深く狭く、楽しみをプラス ラブプラスじゃございません
つづいては「Fan+」(ファンプラス)という新たなサービス。つくったのはNTTプライム・スクウェアという会社だ。
2月にできたばかりのこの企業、角川グループとNTTグループの両社が出資したもの。指揮を執るのは浜村弘一氏を取締役にデジタルコンテンツの窓口となる角川コンテンツゲート社と、NTTの情報通信部門を担当するNTTインベストメント・パートナーズ社だ。
さてファンプラス。これは文字も読めれば、ビデオも見られ、インターネットにもつながる「リッチコンテンツ」による新しい形の電子書籍を、売ったり買ったりする場所を与えるもの。リッチコンテンツの楽天市場みたいなものと考えればわかりやすい。
たとえばゴルフが好きな人がいるとする。好きなゴルフライターの記事はじっくり読みこむ。自分でゴルフをやりたければ動画を見ながらスイングの練習をする。ほしくなったゴルフクラブをネットショップで買う。そのすべてが「1冊」でかなうわけだ。
コンテンツの購入はクレジットカードのほか、ケータイの課金システムも利用できる。サービスは10月、やはり秋だ。グラビア、映画、鉄道といったジャンルを中心に、現在、30社あまりがコンテンツの提供に名乗りをあげているという。
電子書籍の日本製YouTube mixPaper
お次は「mixPaper」というインターネットサービス。
運営しているのは株式会社ファンタジスタと株式会社ピーアンドエム。やはり共同事業だ。専任社員はわずか6名。その彼らに言わせれば「電子書籍版のYouTube」。本のデータを画像としてとりこみ、めくって読める形にするのがmixPaperなのだ。
いまは投稿された電子書籍すべてを出している形だが、9月以降にサービスインを予定しているのが「mixStore」。インターネットに掲載する枚数を限定し、あとは電子書籍で販売できるようになる。購入方法はFan+とほぼ同じだ。
パッと見たところ、「電子書籍のYouTube」と公言していることからも、Googleブックにかなり近い印象を受ける。ただし、旅行会社がパンフレットのデータをそのまま掲載したりといった使い方は、グーグルにはないおもしろい特徴の1つだろう。
ソーシャルじゃない電子書籍なんてありえない ジニオ
海外勢はグーグルだけではない。もう1つ大きな企業が「Zinio」(ジニオ)だ。アメリカ発祥のジニオは、National GeographicやELLE、The Economistといった大物雑誌を次々と引っ張りこんだ電子雑誌業界のカリスマ的存在だ。
リッチコンテンツにも対応し、広告には動画も入る。ふんわりしたマスカラの印象など女性向けの広告はビデオで伝わるものも多い。ただしiPadなどのモバイルガジェットではリッチであることはもちろん「読みやすいこと」にもこだわったという。
そんなジニオがユニークなのは「ソーシャル」なこと。たとえばジニオでELLE誌を読んでいて、うつくしいモデルを見つけたとする。そこの画像を切り取って、ツイッターで「この人やっべーきれい!」とURL付きでコメントできるようになっているのだ。
そのURLをクリックした人は、その画像を見られる。それはタダだ。ただし、そこから雑誌全部を読みたくなったら買ってくださいね――と、そういったしくみになっている。「電子書籍でそれくらいできないと、ありえませんよね」と担当者は笑った。
日本では及び腰になりがちな、オープンソーシャルスタイルが定着した電子雑誌。こちらも日本でのサービスインは今年の秋。日本ではソニーが協力に名乗りを上げている。日本の雑誌社がどういった反応を示すのか、注目だ。