「iTunesで購入」でもYouTubeの利益は考えていない
徳生 この動画は一般の方が結婚式のワンシーンを撮影し投稿したものですが、幸せに満ちた光景とユーモラスな踊りが大評判になり、現在は3500万回以上視聴されています。この動画に、iTunesへのリンクが張られているのが分かりますでしょうか?
――動画の下に「この曲をダウンロード」というリンクがありますね。
徳生 先ほどご説明したコンテンツIDは、楽曲も対象となります。この場合、動画をアップロードしたのは一般ユーザーなので、通常は広告や購入リンクは表示されません。
でも、このBGMに利用されている楽曲が他の権利者(レコード会社)のコンテンツであることが、コンテンツIDにより検出され、権利者が「マネタイズ」のオプションを選択した結果このリンクが表示されています。
楽曲そのものの購入リンクが表示されているのは、楽曲を解析して割り出されたChris Brownの「Forever」という曲のISRC(International Standard Recording Code)とiTunesからいただいているフィードとのマッチングによるものです。
半年以上前に発売されたタイトルですが、iTunesでは一時売上げが3位にまで上がったんですよ。このようにコンテンツIDを利用することで、思いがけないユーザー投稿動画が収益機会につながることがあります。
――iTunesへのアフィリエイトリンクということになると思うのですが、収益の分配はどのような形を取られているのでしょうか?
徳生 詳細はお話しできませんが、我々としてはどうすれば権利者の方にとってYouTubeにコンテンツを公開することが意味あるものになるか、というところにフォーカスをおいてこの仕組みを用意した経緯があります。YouTube自体がここで収益を上げるということは、考えていません。
――なるほど、コンテンツIDの構造はよく理解できました。しかし先ほどの角川グループさんの事例を見ても、まだまだ権利者が収益化をはかる、要は「儲ける」ことができるのかということに対しては疑問も残ります。
徳生 その部分は我々も改善を図らなければならないと感じています。例えば、これはパートナーコンテンツに限らずですが、良質なコンテンツがより簡単に発見されやすくなる仕組みですとか、よりユーザーに受け入れられやすい動画内広告等の開発がその一環ですね。
――つい先日「YouTubeが有料課金モデルも開始予定」と報じられました。
徳生 有料課金モデルの提供はすることになるでしょう。ただ、誤解があるといけないのですが、YouTube自体が課金モデルを収益の柱とする有料サイトになるつもりは全くありません。パートナーが、あるコンテンツは広告モデルで無償で提供するにしても、ある特定のコンテンツには課金モデルを提供したいという場合、出来るだけ多くの選択肢を設けるということが重要だと思いますが、収益の柱は今後も広告モデルになると思います。
――Huluが示した成功事例にならうということでしょうか?
徳生 米国では、Huluがオフィシャルコンテンツにプリロールなどの形で、様々な広告を付与して収益化の可能性を示したことには大きな意義があったと捉えているようです。ただ、先ほども申し上げたとおり、YouTube が目指すのは、一般ユーザーから超プレミアムパートナーまで誰もが参加・活躍できる民主的なプラットフォームです。
そのためオンラインの世界でも機能する効率的かつ著作権管理技術をゼロから開発し、全く異なるコンテンツホルダーのニーズに応えるための多様な収益手段の開発を行なっています。こうした技術開発の多くは、プレミアムコンテンツの配信だけが目的であれば必要ないものです。
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