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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第44回

AMDチップセットの歴史 その3

段階的にGPUを強化した合併後のAMDチップセット

2010年03月22日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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合併後のAMD/ATIチップセットロードマップ

合併後のAMD/ATIチップセットロードマップ

サウスブリッジは最新のSB850世代で大幅強化

 AMD 700シリーズの最後を飾るのは、2009年8月にリリースされた「AMD 785G」と「AMD 780E」である。AMD 780Eから説明すると、基本的にはAMD 780Gと同一スペックだが、ネットブック向けに省電力化を計ったチップセットである。

 対してAMD 785Gは、内蔵GPUをDirectX 10.1対応の「Radeon HD 4200」に切り替えたのが主な違いである(製品ターゲット的にはAMD 780Gの後継)。またこの頃にはSocket AM3のCPUが登場していたこともあり、これにも公式に対応している。

AMD 785G搭載マザーボードの例

AMD 785G搭載マザーボードの例

 ところで、このAMD 700シリーズのもうひとつの特徴は、サウスブリッジが「SB700」世代になったことだ。機能的に見ればSB600とSB700の違いは以下の2つである。

  • SATAが4→6ポートに増加
  • USBが合計14ポートに増加

 ちなみにこのUSBは、厳密に言うと「USB 1.1/2.0×12+USB 1.1×2」という、ちょっと解せない構成なのが謎である(ロードマップ図では「USB 1.1/2.0×14」と簡略化している)。

 さてこのSB700だが、やはりというかトラブルは相変わらず多かった。特に「RAID周りは相変わらず地雷」という声も多かった。それもあってか、それほど時間をおかずに「SB710」がリリースされる。機能的には「SB700+Super I/O」といった程度だが、いくつかのバグフィックスも同時に行なわれたようだ。

 SB710で取りきれなかったバグ修正と、さらにRAID 5機能を追加したのが、その後に登場した「SB750」である。その結果、登場時期の早いAMD 790FXにはSB700が、登場時期が最後になったAMD 785GにはSB750が組み合わされることになった。製品構成的にはちぐはぐなものになってしまったのは仕方ないところか。ちなみにSB710は、その後「SP5100」と改称された製品が登場するが、これについては次回に触れたい。

お詫びと訂正:掲載当初、「ちなみにSB750は」と記載していましたが、正しくはSB710でした。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2010年3月24日)

 AMD最新のチップセットは、2010年3月に発表された「AMD 890GX」である。こちらは内蔵GPUが「Radeon HD 4290」になったことと、サウスブリッジにSB850を使えるようになったのが最大の違いである。AMD 785GのRadeon HD 4200が500MHz駆動なのに対して、Radeon HD 4290は700MHz駆動に高速化されている。

AMD 890GXのプラットフォーム構成図

AMD 890GXのプラットフォーム構成図

 少し話が前後するが、ATIは元々ノースブリッジとサウスブリッジの間を、独自の「A-Link」と呼ばれるインターフェースで接続していた。ところがPCI Expressへの対応が必要になった「Radeon Xpress 200」の世代で、これを「A-Link Express」に切り替えた。

 元のA-Linkは、PCIバスにちょっと手を加えた程度のものであったが、A-Link Expressは完全にPCI Expressそのものである。ただし構成はx2という、PCI ExpressのBase Specification(基本仕様)に当初存在しなかったもので、その意味では独自と言ってもいいのかもしれない。

 これが途中で「A-Link Express II」となった。ようするにx4配線になったわけだが、世代的にはまだGen1の2.5GT/秒のままだった。つまり、ノースブリッジはすでにPCIe Gen2に対応していたが、サウスブリッジが追いついていなかったわけだ。それがSB850でやっとサウスブリッジもPCIe Gen2を扱えるようになり、A-Linkも転送速度をGen2相当の5GT/秒とした「A-Link Express III」に進化している。同じことをインテルも、Sandy Bridge世代の「DMI 2.0」で行なおうとしているが、これを先取りした形だ。

 話を戻すと、SB850では帯域強化に合わせて、サウスブリッジ側の機能強化が著しい。USBも今度こそ1.1/2.0×14ポートとなり、SATAはすべて6GT/秒のSATA 3.0相応となった(ポート数は6のまま)ほか、汎用のPCIe x1レーンもGen2相当となっている。USB 3.0には対応しないが、PCIe 2.0レーンにUSB 3.0コントローラーを取り付けるのは容易であろう。

 これに引き続き、まもなく登場すると見られているのが「AMD 890FX」である。すでに今年のCES 2010で、これを搭載した製品が参考展示されている。恐らく6コアの「Phenom II X6」と同じタイミングでリリースされるのではないかと思われる。

今回のまとめ

・AMDによる買収後、事実上初の製品は2007年2月登場の「AMD 690G/690V」。GPUがRadeon X1250に強化された。

・2007年11月には、新しい「AMD 700」シリーズのチップセット「AMD 790FX」「AMD 790X」「AMD 770」が登場した。AMD 790FXはグラフィックスカード4枚を装着したウルトラハイエンド構成を狙ったが、商業的には不発に終わった。

・2008年3月には、初のDirectX 10対応GPUを内蔵した「AMD 780G」を、2009年8月には、DirectX 10.1対応GPU内蔵の「AMD 785G」が登場した。

・AMD 700世代では、サウスブリッジに「SB700」を採用するようになった。しかしバグやトラブルが多く、SB710、SB750と2段階の改良が行なわれた。最新のSB850ではPCIe Gen2やSATA 3.0に対応するなど、大幅に機能強化されている。

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