収益のカギは「パートナー」そして「コンテンツID」
――YouTubeではパートナーと呼ばれる、一般の投稿者とは異なる仕組みを用意しています。商用映像を抱えるテレビ局や映画会社などだけではなく、個人クリエイターも参加できるそうですね。
徳生 個人クリエイターであっても、再生数やチャンネル登録数の多いユーザーはパートナープログラムを通してパートナーとなり、広告収益を上げることが可能です。こうしたユーザーパートナーも含めると、YouTubeでは100万本以上のパートナー動画が投稿されています。
いわゆるプレミアムコンテンツについても、パートナーのカテゴリが多様になってきています。例えば昨年9月には産経新聞さん、テレビ朝日さん、TBSさんなどに参加を頂くことができました。現在のところ国内のパートナー数は数百社といったところです。
その一方で、冗談のような数字ですが、1分間に20時間分以上の動画がYouTubeには投稿されています。第三者の著作物を含む動画をアップロードすべきではないのはもちろんですが、膨大な動画の中から著作権者が自らの著作物を容易に見つけられるように、フィンガープリント技術を応用した「コンテンツID」という技術を採用しています。
コンテンツIDにより発見された動画は、もちろん「ブロック」することも出来ますし、「トラック」してどのように視聴されるかを分析すること、あるいは「収益化」オプションを選択すれば、視聴回数に応じて広告収益の分配を受けることができます。望ましくない投稿は水際で防ぐこともできますし、意外なところで熱狂的に盛り上がった場合は、アップサイドを取りに行くこともできるわけです。
――昨年1月に角川グループの公式チャンネルが月商1000万円を超えたと発表しましたが、それもこの仕組みを活用してのことでしたね。その後それに続く成功事例というのはあるのでしょうか?
徳生 パートナー収益の詳細は私どもではご紹介できないのですが、一般にコンテンツIDを活用しない場合よりも、活用した方がより多くの収益を上げることが出来るのは間違いありません。モデル自体が新しいので、普及には時間がかかると思いますし、実際に活用していても対外的には説明できないというパートナーもいると思いますが、今後同様の成功事例は次々に出てくると考えています。
――なるほど。ユーザー動画、いわゆるUGC(User Generated Contents)はもちろん、パートナー動画、つまり商用・プロコンテンツとも充実していることは分かりました……。その広告収益の状況はいかがでしょう?
徳生 国内では宣伝費上位10社のうち6社からはすでに何らかの形でYouTubeに出稿いただいています。北米では100社のうちの75社が利用しているという状況です。昨年には、トヨタ様やロッテ様のような成功事例も見られるようになりました。
YouTubeでは、ユーザーの利用の段階を4つに分けて捉えています。(1) Enter(利用開始の瞬間)(2)Discover(検索・発見)(3) Watch(視聴)(4) Engage(コメントやチャンネル登録による参加)です。例えば、(2)Discoverの段階では検索結果画面にYouTube版AdWordsとも言えるプロモート動画のサービスをはじめました。 (4)Engageの段階は、いま冠スポンサー付きで開催しているVideo Awardsの例も挙げられます。

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