こんなに苦労するんだったら、自分でプログラムを組んだ方が早い
―― 樋口さんは、なぜMMDを作ろうと思われたのですか。
樋口 きっかけは、あにまささんが初音ミクの3Dモデルをニコニコ動画で公開していたことですね※1。そのモデルがあまりにも可愛かったので動かしたくなって、Blender※2でそのモデルを使った動画を作ったんです。
ですが、その動画の作成にすごく苦労したんですね。「こんなに苦労するんだったら自分でプログラムを組んで動かした方が早く出来る」と思って作り始めたのがきっかけです。
だから最初は自分が初音ミクの動画を作るためのツールとして作っていたので、公開しようとは思ってなかったんですよ。それにまだ、その頃はクリプトン社がプログラムの公開を原則禁止にしていましたし。でも出来上がってみたら思ったより良い出来で、その後はプログラムの公開も解禁になったので、公開してみました。
※1 あにまさ氏はMMDが公開される以前から「アニメーションマスター」という3Dソフトで初音ミクの3DCGを制作していた。現在はMMDに標準搭載されている3Dモデルを制作している。参考:「初音ミクをアニマスでつくってみた」
※2 Blender : オープンソースの3DCGソフト。モデルの作成や、アニメーション制作などの機能を備える
―― MMDにはどんどんと機能が増えてますが、これはユーザーから要望を受けて開発をしているんですか?
樋口 バージョンアップはほとんどそうですね。「こういう機能ありませんか」とか「ここがおかしい」とか、そういう要望があったとき、これなら簡単にできると思ったり、便利だなと思った場合に取り入れていってます。
―― たとえばオープンソースにして、チームで開発をするなどは考えませんか。
樋口 「オープンソースにしてくれ」とはよく言われるんですけど、素人の書いたプログラムなのでめちゃくちゃ汚いんですよ。だから見せるのが恥ずかしいんですね。例えば変数の名前もそうだし、趣味でやっていると本当に汚いソースになっちゃうので、見せられない。見ても分からないんじゃないかなっていうのがあります。
―― しかし、一人での開発は大変ではありませんか。
樋口 大変といえば大変なのかもしれないですけど、出来ることだけをやっていますし、何より好きなことしかやっていないので楽しいのほうが強いですね。
―― あにまささんはいつ頃から3DCGの制作をしているんですか。
あにまさ 結構前からですね……10年くらい前かな。
―― それまでも自分の作ったモデルはウェブで公開していたんですか?
あにまさ いや、それが初音ミクのときだけなんですよ。それまでは絶対に人に見せてもいなくて、完成したモデルを静止画で公開していたくらいですね。
ただ、今回の初音ミクというキャラクターは人によって歌声とか違っていて、人それぞれの使われ方がありますよね。それと同じ感じで、動かしたい人がいるんじゃないかと思って公開したんです。なので、今は思った通りになっていてすごく嬉しいです。
―― 初音ミク以前にはどんなものを作られていたんでしょう。
あにまさ 最初に描いてたのはいわゆる風景画とか、リアル系の人物が多かったんです。でも「カードキャプターさくら」というアニメを見てからちょっとおかしくなりましたね。あれを見ていなかったら、今でもリアル系のCGをやってたと思います。
―― ここで新事実が発覚しました。カードキャプターさくらのモデルも作ったことはあったんですか?
あにまさ 作りましたよ。さくらは2~3回作った上に、ちょっと言えないようなこともしました。でも公開はしてません。著作権などもそうですし、色々な問題がありますからね、一応紳士で通っていますし。
ポンポコ そっちの「紳士」ですね。わかります。