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ad:tech Tokyo 2011レポート

adidasが失敗から学んだソーシャルメディアの役割

2011年11月10日 00時00分更新

小橋川誠己/Web Professional編集部

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 10月26~28日にかけて東京都内で開かれたデジタルマーケティングの国際カンファレンス「ad:tech Tokyo 2011」。27日のキーノートには、米アディダスでデジタルマーケティングの責任者を務めるクリス・マーフィー氏とアディダスジャパンの津毛一仁氏が登壇した。

米アディダスのクリス・マーフィー氏

 日米のアディダスにおけるソーシャルマーケティングの取り組みを紹介した両氏の講演では、ソーシャルメディアの役割を山脈に例え、「ソーシャルメディアは山(キャンペーン)と山との間の谷を埋めるものだ」と説明。一時的なキャンペーンだけでなく、消費者との継続した関係を築くことがブランドコミュニケーションにおいて重要だと訴えた。

「我々はソーシャルを理解していなかった」

 「典型的なキャンペーンドリブンな会社」(マーフィー氏)というアディダスは、消費者向け製品を手がける他のメーカーと同様に、年に数回の新製品や季節のイベントに合わせてキャンペーンを展開している。デジタルマーケティングへの取り組みに熱心な同社では、WebとテレビCMなどを組み合わせたクロスメディアプロモーションにも従来から力を入れてきた。

 中でも先進的な取り組みとして業界の注目を集めたのが、2006年に米国で実施した「Do You Believe in 5ive?」というキャンペーンだ。多額のマーケティング予算をつぎ込み、ユーザーが写真や動画を投稿したり、ゲームをしたりできるコミュニティサイトをadidas.com内に構築。当時でいう「CGM(Consumer Generated Media)」、現在のソーシャルメディア的な要素を多く盛り込んだキャンペーンは大きな話題になり、数千人のユーザーがコンテンツを投稿した。

 だが、マーフィー氏は「我々は当時、ソーシャルを理解していなかった」と振り返る。期間終了後、アディダスはキャンペーンサイトを閉鎖し、ユーザーが投稿したコンテンツもすべて削除。キャンペーンを通じて構築されたアディダスと消費者との間の関係は、一時的なキャンペーンの終了とともに切れてしまったのだ。

 こうした反省から、現在のアディダスは、従来型の「囲い込み」「一時的」なキャンペーンではなく、「オープン」「継続的」なエンゲージメントを築くために、ソーシャルメディアを活用する方向へシフトしている。FacebookやTwitterなどの既存のプラットフォームにユーザーがコミュニケーションする場を作り、ファンを増やしていく。そのためには、3つ重視していることがあるという。

 1つは「リラックス」。従来のメディアを使った広告は「かしこまったもの」だったが、消費者と直接やり取りするソーシャルでは肩の力を抜いた、カジュアルなコミュニケーションが適している。ユーザーとの会話を楽しむことが大切だという。

 2つ目は「透明性」。ソーシャルメディアでは隠しごとはできず、消費者に常に見られている。アディダスでは商品への疑問もソーシャルメディアで受け付け、ブランドの担当者が直接回答しているという。

 3つ目は「意外性(サプライズ)」。Facebookでファンになってくれたユーザーに、アディダスは非売品グッズをサプライズでプレゼントした。突然のプレゼントに喜んだファンは、彼らのウォールを通じて感想を広げていったという。「ソーシャルで信頼されるのはブランドよりも友人。アディダスのブランドのファンは200万人でも、ファンの友人を合わせると1億人にものぼる」。

 マーフィー氏は、「ブランドがブランドを語るのではなく、ブランドを語ってもらうこと」が大切だと話す。「我々は、消費者との間の深いエンゲージメントを作りたい。もっとも大事なことは、ブランドへの愛を生むことだ」

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