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基礎から覚える 最新OSのアーキテクチャー 第5回

Windows 8でMetro Styleアプリを動かす「WinRT」

2011年09月29日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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BUILDで披露されたWindows 8

 9月の13日から16日まで、米国で開催された「BUILD Windows」という開発者向けイベントで、「Windows 8」が公開された。同時に「Developer Preview」と呼ばれる開発版のダウンロード提供も開始されている。

 現時点でのWindows 8はβ版以前のものであり、最終的な仕様などは不明な点ばかりではあるのだが、Buildのセッションなどを通じて、さまざまな情報が公開された。今回は特別編として、「オペレーティングシステム(OS)としてのWindows 8」について、考えてみることにする。

タブレットへの再参入を実現するための
Windows 8

 ASCII.jp読者の方は、すでにニュース記事などでWindows 8のスクリーンショットを見たり、記事を読まれたのではないかと思う。こうしたニュースなどで報道されているWindows 8の姿については、ここでは繰り返さないでおこう。

 ただ今回披露されたWindows 8は、「Windows 8のすべて」ではない。いわば「Windows 8 タブレット・エディション」とでも言うべきものが中心であり、Windows 8のすべてが公開されたわけではない。というのは、マイクロソフトの目下の緊急課題は、遅れを取った「タブレットへの再参入」だからだ。

マイクロソフトはWindows 8を「Touch First OS」とさえ呼んでいる。それくらいタブレットを重視しているわけだが、それだけではない

 記憶にある方も多いと思うが、そもそも「タブレットPC」なる言葉は、マイクロソフトが提唱したものだ。なにせWindows 3.1の頃から、「Windows for Pen Computing」を開発していたくらいだ。ちなみにこれは、当時話題になった米GO社のペン操作型タブレットコンピューターへの対抗などから生まれたものだ。

 その後ずいぶん経ってからだが、Windows XPに「タブレット・エディション」を追加して、タブレット型ハードウェアの要件などを策定し、タブレットPC市場を立ち上げようとした。ただし、これも、ペン(スタイラス)を前提にしたものだった。当時のタブレットPCは、数社が製品を出荷したものの、主要なハードウェアカテゴリーとなることはなかった。Windows XPタブレットエディションは、高価だったらしく、製品価格を下げることができなっかったのも不評の一因のようだ。その後のWindows VistaではタブレットPC機能を統合して、一部のエディションでは特に追加モジュールを必要とせずに、タブレット機能が利用できるようになった。

 タブレットPCの普及がほとんど進まないのに対して、アップルの「iPad」は、iPhoneとの互換性という後押しもあって、一気にタブレットコンピューターを主要なカテゴリーに押し上げた。またAndroidも、2011年1月にタブレット版となる「Honeycomb」(Android 3.x)を出荷。今では多くのHoneycombタブレットが登場している。

 iPadやHoneycombのタブレットは、ペンを必要としない指で操作するタブレットであり、マイクロソフトが提唱していたペンタブレットとは違うものだった。ペンを使う場合はマウスと同等のポイント精度が得られるので、GUIを大きく変更する必要はない。そのため、既存のWindowsにペン機能を追加することで、タブレットPCを作ることができた(それが使いやすいかは別の話)。

 しかし指で操作する場合は、ポイント精度は荒くなる。そのため、小さなボタンを押すことは困難になるし、ウインドウの移動やサイズ変更、スクロールバーの操作なども簡単には行なえない。つまり、GUIを全面的に見直さない限り、指による操作は難しいのである。

 Windows 7にもタッチ機能が装備されており、タッチパネル搭載パソコンを利用した方もいるだろう。しかし、画面をスクロールさせようとしてもうまく動かなかったり、リンクのクリックになってしまうとか、クローズボタンなどが押しにくいといったことでフラストレーションを抱えた経験はないだろうか? 高いポイント精度を前提にした従来のGUIを、指で操作するのはかなり困難であり、専用のGUIが必要になることは明らかだった。

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