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今の時代に合う動的コンテンツへの対応を実現

キャッシュアゲイン!ブルーコートが戻ってきた理由

2010年06月16日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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6月9日、ブルーコートシステムズ(以下、ブルーコート)は通信事業者向けのキャッシュアプライアンス「Blue Coat CacheFlowアプライアンス5000シリーズ」を発表した。ドットコムブームを彷彿させるキャッシュアプライアンスにあえて再投資するのはなぜか? ブルーコートシステムズのマット・ベネット氏に聞いた。

時代はまわる。キャッシュへ戻る

ブルーコートシステムズ マネージング・ディレクター マット・ベネット氏

 ブルーコートの前身は、1990年代末のドットコム時代にキャッシュアプライアンスを提供していたキャッシュフローである。キャッシュアプライアンスとは、通信事業者がユーザーの最寄りにコンテンツをキャッシュするために用いられる製品だ。キャッシュを配置することでユーザーがオリジナルサーバーにコンテンツを取得するのに比べ、レスポンスは向上し、サーバーへの負荷も小さくなる。回線の帯域が確保できなかった1990年代末には非常に重宝され、数多くのサービスプロバイダや通信事業者が導入した。ドットコムブームの後期には、オリジナルサーバーとキャッシュアプライアンスがキャッシュ制御用のプロトコルでやりとりすることで、最新コンテンツをプッシュ型で再配置する技術まで確立していた。

 だが2000年のドットコムブームの崩壊とともに、キャッシュアプライアンスは表舞台から消えることになる。また、動的コンテンツやストリーミングコンテンツの増加によるキャッシュのヒット率が低下したこと、そしてキャッシュやバックアップが情報の複製としてみなされていたという著作権的な問題もあった。キャッシュフローも事業をセキュリティアプライアンスに大きくシフトし、2002年には社名をブルーコートに変更。その後、WebフィルタリングやWAN高速化などのプロキシアプライアンスをメインに扱っているのは、ご存じのとおりだ。

 とはいえ、同社がキャッシュ事業を手放したことはなく、細々ながら技術開発を続けてきた。それどころか、2006年にはネットワークアプライアンス(現ネットアップ)のNetCache事業を買収し、技術に磨きをかけていたのである。こうした技術は形を変えたキャッシュアプライアンスともいえるWAN高速化製品にも導入されていたが、今回の新アプライアンスの導入で、ドットコムブーム崩壊から10年を経て、まさに本業回帰ともいえるリスタートとなったわけだ。

 6月9日に発表されたBlue Coat CacheFlowアプライアンス5000シリーズは、通信事業者向けのキャッシュアプライアンス。こうした製品が登場した背景には、やはりトラフィックが爆発的に増加しているという事情がある。2011年にインターネットのユーザーは20億人へ拡大。多国間のトラフィックが74%増。IDCをはじめ、あらゆる調査報告が、今後のトラフィック増大を予想している。さらにベネット氏は「モバイルWebにも対応しなければならない。動画データも爆発的に増大している」と述べる。この状況においては、単に帯域を増強するのではすでに追いつかないため、キャッシュの有効活用が再度フォーカスされるというわけだ。

動的コンテンツに対応
コンテンツ識別技術に注力

 こうした事態を解決するために投入されたブルーコートのキャッシュアプライアンスは、単に過去の製品の焼き直しではなく、抜本的なアーキテクチャの改良と新機能の追加が行なわれた。「昔は小さなデータを大量にキャッシュする手法がメインだったが、昨今は大きなデータをインテリジェントにキャッシュする手法が求められている」(ベネット氏)というトレンドを盛り込み、コンテンツを識別するテクノロジーに磨きをかけた。

Blue Coat CacheFlowアプライアンス5000シリーズ

 その1つが動的コンテンツへの対応。今までURLが同じリクエストの場合は、リクエストに対してキャッシュを送信していたが、動的コンテンツの場合はURL自体が変更される。そこでブルーコートでは、HTTPヘッダやページ内のメタデータ、コンテンツの新鮮度までをディープに解析しつつ、エンドユーザーに提供する。また、「Blue Coat CachePulse」という自動アップデートサービスを用いることで、最新のキャッシング手法に対応する。さらに「Blue Coat WebPulse」というWebフィルタリングを行なう機能もオプションとして用意している。こうした機能によって、「通信事業者は利用する回線の帯域幅を削減でき、ユーザーのエクスペリエンスも向上できる」(ベネット氏)といったメリットを享受することが可能だ。

 折しも、日本ではキャッシュやバックアップなどの情報の蓄積が複製とみなされないよう、著作権法が改正された。そのため、通信事業者もこうしたキャッシュアプライアンスを積極的に導入する下地ができたといえる。すでに世界で高いシェアを誇るキャリア向けのキャッシュ事業は今後とも同社のビジネスの大きな核になるという。

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