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フィル・シラーが語る「アップル、もの作りの姿勢」

2009年11月20日 16時30分更新

文● 広田稔/ASCII.jp編集部

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「We Love Music」という考え方

── 売り方について質問します。近年、アップルは、直営店やオンラインのApple Storeなど、昔に比べて直販に力を入れているように感じます。その意図を教えてください。

アップル直営店のひとつ「Apple Store Ginza」

フィル:アップルは、アップル製品を買うことが「すばらしい購入体験であってほしい」という気持ちを根底に持っています。大切なのはユーザーの「購入体験」なんです。だから、必ずしも直販だけに力をいれているというわけではありません。

 今でも販売店のパートナーの方々と協力して、製品のディスプレーやお店の雰囲気作りについてアドバイスしたり、セールスの方のトレーニングをお手伝いしています。オンラインにおいても、アップルらしい経験をしてもらえるように配慮をしているんですよ。リアルの直営店以外にも、そうした投資も怠っていません。


── 話題をiTunes Storeに変えます。2008年4月には、iTunes StorがWal-Martを抜いて米国の音楽小売業者でトップとなりました(英文のリリース)。iTunes Storeの勢いが増しているにも関わらず、日本におけるコンテンツホルダーの中にはそうした波にあまり乗ろうとしない企業もあります。アップルとしては、彼らにどんなメッセージを送りたいですか?

フィル:われわれの考え方はとてもシンプルで、アップルには「We Love Music」というコンセプトがあるんです。どうやったらみんなに、楽しく簡単に音楽を聴いてもらえるのだろうか──。そんな単純な発想から始まって実現したのが、iTunes Storeだと思います。

 皆さんが大量のカタログの中から簡単にいい音楽を見つけられて、好きなものを選んでダウンロードして聴けるというシステムを作ってしまった。それは当時の音楽業界と逆行していたことで、音楽業界の方々はすごく海賊版のことを恐れられていた。そこに、iTunes Storeという法律に則った素晴らしいソリューションが現れたんです。

 世界にいるお客様の中には、不法なものはできるだけ買いたくないと思っている方も多いです。音楽業界にしても、ちゃんと法律に則って音楽を売っていきたいと考えている気持ちも分かります。そして、われわれやコンピューターが好きな人たちも、合法的なやり方で音楽を売買したいと考えているんです。

 みんなにWin-Winなシチュエーションを構築したのがiTunes Storeで、それに代わるものはいまだに出てきていない。そんな業界が大きく変わった画期的な出来事だったのではないでしょうか。


── 最後に、アップルで一番注目を集めているのはiPhoneで、同じように携帯デバイスの分野も盛り上がっています。日本にも名だたるケータイメーカーがありますが、iPhoneの上陸以来、ネットやメディアでは長期に渡ってiPhoneが話題をかっさらっています。なぜiPhoneは日本のケータイに「勝てた」のだと思いますか?

iPhone 3GS

今年6月に発売したiPhone 3GS

フィル:iPhoneはある種の発明品、画期的な製品だと思っています。もちろんハードウェアも素晴らしいデバイスとして仕上がっていますが、ハードに加えて革新的なモバイルOSやApp Storeも提供して、プラットフォームを作れたという点が大きいと感じています。そこが他社と差別化できていて、追いつけない点ですね。

 ほかのメーカーも素晴らしいハードウェアを出されていて、スペックが満載で、それはそれで楽しい製品だと思います。ただ、そうした製品とは違うレベルのものを導入したことで、皆さんに喜んでもらえるという今の状況が生まれたのでしょう。


── 携帯デバイスの分野では、アマゾンの「Kindle」やグーグルの「Android」といった製品が話題を集めています。そうしたライバルに対する、iPhoneの優位性はどこにあると思いますか?

フィル:アップルはソフトとハードを両方提供していて、それがともに素晴らしいという点でリードしていると思います。当然、成功するということはフォロワーが増えて、マネをされるところも多くなりますが、両方をきっちり提供できるメーカーさんはいないでしょう。

 ですから、これからもアップルがリーダーシップを取る状況が続くと思いますし、われわれもこれから先、色々なプランを用意していて、さらなる進化を遂げていくので、みなさんはなかなか追いつけないのではないでしょうか。


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