほかにもIPOにより富を獲得しそうな人として、Zuckerberg氏のルームメートで共同設立者のDustin Moskovitz氏(映画ではあまり目立っていなかったが)、株式を授与されたZuckerberg氏の父親(歯科医)などをあげている。共同設立者で資金提供をしたものの訴訟も起こした(その後和解)Eduardo Saverin氏は、未公開企業の株式を売買できるセカンドマーケットですでに大部分の株式を売却してしまっているのだそうだ。

 これだけでない。New York TimesはグラフィックアーティストのDavid Choe氏も2億ドル程度を得るという。Choe氏は、Facebookの最初の本社のデコレーションを、当時社長を務めていたSean Parker氏(Napsterの共同創業者)の依頼の元で担当した人物。Parker氏に報酬は現金がいいか、株式がよいかと聞かれたChoe氏、株式を選んだという。

 ときは2005年、Facebookは2年目、知名度はどれほどだっただろう。Choe氏はアーティストであって、ハイテク屋でも投資家でもない。「ばかげているし、無駄なことと思ったが……」と振り返っている。おそらく、当時のFacebookは本社の内装に2億ドルは支払えなかったはずだ。目先が利いたのか、単なる強運の持ち主か。

 もう1人、いや1組、忘れてはいけないのが、Winklevoss兄弟だ(ボート部の双子!)。Facebookのオリジナルのアイディアは自分たちだと法廷で主張してきたCameron Winklevoss氏とTyler Winklevoss氏はFacebookの株式を120万株所有しており、全体の評価額が1000億ドルであれば、彼らの持ち分は3000万ドルになるという。

映画内ではナードのZuckerbergたちと正反対のキャラクターだったWinklevoss兄弟。ただし北京五輪で6位なのだから、並のジョックとはスケールが違う。ちなみに兄弟とも愛用のSNSはTwitterのようだ

さて、問題はこれから
Facebookは成長を続けられるのだろうか

 IPOはベンチャー企業にとって節目となるものだし、場合によっては株主の前にさらされてプレッシャーを受けることで勢いを失ってしまうこともある。Zuckerberg氏は買収話を断り、株式公開もぎりぎりまで粘ったといわれるが、IPOによりFacebookはどうなるのだろう? Zuckerberg氏はプレッシャーを避けるかのように、申請書類とともに書簡を公開して今後の方針を記している。

 Zuckerberg氏は「Facebookはもともと、企業となるために作られたのではない」「利益優先ではなく、ハッカー精神」と主張し、IPO後もハッカー精神を大切にすると宣言した。ハッカー精神とはなにか。Facebookは“議論するよりまずコードを書く”“完璧を目指す前にまず実現”などをモットーとするといわれており、このような挑戦する精神をさすようだ。

 だが、この規模のお金が付きまとってもそのようなハッカー精神を維持できるのか。Zuckerberg氏は約57%の議決権株式を保有することになり、ある程度のコントロール権を持つといえるが、今後さらにZuckerberg氏の手腕が問われることになりそうだ。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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